46 魔神使い
栞が立ち上がって、リングに向かう。
鞍馬栞…・
古から伝わる不思議な力…
幻術の使い手。
身体はお子様だけど、その力は底知れない。
魔女の中の魔女、睦美さんを継ぐ者として期待も高い。
白の着物に赤の袴という巫女装束。
普段の甘えた栞ではなくて、キッとした表情。
リングの前でフワッと飛び上がる…
それはジャンプの飛ぶじゃなくて、空中浮遊というのが正しい。
まるで、体重がなくなったみたいに飛び、
フワっとリングに着地する。
相手の刀の上に乗ったりする栞の体術だ。
練習で戦っても、まるで空気と戦っているような感じ。
とにかくつかみどころがない。
それに対して、黒のマントに身をつつんだ女の人がリングに上がる。
眼鏡と片目を隠したショートヘヤーが特徴的。
アンダーリムのメタルフレームから覗く鋭い視線。
まるで、安城さんみたいだ。
地味に普通にリングに上って、栞の前に立つ。
不気味に笑う女。
「それでは、次の試合。
BLACK★WITCHES~中堅~魔神使い~
禁門~柊~」
小さく手を上げて声援にこたえる。
「LOVE★WITCHES~~
副将~~夢幻の使い手~~
鞍馬~栞~~~」
両手をあげてアピールする栞。
集中していてもアイドルは忘れないわたしたち。
2人ともリングのついている手首を裕也に見せて確認を行う。
レディ・ゴー!ゴングが鳴らされる。
いきなり飛び出す栞。
そう、あと4人…
時間はかけられない。
栞の小さな身体…
体力に難があることはわかっている。
速攻で倒す…それしかない…
とりあえず、幻術は使わずにぶつかっていく。
でも、軽く微笑みながら避ける柊。
この人の体術も並みじゃない。
栞も古武術の達人。
それなのに、軽くいなされる。
普通の技じゃだめ。
栞もそれに気が付く。
柊の懐に飛び込んで、両手から炎の球を出す。
逃げられない距離。
その時、柊の前に黒い影…
大きな手が光の球をさえぎる。
爪の長い悪魔の手…
それが、地中から伸びている…
もう片手も…
よじ登るように3本の角の頭が現れる…
黒い顔にのぞく白い牙。
毛むくじゃらの身体…
太い脚…尻尾…・
身長3メートルくらいの人間型の魔獣。
「魔獣?」
栞がその巨大な獣から、距離を置く。
「魔獣???
そんな下等なものじゃないよ。
魔神だよ。
魔神ガウディ」
たしかに魔獣というにはあまりにも邪悪なものを感じる。
その邪悪な魔王は、栞の前で牙を剥いて、地響きがするような雄叫びをあげた。