03 デート???
逃げ込んだ路地裏。
男は身をかがめてわたしの顔を覗き込む。
なんか顔が赤くなる。
こんなに男の人と接近するのって最近なかったから。
「名前は?」
何、こいつ、新手のナンパっ?
「人に名前聞くときはまず自分からでしょ?」
「ああ、わりい。俺、大和」
「うん、わたしは美月だよっ」
「じゃあな。礼はいらないからな」
大和は立ち去ろうとする。
でも、わたしはそのジャンバーの袖を掴んで離さない。
「なんだよ。礼はいらないって・・・」
「はぐれちゃったじゃん」
「えっ・・・」
「一緒に探してよ・・・」
「俺忙しいから・・・」
「わたしまで逃げる必要はなかったんだからねっ。責任とってもらうよ」
大和を睨む。
困った顔の大和。
「じゃあ、どこまで送ればいい?」
「うん、ここまで・・・」
バックの中からガイドブックを出す。
クレープのおいしいお店。
たぶん、胡桃はここにいると思う。
「あぁっ、ここかぁ。知ってるぜ」
彼はゆっくりと歩き出す。
わたしは彼の袖をつかんだままその後についていった。
「おいひぃ」
わたしはチョコバナナクレープに噛り付く。
やっぱ、有名なだけある。
生地はしっとり薄くて、チョコとバナナのコンビネーションも最高。
思わず大和に微笑んでしまう。
「じゃあ、俺はここで」
席を立とうとする大和の袖を掴む。
「ここにはいなかったみたい。ごめんね。次はここだよ」
またガイドブックを指差す。
行ってみたかったお店を指差す。
「ほんとうに。ここにいるんだな」
「うんうん」
顔を縦に振るわたし。
次こそ絶対。
胡桃と約束したんだもん。
ブティック2件・・・
雑貨屋3件・・・・
甘味処・・・・
大和といっしょにいろいろなお店を回る。
荷物は大和が持ってくれるし・・・
決して押し付けたんじゃなくて・・・
まあ、自発的にってやつ・・・
なんか顔はひきつってるけど・・・・
あとはあそこしかない!!
ケーキバイキングっ!!
「ねえ、大和っ。なんでコーヒーしか飲まないの」
4つ目のケーキと格闘するわたし。
「甘いの苦手なんだよ」
わたしから目を反らす。
「でも、郷に入っては郷に従えっていうじゃん。わたしの計算では3個たべないと元をとれないの」
「だから、おまえが食ってるのみるだけで胸焼けするって感じなんだよ」
「フーン。わかんない。こんなにおいしいのに。ケーキおかわりっ」
その後、わたしをじっとみる大和。
クリームでもついてるのかな?
ちょっと口の周りをぬぐってみる。
大丈夫そう・・・・
もしかして、わたしがかわいいから????
ちょっと顔が赤くなってしまう。
こんなにじっと見られたことないから。
まるでデートしてるみたい。
なんかドキドキしてしまう。
「何みてんのよ」
大和が微笑む。
「あぁ、あいつに似てるなって思ってさ」
「あいつって」
「おまえみたいに、自分勝手で、おっかなくてさ。
それでいてかわいいところもちょっとだけあるって感じでさ」
「元カノ」
「そんなのじゃない・・・・
親友って言った方がいいのかなぁ」
遠くを見るような目の大和。
こんなことしゃべりながらも、わたしのケーキの皿は空になる。
「次はレアチーズケーキ」
「まだ、食うのかよ」
あきれたような顔をする。
「うん、この列のケーキ全部食べるの」
メニューを指差す。
「仕方ねえな。コーヒーおかわり」
大和が微笑む。
なんか、かわいい。
わたしは幸せな気分にひたりながら、ケーキを食べ続けた。