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28 真の後継者
「負けたよ。
希美っ…」
希美が輝美の手をとる。
「うん。
でも大剣では姉さまにかなわない…」
「俺は、小太刀とか軟弱な剣とか興味なかった。
それが、大道寺の奥義だったはな」
「でも、強かった」
「いやっ。
真の後継者はおまえだよ。
それに、あの頃より強くなった。
大道寺の太刀筋だけじゃない…
他によっぽどいい師匠がいるんだな」
希美はセコンドについた麻衣を見てコクリと顔を縦に振る。
「またやり直しだな。
でも、目標ができた。
次に会う時はおまえにも。
後ろの奴にも負けないからな」
麻衣さんも輝美に向かって微笑む。
いつでも来なさいって言うように。
「進化する…か。
でもさ。
俺も希美と別のやり方で、進化するからさ」
大きな手で希美の頭を撫でる。
くすぐったそうに、輝美を見上げる。
「じゃあな」
そう言って、花道を歩いていく。
その大きな影を拍手の渦が包み込んだ。