44 鉄槌vs虹球
「winner、中津川~唯~」
高らかに興奮した声でアナウンサーがコールする。
無敵と思われているLOVE★WITCHESが2人抜きされるなんて思ってもいないことが起きたから。
真奈美さんは、胡桃に肩を借りてリングを降りる。
会場にはLOVE★WITCHESファンの悲鳴のような声援。
その真奈美さんの肩をポンと叩いて愛莉さんがリングに上がる。
真奈美さんみたいに気負っていない自然体。
愛莉さんはこういう飄々としたところがある。
あんまり深く考えていないというか…
何考えてるのかわかんないっていうか…
大金槌をグルンと廻す。
それから、中津川を金槌の先で指差す。
さあ、はじめようかって言うように。
「赤コーナー、中堅~破砕の鉄槌~加藤愛莉~」
愛莉さんがコールされる。
元売れっ子ファッションモデルだった愛莉さん。
長い手足が、子供っぽい中津川と対照的。
「LOVE★WITCHESのバカメンバー。
本当にバカっぽいね」
中津川は挑発する。
そう、大体わかった、この子の挑発に乗るとやられる。
こいつの姉、朱雀とそろって性格悪~って感じ。
でも、愛莉さんは動じない。
どこ吹く風って感じで、金槌を構える。
裕也のリングチェック…
愛莉さんの手首のゴールドの3連リングをチェック…
問題なしっていうように離れると…
ゴングが打ち鳴らされる…
「ちょっと疲れてきたから、
ペース上げようか…
あと3人だもんね…」
そう言うと腰につけたストローを抜き取って口にくわえる。
「虹球シャワー…」
細かなシャボン玉が無数に吹き出される。
中津川のシャボン玉は2種類。
毒と爆弾。
どっちのシャボン玉なの?
どっちにしても、金槌使いの愛莉さんは破壊するしかない。
爆発するか…
毒をまきちらすか…
愛莉さんには他の技はない…
ただ爆発にめげずに持ち前のタフさで突っ込むというくらいしか…
愛莉さんは肩に金槌を担いだまま動かない。
愛莉さんを囲むように浮く無数のシャボン玉…
「何もしなければ、弾けないよね…
はじけなければ意味がないだろ…
守りだけの技だよね…これ…」
シャボン玉に息を吹きかける…
シャボン玉はゆっくりと吹いた方向に漂う…
「でも、勝てないだろ…
時間切れ引き分けまで待つ?」
「そうだねっ…
でも、それじゃあ、お前をフルボッコにできないしな。
やっぱ、動こうかなっ」
頭の上で大金槌を構える愛莉さん…
そして、そのまま頭上の金槌をプロペラのように廻し始めた…