02 風楽沢春香
チャイムの音。
ドタバタとみんなの足音。
雑然としていた教室が、
急に整然となる。
静かにドアが開いて、
安城さんが教室に入ってくる。
「起立!」
春香が号令する。
みんな背筋を伸ばして…
「敬礼!」
ビシッと決める。
遅れたりしたら、後で春香の説教が待っている。
「着席!」
みんな一斉に客席。
そう、一糸乱れぬ軍隊式の挨拶だ。
でも、これがダンスとかにも生きるらしい。
そして、20人のクラスの学級委員に任命されてるのが、
となりの席の風楽沢春香。
まさにアニメでよくある生徒会長キャラ。
まじめで、何をとっても一番みたいな。
特に成績はだれもまねができない。
LOVE★WITCHESのメンバーにいちばん近いって言われてるし、
誰も否定できない。
子役としてデビューして、
いろいろなドラマとかで準主役を張ってたってこともあるし。
主題歌のCDなんかも出したことがあるらしい。
経験、実力ともに完璧だ。
「おはよう」
安城さんが微笑む。
30歳くらい、金縁の眼鏡とチェーン、それとビシッとスーツを決めている教官。
LOVE★WITCHES候補生の担任。
そして、最終的にメンバーにはいれるかどうかは、安城さんにかかっているらしい。
LOVE★WITCHESの発足から、代表の卑弥香さんの右腕として裏方に徹している。
フォースという特別な力を持ってるかどうかも不明。
でも、迫力はどの教官にも負けない。
「では、昨日のテストを返します」
テストの束を教壇に置く。
「満点は一人。
風楽沢さん」
春香が立ち上がる。
いつものことだ。
教壇まで行って受けとる。
でも、表情はかわらない。
当然って感じで。
ひとりひとり名前が呼ばれる。
ここではみんながライバル。
でも、あんまりそんな感じはしない。
友達の結果を喜んだり、一緒に悩んだりって感じで。
あとは優菜が春香と競うくらいで、
似たりよったりの成績。
で、特に悪いのがわたし。
「海崎さん。
35点。
もっとがんばってね」
テストを受け取って、舌を出すわたし。
まあ、学科は苦手だけど、
実技は得意だし、
いいかぁ、
みたいな感じ…
でも、春香は違う…
あとで、お小言の一つも覚悟しないと…
春香がイライラするのはわかる…
春香とわたしは、
出席番号が続いてる。
大体は出席番号順だからグループに分かれる時は、
2人でも3人でも、いつも同じグループ…・
完璧主義の春香には、
わたしがチャラチャラしてるように見えるんだろうな。
いろいろ考えるのって苦手だし…
まあ、わたしは次のメンバーを目指してないし…
もっと力つけないと、先輩たちに迷惑がかかるのはわかっている。
学科だってそう…
春香なら、今すぐにでもメンバーとして活躍できそうだけど…
なんかプロ意識ありすぎて、浮いてるっていうか…
もっと楽しんでもいいよねっておもうこともある。