40 シャボン玉
美那子先輩の手に光のボールが現れる。
いつもはバスケットボールぐらいの大きさなのに、今日はハンドボールぐらいの大きさ。
3連リングをつけているから、フォースは制御される。
でも、美那子先輩のフォースは他のメンバーに比べて優れてるってわけではない。
むしろ、フォース自体は弱い方かもしんない。
でも、美那子先輩の強さは、その身体能力にある。
だから、足の怪我が心配。
対する中津川唯の手には白く細い棒をもって、
バトンのようにクルクルまわしている。
美那子さんが光球をドリブルしながら前に出ようとする。
棒を咥える唯。
その棒の先から、数個のシャボン玉を吹き出す。
ふわふわと美那子先輩のほうに飛ぶシャボン玉。
そして美那子先輩の前で弾ける。
いえ…
爆発って言ったほうが正しい。
転がって後ろに避ける美那子先輩。
その間も敵はシャボン玉を作り続ける。
いつの間にか美那子先輩をシャボン玉が囲んでいる。
「ふうん。そういう技なんだ」
でも、美那子先輩はあわてない。
「もう、動けない。
動けばBOMBだよ。
キャハッッッ♪
ギブする?」
勝ち誇ったように唯が笑う。
「でも、これぐらいの隙間はすり抜けられるよ」
姿勢を低くして光球をドリブルする。
戦闘開始というように動き出す。
ドリブルしているのに目にも止まらない様なスピード。
そう、美那子さんはわずかな助走でトップスピードに達する。
ジグザクに影が動く。
瞬く間に間を詰める…
速いっていうよりも縮地…
まるでワープしているように…
いきなり唯の目の前に現れる…
そして、光球を振りかぶる…
アルティメットダンク…
美那子さんに必殺技…
FINISH!!!
そのとたん、中津川唯は不敵に笑う…
美那子さんの光球は唯にまで届かない…
なにか見えない壁に阻まれるように…
そして手から離れた光球は弾かれる…
中津川唯がストローを咥える。
そのまま、巨大なシャボン玉を吹き出す…
それは美那子さんを包み込む…
「踏み込みが甘かったね。
その足じゃあ仕方ないけどね…」
美那子さんを見て微笑む。
美那子さんはシャボン玉を割ろうとする…
でも、壊れない…
「じゃあ、ByeBye」
唯がシャボン玉を押す…
観覧車のように、
ゆっくりとそらに上がっていく美那子さんを乗せたシャボン玉。
そのうち、リングを離れていく。
場外20カウント…
中で暴れる美那子さん。
でもシャボン玉はゆがむだけで、力を吸収してしまう。
裕也の無情なカウントがはじまる。
1…2…3…4
祈るような気持ちで美那子さんを見る…
美那子さんはくやしそうにシャボン玉を叩き蹴り続ける…
7…8…9…10
進むカウント…
もう、手はないの???
絶望の状況…
でも、それを何度もなんとかしてきた…
今度も…
そう思う…
でも…
わたしは、美那子さんをみつめながら、ぎゅっと拳をにぎりしめた。