53 3人目
後ろに勢いよくふっとぶ紫苑。
格闘はLOVE★WITCHESでも弱いほうのわたしでも、これくらいはできる。
紫苑は戦意喪失って感じで立ち上がってこない。
ゴングが鳴らされる。
WINNER!!海崎美月の名前が画面を踊る。
2人抜き。これでちょうど半分。
やっぱり、後に行くほど強いのが出てくる。
あとはあの髪の毛おばけと春香。
春香は黙々とアップを続けている。
わたしの戦いが始まってからずっと。
絶対に負けない…春香のプロ根性だ。
才能だってわたしより上なのに、人以上の努力をする。
立ち上がりモデルのように歩いてリングに上がる髪の毛女。
胸元の大きく開いた黒のドレス…
腰までの黒髪が左右に揺れる。
戦う格好ではない。
でも、こいつの実力と残虐性は昨日の控え室で目の当たりにしている。
希美を軽くあしらい、壁に叩きつけようとしたこと。
美那子先輩の怪我もこいつのせい…
とりあえず、全力でぶつかるしかない。
「赤コーナー、LOVE★WITCHES~大将~海崎美月~」
わたしは隙を見せないように、剣神ゼノンを構える。
とりあえず、髪は剣で切る。
これしかない。
「青コーナー~BLACK★WITCHES~副将~鬼女の黒髪~八津手~キリコ~」
髪がふわっと持ち上がる。
裕也が近づいて、リングのチェックをする。
この人たちの力って制御リングがなければどれだけなんだろう。
まるで、リングをつけていても関係ないみたいな戦いをする。
とりあえず、開始のゴングまで身体を休める。
いままでの戦いで相当力を使ってしまっている。
その隙をついて、髪の毛が伸びてくる。
わたしはそれに気づかない。
うしろをまわるように、忍びよる髪。
ゴングが鳴る。
そのとたん、わたしの剣が弾き飛ばされる。
えっ????
後ろからの攻撃。
髪がわたしの手をはたき、剣を叩き落したんだ。
「フフ…大事な髪を切られるのはいやだからね。
じゃあ、いたぶってやるよ。
じっくりとね…
ハハハハハ…」
高らかに笑うキリコ。
対抗する唯一の武器を失ったわたし…
絶望の中でわたしの戦いは始まった。