48 光球と魔神
ゆっくりと歩いてリングに上る。
ファンからの悲痛な声援。
まるで、大差で負けているサッカーチームの応援のような。
大逆転できるかなんてわかんない。
でも、BLACK★WITCHESとは背負ってるものが違う。
とりあえず、目の前の魔神使い…
栞をいたぶったやつ…
怒り…でも頭は冷めている…
冷静な怒りってとこか…
不思議な感覚…
こんなやつらに負ける気はしない…
「LOVE★WITCHES~大将~レインボーマジシャン~海崎~美月~」
私の名前がコールされる…
少し微笑んでファンに挨拶する。
「対するはBLACK★WITCHES~BLACK★WITCHES~
中堅~魔神使い~
禁門~柊~」
裕也は表情を変えずにわたしの手首の三連リングをチェックする。
魔神ガウディを背後に控え腕組みをする柊。
私を舐めたおしたような目で、見る。
こんな巨大な魔神を倒せるなんて思わない。
わたしが出せるのは子供や猫だけ…
それも3連リング付きじゃ…召喚できるかどうかわからない。
とりあえず、光球だけで戦うしかない。
相手のセコンドの髪の毛女ともう一人も勝利を確信した目。
春香は、一人ウォーミングアップをする。
その春香を制止する長い髪の女。
おまえまで回らないよって…
春香はわかんないよってわたしを意味ありげに見る。
そんな中ゴングがなる。
わたしは、ロッドを振り上げる。
ロッドを右から左に動かすとロッドの動きにあわせて7色の光球が順に現れる。
腕組みをして余裕の魔王。
ピンポン玉くらいの光玉が通じるとは思われない。
でも、一応。
目とか弱点があるかも知れないし…
魔獣のようにコアがあるのかも…
レインボーシュート…
次々に光球を叩き込む…
でも、分厚い胸板に跳ね返されるだけ…
わたしの周りを跳ねるように揺れる紫色の球…
「無駄だにゃぁ…」
そう、この球はルシフェルという猫に変身することができる。
「でも、他に手はないじゃん。
わたしの技ってこれだけだし…」
「俺を出せばいいにゃ」
「使いものにならないじゃん。
昼寝したりするだけでしょ」
「俺を誰だとおもってるにゃ。大魔王ルシフェルだにゃ」
「だから、あの巨大な魔王に猫大魔王が勝てるわけないじゃん」
わたしを魔神の爪が襲う。
やばいっ。
こいつ思ったより速い。
「だから、やばいにゃあ」
わたしと一緒に爪をよける紫の球。
逃げるだけしかできないわたし。
含み笑いをしながら腕組みをしてるだけの柊。
わたしは勝ち目のない戦いを続けるしかなかった。