22 好敵手
泰葉さんの攻撃が止む。
「やっぱ、強いよね。
泰葉は…」
「沙耶香こそ…
致命的なのは一発も受けてないよね。
まあ、こっちもジャブのつもりだけど…」
「空間を使うんだったよね。
一瞬で距離をゼロにする技。
さすがだわ」
「わかってたんだね。
みんなただ速いだけって思ってるけど」
「そう、だから遠くの敵に拳だけを打ち込むことができる…
違う?」
「そのとおり、
でも、私の技はわかってもどうすることもできない。
あの頃ね。
みんなわたしの力を恐れてさぁ。
沙耶香だけだよ。
わたしとマジでつるんでくれたの。
だからさ。
沙耶香といるのがすごい心地よかった」
「わたしもだよ。
泰葉は親友だって思ってた」
「だったら。
なんで消えたんだよ!」
急に泰葉が声を荒げる。
「あんなやつに負けるわけないだろ!
沙耶香がさ!」
「うん、ここはわたしの居場所じゃないって思った。
あとは、泰葉がやってくれるってね。
泰葉は面倒見いいからさ。
みんなにツレって言うんじゃなくて。
リーダーとして認められていたんだよ。
チームのだれかがやられると…
真っ先に飛び出していってたじゃん。
みんなそういうのわかってたんだよ。
ただ、乱暴なだけじゃないってね」
「嘘だ!」
「嘘じゃないよ。
わたしは泰葉みたいになれなかった。
こっちが居場所だって思ったの」
「わたしは…
みんなに言われたけど…
もう、あいつと戦うことはできなかった。
沙耶香がいなくなって、心に穴があいたっていうか」
「そうなんだ」
「だから、倒させてもらうよ。
全力でね」
「うん、こっちも全力で迎えうつ…」
「いくぜっ」
泰葉さんの顔に微笑みが戻る。
その微笑みに沙耶香さんも白い歯を見せた。