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02

「おつかれさま~」

 舞台が終わって、楽屋に引き上げる。

 先輩たちは個室だけど、わたしたちは5人一緒。

 出迎えてくれる安城さんにみんなハイタッチを決める。

 もう、喉がカラカラ。

 初めて舞台で歌ったり、踊ったりして、

 緊張の後の脱力感と充実感を感じながら、椅子に身体を沈める。

 みんな思い思いの格好でくつろぐ。


「お疲れ~」


 わたしの頬に冷たいペットボトルが当たる。

 それを手で受け取ると、胡桃が微笑みながらわたしの横の椅子に腰をかける。


「うん、お疲れっ」


 笑顔を返す。

 まぁ、ちょっと間違えたけどまあまあの出来かな。

 水のペットボトルの蓋を回して開け、口をつける。

 おいしいっ。

 胡桃はダンス中心だけど、わたしはソロとかもあるし、歌要員かなっ。

 みんなと比べて戦闘力も劣るし・・・・。

 でも、まあ、あこがれの舞台に立てただけでも満足。


 そう、ずっと、ラブウィチーズのメンバーになることを夢見ていた。

 

 うぅん、それしか夢はなかったのかもれない。


 だって、不思議な力って、フォースって言うんだけど、そんなにいいものじゃない。

 わたしだって、普通に生まれたかった。

 フォースがあるってわかったとたん、化け物扱いされる。

 無理もない。

 切れたら、火の玉を出す子なんて・・

 マジで付き合えないって気持ちわかるから。


 だから、わたしたちはすごい孤独だった。


 その時、テレビ画面に現れたのが、卑弥香さんの率いるラブウィッチーズ・・・

 フォースを持った女の子のグループ・・・・

 ダンスして歌うだけでなく、魔獣退治もする・・・・

 たちまち、彼女たちはテレビ画面を埋め尽くした・・・

 歌番組、トーク番組、ドキュメンタリー・・・・

 出すCDやDVDは全部ミリオンセラー・・・・

 それに、魔獣がらみの事件が増えてきて、東都の治安も担うようになった。

 テレビに出るメンバーだけでなく、たくさんのフォースを持った女の子が集まって・・・

 

 それから、

 いままでみんなにシカトされていたわたしも逆にみんなの羨望の的になった。

 だって、フォースを持ってることがメンバーになる最低条件だから・・・

 

 そして、ラブウィッチーズのメンバーになることだけが、わたしの夢になった。


 わたしたちに他の夢なんてありえないし・・・

 第5期メンバーの美耶子さんの存在がわたしの夢に拍車をかけた。

 わたしと同じにチビで光弾使い・・・・

 卑弥香さんみたいな圧倒的なカリスマじゃないけど・・・

 なんにでも一生懸命で、前向きみたいな感じ・・・

 美耶子さんのDVDを何回もみて、歌もダンスも全部できるようになった・・・

 その夢が叶い、美耶子さんと同じステージに立つことができた。

 美耶子さんがリーダーのラブウィッチーズで・・・・


 あとは、美那子さんのグループに入れれば最高なんだけど・・・・

 ラブウィッチーズは12人の子で構成される。

 コンサートとかレコーディングとかの時はみんな集まるんだけど、

 基本的には3人一組のユニットとなって行動する。

 だから、ウィッチーズは4つのグループに分けられる。

 まあ、希美と栞はお子様グループだし・・・

 優菜はお色気組かなっ・・・・

 美那子さんのグループの可能性があるのは胡桃とわたし・・・・

 でも、あとひとつはバラエティ組・・・・・

 今日、どのグループか決まるんだ・・・・


 とか思ってるうちに。


 美那子さんが部屋に入ってくる・・・・

「お疲れ様です!」

 みんな立ちあがって挨拶をする。

 ここらへんは体育会系のわたしたち・・・・

 上下関係はしっかり教え込まれている・・・

「うん、お疲れっ・・・」

 言いながら美那子さんがこっちに近づいてくる・・・・

 やっぱ美那子さんチーム???

 やさしく微笑む美那子さんにわたしも微笑み返してしまう・・・・

 でも、視線はすぐにわたしから外れる・・・・

「胡桃っ、わたしのユニットだよ。」

 胡桃の緊張した顔が笑顔に変わる。

「えっ、わたし?」

「うん、がんばってねっ。わたしのチーム、案外きついよ。」

「がんばります!よろしくおねがいします。」

 体育会らしく最敬礼。

 よかったね。胡桃っ・・・


 次に入ってきたのは、睦美さん

 わたしより背が小さいけど、23歳。

「おーい!」

 両手を振って・・・・

 わたしたちを注目させる・・・・

 お子様向け番組とかビデオで絶大な人気を誇る・・・

 

 希美と栞の方を向く・・・

 小さいけどすごい迫力・・・・

 やっぱラブウィッチーズのメンバーって違う。

 わたしもあんな風になれるのかなっ。

 あの希美も圧倒されている感じ・・・

「いくよーぉ。栞、希美。」

 栞と希美は顔を見合わせる。

「うん、ついておいでっ」

 駆け足で部屋を出て行く。

 そのあとに2人はつづく。


 あとはわたしと、優菜。

 たぶん優菜はグラビアの仕事が多い麻衣さんのユニットかな?

 スタイルすごくいいし。

 

 そのうち、麻衣さんが入ってくる・・・・

 やっぱり、超華やかなオーラを纏っている。

 優菜に近寄ると2、3言かわして、一緒に出て行く・・・


 わたしだけぽつんって部屋に残った感じになる。


 乱暴にドアが開く・・・・

 立っているのは愛莉さん・・・・

 沙耶香さんのチームの・・・

 天然キャラでクイズ番組とかで活躍している。

 っていっても、クイズが得意っていうんじゃなくて、

 ほとんど正解できないおバカキャラとして。

 沙耶香さんも女王キャラで、

 トーク番組とかで、コメディアンの人たちをびびらせてる。

 研修生の中ではバラエティユニットって言って、いちばん人気のないユニット・・・

 沙耶香さんも厳しいっていうし、愛莉さん以外のメンバーは1期毎に変わっている・・・

 でも、メンバーの中では沙耶香さんが最強って言われている・・・

 あんまり、活躍しているビデオとかないけど・・・


「わたしたちチームだよ。よろしくねっ。」

 わたしの前に来て、手を差し出す・・・・

 テレビで見るより、ずっと美人だ・・・・

「海崎美月です。よろしくお願いします。」

 握手する・・・・

 手が震えそう・・・・

 やっぱ、現役メンバーって迫力が違う・・・

 テレビではボーッとした感じの人だけど・・・・

 それだけでは、ウィッチーズのメンバーにはなれない・・・・

「じゃあ、沙耶香さんのとこに行こうかっ。」

「はい・・・・」

 わたしがうなづくと、愛莉さんはわたしの手をとって歩き出す・・・

 わたしはそれに付き従った。

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