27 大道寺の弱点
「終わりだな。
ギブアップするんだな」
輝美が希美を見下ろす。
嘲るような笑い。
希美は折れた剣を捨てる。
脇差を抜いて構える。
「まだやるのか。
わたしの剣に手加減はない」
「姉様…
やっぱりお祖父様の言ってたとおり」
無口な希美のか細い声。
「ああ、大道寺の奥義は小太刀にあり・・だろ?」
コクンと縦に顔をふる希美。
「だが、その刀ではわたしの刀を受け止められない!」
輝美はそう言うと右の大剣を振り下ろす。
あぶないっ。
でも、希美はよけようとしない。
大剣が希美を押しつぶしちゃう。
そう思った。
でも、大剣は希美をよけるように隣の地面に刺さる。
手加減??
違うっ。
輝美の顔に怒りが浮かぶ。
横から左の大剣が薙ぐ。
キィィン…
かすかな音。
希美は動かない。
でも、剣は希美の頭のすぐ上を通過する。
狂ったように左右の大剣を振るう輝美。
でも、身動きもしない希美に当たらない。
「姉さま。
あたらないよ」
「くっ。そんなわけないだろ!」
でも、大剣を振り回す輝美。
「それが大道寺の剣なの。
戦国最強の剣と言われた…」
「わからねえよ!わかんねえ!何言ってるか!」
輝美の剣はバリアでも張ってあるかのように希美を避ける。
「超人的な力で重い剣を振る。
でも、攻撃は直線的…
ちょっと軌道を変えられると、当たらないの…」
キーン…
さっきからこの音。
小太刀で大剣の切っ先を弾く。
「信じねえよ!そんなの」
「一対多なら最強。
でも一対一ならこの小太刀にもかなわないの」
「嘘だっ!」
「小太刀の舞っ」
希美が輝美に向かって飛ぶ。
そして交差する。
希美の後ろで輝美がうずくまるのが見えた。