07 朱雀と玄武
「玄武も動いたらしいね」
「はい、壊し屋を使って、一人倒したということです」
白い仮面の男と妖艶なドレスの女性。
「たったの一人だけ?やっぱ、詰めが甘いね。ハハハ」
「ええ・・・・朱雀さま」
「こっちも2人・・・」
考え込む朱雀と呼ばれた女性・・・
「でも、ここからは難しくなるわね」
おもむろに携帯を取り出す。
「玄武?・・・わたし・・・朱雀」
「なんだ」
不機嫌な声。
「なんか、一人倒したらしいね」
「ああ・・・」
「私のとこは2人だけどね」
「何を言いたいんだっ!」
「これからガードが固くなるわ」
「ああ・・・わかっている」
「このまま、わたしの勝ちかもね。
白虎も動いてないみたいだし。
じゃあね」
一方的に電話を切る。
「石動、玄武を見張って」
「はい・・・」
「あいつバカだから、すぐに何か行動を起こすと思うの。
それと亀田の代わりは見つけたの?」
「ええ、闇のアルバイト情報を使いました。
腕は確かなのですが、なにぶん・・・」
「まあいいわ。どうせ捨て駒だし」
「なあ、バイト代安すぎねえか。
いきなり魔獣とかけしかけやがって」
茶髪の男、ジーパンに革ジャン。
顔を半分覆う黒い覆面をしている。
「こいつが?代わり?」
あきれたように朱雀は男を見る。
アサシンとはかけ離れた男。
「なぁ、仮面のにいちゃん。
ちっと考えてくれよ」
石動は朱雀に耳打ちする。
「傭兵が他に4人集まったのですが、
力を試したところ、
めんどくさいから4人一度に相手すると言いまして・・・
それを一瞬で・・・
たぶんそんなことができるのは、
わたしと水沼くらいですか・・・
腕は保証します」
「ウィザード?」
「いえ、拳法使いです」
「そっちのねえちゃんが雇い主だろ。
いろいろ入用があるんだよ」
なれなれしく近づいてきて、朱雀の肩に手を回す。
覆面男の頬に朱雀の平手が飛ぶ。
その手首を一瞬で掴む。
あっけにとられる朱雀。
そう、女の手といえ、こんな至近距離からの平手・・・
その手首を簡単に掴む。
それだけで、男が並の使い手でないことがわかる。
朱雀は男の目を見て微笑む。
「わかったわ。
2倍だすわ。
そのかわり、それだけの働きはしてもらうからね」
「ああ、やっぱトップは物分りがいいよな。
こっちの下っ端と違って」
石動はあきれたように両手を開く。
あくまで仮面の表情は笑ったまま。
「石動、それでいいよね。」
仮面の男に確認する。
「ええ、仰せの通りに」
大げさに礼をする石動と言う男。
その仮面の目が一瞬光ったような気がした。
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「なんだ、あの女は」
荒れる玄武という大男。
「それもこれもお前たちがたよりないからだろ!
2人も逃がしやがって」
「すみません。思ったより手ごわい娘たちで・・・
しかし奴らは仲間一人を失ったって話ですよ」
「言い訳はいい。次の手は」
「あの本部ビルに殴りこむのは難しいですね。
おびき寄せるしかないでしょう。
こいつらを使ってね」
萬屋の前に2人の女。
睦美と綾だ。
でも、その目には生気はなく、
魂の抜け殻のように立っている。
「すぐに手を打て!」
「はい・・・」
「それと、こいつは何だ!」
萬屋の後ろにはマントの肌の浅黒いマントの男。
「ええ、壊し屋に入りたいと言って」
かぶったフードの中から鋭い眼光。
「足手まといにならないだろうな」
「たぶん・・・」
「そうか・・・」
いきなり玄武はマントの男に殴りかかる。
乱暴者玄武の挨拶だった。
少し手加減はしているが、並の使い手なら吹っ飛ぶことは必死だった。
その拳を簡単に手のひらで受け止めて握る。
玄武が手を引こうとする。
でも、握られた拳は相手の手から抜けない。
それだけでなく玄武の拳は信じられない握力で押しつぶされる。
「わ・・わかった。萬屋よ。面倒みてやれ」
そういうと、マントの男はその手を開く。
いきなり離されて玄武はよろけた。
「では、残りの娘を全員、呼び出します。」
睦美と綾の肩に手を置く、萬屋。
「いいだろう。
まとめてぶっ壊すというわけだな。
今度は俺も出る。
あの朱雀に目にものを見せてやるぜ!」
舌なめずりする大男。
大男はもうこの街の支配者になったかのように
高笑いをした。