03 列車
列車は北都に向かう。
北都は自由都市連合の中でもいちばん技術が発達している。
機械都市とも言われる街。
この列車もMAID IN 北都だったりする。
わたしたちの東都は魔石を使った魔導力が中心だけど、北都では蒸気って力が使われているらしい。
くわしいことはさっぱりわかんないんだけど。
石炭とか・・・でも石を燃やすのは一緒か。
北都まで6時間ってところ。
列車の旅は、ほとんど安全なんだけど、やっぱり東都と北都の間にもいろいろな国があって、複雑な力関係にあるらしい。
いちおう条約で列車には手をださないことになっているらしいんだけど、時々山賊とかにレールが破壊されたりなんてことがおこるって春香が言ってた。東都と北都の間には同盟にない小国があるんだけど、いちおう2つの都の力を考えて静観しているらしい。その場合はその国の軍隊なんかが対応するらしいけど。まだ、そういう事件にLOVE★WITCHES出動なんてことはない。
「やっぱ、窓側がいい」
「はいはい」
しかたなく席を替わってくれる春香。
トンネルを抜けて東都の北壁の外にでる。
東都育ちのわたしには見たこともないようなパノラマが車窓に展開される。
見渡す限りの田園風景。
深い山の中の風景。
いきなり開ける青い海。
見ていて飽きない。
そのたびに春香に話しかけるわたし。
でも、子供みたいなわたしに春香は嫌がることなく対応してくれる。
研修所でも何かとわたしの世話をやいてくれていた。
列車の動きが急にゆっくりになる。
「あれっ、こんなところに駅はなかったはずだけどな」
周りは緑ばかりの風景。
山奥の谷ってところ。
「ここは、まだ樹海といわれるところでだからなにもないの。
北都に近づくまで止まるとこはないんだけどな」
春香が窓のところに来て外を見る。
そのとたん列車は止まる。
どうして?
いままで寝てた真奈美さんがすっと立ち上がる。
「来たか」
「えっ」
わたしと春香は真奈美さんを見る。
「うぅん、わたしの問題っ。
あんたたちには関係ないわ」
先頭方向に向かって歩き出す。
「真奈美先輩っ」
ヤバイ感じがする。
わたしたちはその後を追いかける。
「来ないでっ」
真奈美さんは怖い表情で振り返る。
「でも…」
春香が真奈美さんをまっすぐに見つめる。
「あなたたちは先に行きなさい。
あとで、絶対に行くから。
ただでさえ、遅れてるんでしょ。
美那子、めっちゃ怒ってるよ」
いつもの真奈美さんスマイルをして、振り返り歩き出す。
春香は、わたしを肘でつついて合図をおくる。
わかったよ。わたしも同じ。真奈美さんヤバそうだし。
わたしたちは少し距離を開けて、真奈美さんの尾行を再開した。