45 ハンマー★ハリケーン
愛莉さんのハンマーを廻す速度が上がっていく。
もうハンマーの残像が円盤みたいに見える。
「どんな力で打っても、いっしょ。
壊したら…BANだよっ」
まだ、余裕を見せる中津川…
でも愛莉さんも微笑む…
そう、この愛莉さんの笑顔は怖い…
ムチャクチャ怒ってるのかも…
ハンマーを廻す速度がもっと速くなる…
もう、ハンマーが見えないくらいに…
「ハンマー★ハリケーン!」
愛莉さんが叫ぶ…
愛莉さんのハンマーから竜巻が起こる…
それが、中津川の方に…
シャボン玉を巻き込みながら…
そして、中津川を巻き込む…
舞い上がる唯の悲鳴…
風に舞いあげられるだけでない…
一緒に巻き込まれてるのは爆弾…
中津川に当たって爆発する…
空中で爆発に巻き込まれる中津川…
ボロボロになってリングに落ちてくる…
その襟首が愛莉さんにつかまれる…
吊り上げられる中津川の顔を愛莉さんが覗き込む…
中津川の顔が引きつる…
「ボコボコにしてあげるねっ♪」
愛莉さんが不気味に微笑む。
「結構です…ギブです」
中津川の声が震える…
ゴングが鳴り響く…
でも、愛莉さんは降ろさない…
「それですむと思う?」
うんうんと縦に顔を振る中津川のボディに愛莉さんの拳がめり込む…
そのまま、後ろに吹っ飛ぶ中津川…・
ゴングが再度鳴らされる…
リングサイドでは、輪になって協議する大会運営の人たち…
安城さんが、ゆっくりとその人の輪に近寄る。
何か抗議する安城さん。
でも、すぐにあきらめたようにその輪から抜け出す。
その中から一人が抜け出して、マイクを受け取る。
「ただいまの試合について説明します」
よく通る声が響く。
「中津川唯はギブアップによって負けとなります。
それから、
加藤愛莉は、戦意のない者に攻撃をおこなったため、
今回の競技ルールにより失格となります」
会場は静まりかえる。
やっぱ愛莉さん、何も考えてない…・
あと、栞とわたしの1年生コンビで、4人って…
「ごめん…
でも、こうなるならあと2、3発いれときゃよかった」
すれ違いざまに愛莉さんが言う。
違うッしょ。
「負けんじゃないよ…美月…」
だからぁ…
でも、これが愛莉さんなんだ…
仕方ないよ…
わたしと栞は責任の重大さに緊張した顔を見合わせてうなづいた。