55 本当のリーダー
強い力が四肢を引っ張る。
それだけじゃない、髪の毛の鞭がわたしを打つ。
もう、ダメかも…・
身体をひきちぎられそうな力。
手首に食い込む髪…
髪の鞭に打たれるたびに悲鳴が漏れる。
こいつドSかも…
「いくよっ。青龍」
リングサイドの沙耶香さんが立ち上がる。
「ああ…」
青龍さんも。
BLACK★WITCHESのリングサイドに歩いていく。
リングサイドの小さな女の子の前に沙耶香さんが立ち止まる。
「ひさしぶりだね」
さっき、すぐにギブした南條里佳とかいう子…
通り名は増幅する悪意…
どういうこと???
小さな子は挑戦的に沙耶香さんをにらむ。
さっきまでのオドオドとした態度はない。
「研修所にいたよね。そして、最強の影とか言われてた・・
本当のリーダーはあなたなんでしょ?」
「ハハハ…ばれちゃった」
意地悪そうに微笑む。
「そう…元LOVE★WITCHESの研究生。
でも、わたしみたいな地味な技は影にしかなれない。
味方の力を上げるなんてね。
でも、見た目が派手なだけの技よりも私の方が上よ。
ダンスだって歌だって一生懸命練習したのに。
他の子に勝てない。
だから、あんたたちを倒してやろうと思ったの。
わたしの方がずっとLOVE★WITCHESにふさわしいって」
挑戦的に目を細める。
「ふぅん…」
沙耶香さんは、腰に手を当てて見下ろす。
「かわいそうな子だねっ」
哀れみの目で里佳を見下ろす。
「前にね。わたしのユニットに打診があったの。
新しいメンバーの話。
ちょうど、前の子がやめた後だったし、わたしらについていけなくてさ。
戦わない子だけど、超戦力になるって。
OK出したんだけど、その前に研究生をやめったってさ。
楽しみにしてたんだけどさ」
「えっ?」
里佳の目が大きく見開かれる。
「まあ、どうでもいいんだけど。
美月の邪魔はやめてくれる」
「だめだよ。
もう少しなんだから…
もうちょっとでLOVE★WITCHESを倒せるのわたしの力で…」
「リング外から力を貸すのは反則だろ」
「でも、わかんないでしょ?」
「そういうこと」
「やめないよ。LOVE★WITCHESはもう終わりだよ」
「じゃあ、こっちも力を貸させてもらうよ。
青龍っ…」
青龍さんが前に出る。
「わたしを倒すの?」
「うぅん、あなたの力を消すだけ…
青龍の力はあなたと正反対。
まわりのパワーを無効にするの。
彼がここにいる限り、普通の戦いとなるの。
勝てる?それでも…」
里佳はうなだれる…
「キリコは無理だね…
でも、春香は本物だよ。
それから…
わたしと同じ研究生出身。
LOVE★WITCHESと海崎美月を恨んでる」
「ふぅん、そうは見えないけどね…」
沙耶香さんは腕組みして春香の方を見た。