14 人質
観客席は騒然となる。
わたしたちだけならどうにでもなる。
でも、ファンを全員無傷で脱出させる手はない。
「動かないでくださいね。お嬢様がた。
わたしたちの目的はあなた方です。
交渉のカードとしては北都の住人にはあまり価値はありません。
LOVE★WITCHESを北都はないがしろに出来ませんからね。
そんなことになったら、東都との外交問題になる。
一種の帝国主義に毒された国。
それを開放することにわたしたちは手を貸すのです。
あなたがた、おとなしくしていれば、観客に危害は加えません。
しかし、これ以上逆らうなら……」
わたしの前の男が笑う。
こいつら本気だ。
わたしは動きを止める。
春香と優菜もそう。
先輩たちも倒れた今。
わたしたちに打つ手はない。
「じゃあ、おとなしく捕まるからさ。
ファンを先に開放してよ」
春香がヘッドセットマイクを通じて犯人に告げる。
「おとなしくって顔ではないですね。
きちんと確保してからです。
そうすれば観客は解放しましょう。
我々は破壊を目的としているのではないですからね」
わたしたちの周りに、黒づくめの男たちが現れる。
春香の円月輪をとりあげ。
わたしたちに後ろで手を組むように指示する。
特殊なワイヤーを手にわたしたちを縛っていく。
リングに使われる、能力を抑える金属でできたワイヤー。
これで、わたしたちを無力化できる。
もう、打つ手はないの?
その時、2つの出入り口をふさいでる男たちが吹き飛ぶのがわかった。
どうして?
その出入り口にガシャガシャという金属音。
そして、巨大な黒い影が現れた。