08 巨人の紅葉(1)
春香が左から円月輪を投げる。
そしてわたしは右から光球をぶつける。
この攻撃は避けられない。
一つを弾いても、もう一つは避けられない。
攻撃を受けない方法はひとつだけ。
避けるだけ…
でも、そうすれば門を破壊する。
チェックメイトだ。
わたしと春香の連携をなめるな。
でも、紅葉は逃げない。
ただ笑っているだけ。
その、姿を何か巨大なものがさえぎる。
それに当たってはじける円月輪と光球。
わたしたちの前に立ちふさがる壁。
それは大きな手のひら。
それはすぐに消える。
その先には紅葉が立っているだけ。
あの大きな手の巨人は?
「なかなかの攻撃ね。
まあ、蚊にさされたくらいだけど…」
不敵に笑う紅葉。
「じゃあ、今度はこっちから」
足を振り上げる。
そしてかかとから落とす。
そのとたん、大きなものが落ちてくる。
大きな足がわたしたちを踏み潰すように。
「美月、よけて」
わたしたちは後ろに飛ぶ。
すごい振動とともに落ちる足。
地響き。うしろに降り立ったわたしの身体に大きな振動が伝わる。
まるで震度4くらいの地震。
足の落ちたところにはクレーターのようなくぼみ。
こんなの当たったら。
その巨大な足は一瞬にして消える。
「春香っ。わかったよね。あいつの能力」
「うん…今のでね」
「あいつは身体の一部を巨大化させるんだ」
そのわたしたちを薙ぐように手のひらが襲う。
風圧で飛ばされるわたしたち。
なんとか受身をとって地面に降りる。
それを逆の手がなぎ払う。
わたしたちの攻撃ではこの巨大な手足に対応できない。
でも、全体を大きくすることはできないんだから、前に出て本体を攻撃したら。
目で春香に合図を送る。
どちらかが囮になって、もう一方が前に行って紅葉をぶっ飛ばす。
こういうコンビネーションは春香とがいちばん息があう。
胡桃や優菜ではうまくいかない。
手の平が来る。
とりあえず春香が前に出る。
それをなぎ払うように逆側からもう一方の手。
それを見てからわたしが前に出る。
時間差攻撃だ。
とにかく前に飛んで、光玉を放つ。
その光の球は巨大な足に踏み潰される。
「真奈美の後輩にしてはやるわね。
でも、真奈美と同じへたれには違いないけど…」
わたしはすんでのところで足を避ける。
「美月、下がって」
「えっ?」
「この程度の敵に二人がかりはないっしょ」
「何言ってんの」
「だからぁ。わたしたちはLOVE★WITCHESだよ。
ただ勝てばいいってもんじゃないの。
2人がかりだからとか、言い訳もできないくらい完全に叩きのめす。
それがLOVE★WITCHESでしょ」
春香ってLOVE★WITCHESの中でも特に気が強いんだった。
そして誰よりLOVE★WITCHESを愛している。
その春香に、紅葉の言葉が火をつけてしまう。
春香はゆっくりと紅葉の前に進み出る。
その春香を挑発するように紅葉は微笑みを浮かべた。