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06 判断力
獅子は前足を上げて吠える。
あれっ???
違ったのかな???
でも、次の瞬間。
塵となって消える。
やっぱしっぽにコアがあったんだ。
とりあえず、タイムを見る。
時間オーバー、スレスレの9分50秒。
とりあえずセーフだ。
「何っ。
こんなのありなの。
習ってないよ。
あんな弱点」
春香はモニター室を睨む。
「でもね。
実戦では、初めての魔獣と戦うのよ」
安城さんの声がスピーカーから響く。
「でもっ…」
春香は口ごもる。
「風楽沢さん。
知識も大事だけど、本当に大事なのは判断力。
今回はそういうのを試すつもりだったの。
もし、これが実戦だったら、あなたは魔獣を倒せない。
たぶん、しっぽの弱点に気がつかなかったわ」
「実戦だったら、こんなことにならないもん」
涙声の春香。
「そうね。たぶん他のメンバーが助けてくれるわ。
美月みたいにね」
春香はわたしを振り返って、
顔をあげる。
すごい目でわたしをにらむ。
「今回はお礼を言っておくわ」
春香の唇は低い声でそうつぶやいた。