04 魔女狩りのはじまり
「LOVE WITCHESの人ですよね」
「そうだよっ」
イベントが終わったあとの睦美たちを呼び止める男。
振り向く睦美。
そこにはホームレスとも思えるひげだらけのむさくるしい男。
「サインとかじゃ・・・なさそうだね」
「ええ・・・玄武さんに頼まれまして・・・」
睦美は飛び跳ねて男から離れる。
スタッフにも気づかれず気配を消して近づいた男・・・
只者ではない。
周りが騒がしくなる。
両手に鉄の爪をつけたスキンヘッドの男が回りのスタッフをなぎたおしながら近づいてくる。
「はやく片付けようぜ。まったく、この程度に俺らを使うなんてよぉ」
両手の爪についた血を舐める男。
「あなたたちですか?わたしのかわいい舎弟を殺ってくれたのは」
白衣に白髪の男。
傍らには巨大な獣を連れている。
大きさは象くらい。
異様なのはその頭。
狼とライオンの顔。
双頭の魔獣。
それと尻尾は蛇。
「栞、希美、いくよっ」
身構える睦美。
希美は大剣を構える。
栞は後ろで手を組んで微笑む。
吼える魔獣。
スキンヘッドも低く構える。
ホームレスはコートのポケットに手をつっこんだまま。
いきなり希美が走る。
剣を横に構えて、魔獣の足元へ・・・・
そのまま、剣をなぎ払う。
そう、希美の剣は、古来の対騎馬のための剣・・・・
騎馬武者の馬の脚を狙う。
希美の鍛え上げられた技が魔獣の脚を払う・・・
剣がぶつかる大きな音・・・・
そう、魔獣の態勢は崩れない・・・・
はじかれたのは希美・・・
すごい力はあるが、体重のないのは致命的だ。
地面にバウンドして転がる希美。
しかし、すぐに態勢を立て直す。
すぐにUターンして、今度は飛び上がる・・・
狼のほうの首に剣を叩き込む・・・・
しかし、それもはじかれ希美は地面を転がる・・・・
「フフ、この魔獣にそんなものは効かない。なにしろアルマジロの皮膚だからな。すべての魔獣の良いところだけを集めてつくってあるんです。まさにパーフェクト魔獣です」
うっとりとして魔獣の脚をさする白衣の男。
希美はブツブツ言いながら、栞のところに戻ってきて栞にタッチをする。
わけのわからない行動は今に始まったものではなかった。
次に栞が魔獣に対峙する。
「ドッペルゲンガー」
両腕を交差させて空に上げる。
魔獣の前に煙が集まり、像を作っていく。
しかし、それが実体化したのは小さなゼリー状の物体。
のろのろと動くだけだ。
栞もわけがわからないというように首をかしげて、足の先でそのゼリーをつつく。
ゼリーは霞のように消えていく。
また、魔獣に向き直る栞。
今度は腰に手を当てて。
空に浮かび上がる。
そのまま、手足を伸ばす。
「巨大化っ」
栞がだんだん大きくなる。
大きさには大きさを・・・・
栞が考えた結論だった。
魔獣と組み合う栞・・・・
力の勝負となる。
むしろ魔獣の方が押されている。
だんだん、後退する魔獣。
尻尾のへびが栞に絡み付こうとする。
「きゃぁぁぁぁぁぁ、へびっ」
栞の悲鳴・・・・
そして、いきなり栞は元の大きさに戻る・・・・
そのまま、睦美の方へ全速力でかけてきてタッチ・・・・
睦美の後ろに隠れて目に涙を浮かべている。
仕方ないねというように睦美が前に出る。
「イン・ワンダーランド!!」
睦美が甲高い声で叫ぶ。
その瞬間、周りは闇につつまれた。