16 闇の使い手、宇宙
「やばい。動ける?美月っ」
「うぅん、無理っ。春香はなんとかならない?」
「片手でも動いたらね。油断しちゃったね」
「こんな力って思わなかったから、仕方ないよ」
何もできないわたしたち。
そして、宇宙がこっちに歩いてくる。
こうなったら、最終手段か。
あんまり使いたくないんだけど、訳のわからない力には、訳のわかんない力。
あれしかない。
「ギブする?
もうどうにもならないよ。
所詮、真奈美の後輩なんてこんなもんだよ。
真奈美も一度もわたしに勝ったことないんだよ。
へたれの後輩はへたれってことだね」
怒りに震える春香。
なんとか片手だけでも闇の中から抜こうとする。
やっぱやるかぁ。
どうなるかわからないけど。
「真奈美先輩はへたれじゃないよ。
あんたなんか秒殺だよ」
「ふぅん、でもさっきもぜんぜん抵抗しなかったよ。
最初からおとなしくってさ。
びびってたんじゃないの?
わたしに勝てないってわかっているから」
そういえば、さっきもおとなしく宇宙たちについて行った、
本当にそうなの?
あの、LOVE★WITCHESで愛莉さんと並ぶくらい乱暴者の真奈美さんが。
闇がわたしたちを締め付ける。
もう、やばい。
どうする?
やっぱルシフェルでも出して…
言うこときくかどうかわかんないけど…
紫の球がわたしの近くに飛んでくる。
「待ちな。宇宙」
その時、わたしたちの前に割り込む人影。
もしかして…
真奈美先輩…
振り返って微笑む。
「おまえら、何やってんだよ。
この程度の敵に」
「先輩。ごめん。
油断しちゃって…」
春香が答える。
「まあ、こんな反則的な能力。想像できないか。
まあ、見てな」
ゆっくりと宇宙の方に歩いていく。
「何、寝言言ってるの?
わたしに勝ったことないくせにさ。
それにあなたの能力の秘密…知ってるんだよ。
さっきまで、おとなしかったくせにさ。
かなわないって思ってんだろ?」
「別に…
わたしはただ頭領に挨拶したかっただけ…
ひさしぶりだからさぁ」
「やるの?」
「あんまり気が進まないけどね」
「じゃあ、ひさしぶりに格の違いをみせてやるよ」
「いくよっ。
真奈美の能力は、身体が透けるわけじゃないんだったよね。
光を操るだけ。
だから、思ったところと違うところに実体がある。
それもそんな遠くないところに」
宇宙が闇を繰り出す。
そしてその闇が真奈美さんを包み込んだ。