15 北都軍
北都軍も手をこまねいていたわけではない。
司令室のモニターには会場の様子が写されている。
今回のライブは、東都向けに録画されている。
あらゆる方向にカメラがセットされている。
その画像が役に立っているわけだ。
でも、北都の司令室もいまのところ打つ手はなかった。
犯人を機神で蹴散らすのは容易い。
それでは、観客やわたしたちにかなりの被害が出てしまう。
司令たちの意見は犯人の言うことを聞くふりをして、彼らに隙ができるのを待つという方向に固まりつつあった。
あくまで、犯人たちが異能を使えるのは会場内だけ。
逃亡の時、機神を使えば彼らは手も足もでない。
でも、そんなことは相手も考えている。
そのためにわたしたちを人質にしている。
異能を使えないのはわたしたちも同じなんだ。
「ところで、覇流の姿がみえないが…」
真ん中のお誕生席に座った司令が呟く。
グレイの髪を後ろに撫で付けている。
たぶん一番えらい人だ。
「最初はいたはずなんですが…」
「そうですね。突入って吠えてました」
司令室はざわめきだす。
でも、覇流は見つからない。
いきなりのおおきな破壊音にみんなの視線は画面に戻る。
2つの出入り口に赤い機神と青い機神が現れる。
それは覇流のチームの機神。
特別機動部隊の青鬼赤鬼と恐れられる機神だった。
「あいつら」
「また軍規違反か」
司令室には溜息が漏れる。
「逃げろっ」
2体の機神は観客たちに叫ぶ。
それを合図に観客たちは出入り口に向かってなだれ込む。
あっけに取られる敵。
でも、すぐ気を取り直して魔獣たちをけしかける。
その前に立ちふさがる機神。
そして、彼らの構える銃が爆音とともに火を吹いた。