60 決着
目の前が真っ暗になる。
春香の拳がわたしにヒットした衝撃を感じる。
わたしの手にも手ごたえあったんだけどな…
やっぱ、強いよ。春香は…
頭の上で裕也のカウントを告げる声・・・
1…2…3…4…5…
立ち上がらなきゃ。
手をついて身体を起こそうとする。
でも、動けない。
足がいうこと聞かない。
6…7…8…9…
無情に告げられるカウント。
なんとかしなきゃ。
あせる気持ち。
でも、どうしようもない。
ごめん…みんな…
やっぱ春香には勝てなかったよ。
涙がこぼれる。
10……
ゴングが連打される。
終わったんだ。
寝転がったまま、春香のウィニングコールを待つ。
リングの中に沙織さんが入ってくる。
わたしの顔を心配そうに覗き込んで、ヒーリングをはじめる。
「今の試合について説明します。
10カウント以内に両者とも立ち上がれなかったため。
両者ノックアウト、引き分けとなります」
アナウンスが流れる。
引き分け?
春香は?
わたしはヒーリングで楽になった上半身を起こす。
向こうには倒れたままの春香。
BLACK★WITCHESは誰も春香のまわりに集まっていない。
わたしは立ち上がる。
「まだ、立っちゃダメだよ」
沙織さんの制止を振り切って、春香の方に歩いていく。
春香のところに行って、手を差し伸べる。
春香がわたしを見上げて微笑む。
それから、わたしに手を差し出す。
「あ~あ、やっぱ、美月にはかなわないや。
最後の最後でひっくり返されるよね」
わたしの手に春香の重み。
「そんなことない。
わたしこそ春香にはかなわないよ」
「美月といっしょに戦いたいな。
待ってて、絶対にLOVE★WITCHESに入るから」
「うん!」
立ち上がった春香と握手をする。
見つめ合う私たちを会場の大きな歓声が包み込んだ。