02 北都
わたしはキョロキョロしながら歩く。
目にするものすべてが東都と違う。
鋼鉄の街。
すべての色がモノクロームな鉄の色。
カラフルな東都とは違う。
それと体調も違う。
なんか、魔力がみなぎってこないっていうか。
不思議な感じだ。
落ち着きのないわたしに春香がお小言を言う。
駅から出ると、迎えの車。
軍服といった感じの茶色の制服に制帽の人が出迎える。
表情に乏しい人。愛想もなにもなく、必要最小限の挨拶。
ドアを開け、車に乗るように促す。
わたしたちはジープのような迷彩色の車に乗り込む。
歓迎とか期待してたわけじゃないけど、
やっぱファンとかの出迎えとか……
そういうのないんだ……
無言で発車する車……
春香と話すって雰囲気でもないし、
わたしは窓の外を見ているしかない。
デザインとかファッションとか感じさせない実用的な町並み。
建物も同じようなものばかり。
とくに目をひくようなものはない。
わたしたちはホテルについて車から降りる。
東都にくらべて、まばらな人並み。
すこし寒い気候と相まって、寂しい感じさえする。
ホテルに入ると、とりあえず練習場になっている会議室に。
美那子先輩に挨拶。
ちょっと緊張する。
春香と私は無断遅刻だし。
「ちゃんと取り成してやるから…」
真奈美さんが微笑んで先を歩く。
その後ろに隠れるようにして、わたしはホールに入る。
「おバカっ。
いっつもいっつも。
まあ、春香はいいけど……
美月だけは」
さっそく美那子さんに怒鳴りつけられる。
「でも……」
「でももクソもないっ!」
「まあまあ、時間押してるんだろっ。
今夜はテレビでお披露目だし」
「うん…まあ」
「じゃあ、練習だろ。
早くおまえら身体作れ」
「はいっ」
真奈美さんが間に入って、春香がわたしの手をひっぱる。
すぐに着替えて、春香と組んで柔軟を始める。
念入りにストレッチをして、みんなの後ろに並ぶ。
あきれたように優菜がわたしに目で合図をする。
「じゃあ、6人バージョンで行くよっ。
気合入れてねっ」
音楽が始まり、わたしたちは本番どおりの3曲の練習を始めた。