表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

わたしは、どうしても言えないでいた。

手紙を書いて渡すことも……。

誰か、わたしに勇気をください。

先輩と話すことが出来るくらいの。

勇気を…。


「なぎさ。俺、父さんに付いていくことにした」

突然お兄ちゃんが言い出した。

「エッ…」

「向こうに行けば、スポーツも盛んだろ?俺さ、向こうで、サッカーをやりたいって思ったんだ。本場のサッカーとはいかないけどな」

お兄ちゃんが付け足す。

「なぎさは、スポーツ得意だろ。向こうなら色々なスポーツがあっていいと思うぜ」

お兄ちゃんは、何も知らない。

私の気持ち。

お兄ちゃんの後輩、大沢克俊先輩の事をわたしが好きだってことも…。

「なぎさは、もう少しゆっくり考えてだした方がいい。大沢の事も踏まえてな」

エッ……。

何で、お兄ちゃんが知ってるの?

「お前の事なら、大体分かる。大沢いい奴だぜ、キープしておいた方がいいと思う。到底、お前には無理な話か…」

お兄ちゃんは、それだけ言って部屋に戻っていく。

お兄ちゃん……。

そっか、お兄ちゃんうちの学校のサッカー部のOBだっけ。

それにお兄ちゃんは、今年の春に卒業したばかり。

知ってて当たり前か……。

でも、わたしにはもう一つ難問がある。

英語が全然駄目ってこと。

明日から、英語の勉強頑張らないと……。



「なぎさ、おはよう」

真奈が、わたしの背後から声をかけてきた。

「あっ、おはよう」

真奈は何時も先輩と一緒に登校してくる。

「じゃあな」

先輩は、それだけ言うと部室の方に行ってしまった。

「なぎさ。せっかくのチャンス見逃して」

真奈が、攻めたててくる。

「だって、何を話したらいいかわかんなくて…」

「何弱気になってるのよ。そんなじゃお兄ちゃん、他の娘にとられちゃうよ」

真奈が呆れたように言う。

「お兄ちゃんにも言われた」

「エッ…。どう言うこと?」

教室で話してたわたし達。そこに未久ちゃんも合流し、二人とも驚いてる。

「お兄ちゃん、わたしが大沢先輩の事を想ってること、知ってたみたいなの」

「エッエーーーー」

更に驚きの声が響く。

「ほら、うちのお兄ちゃんさ、この学校の卒業生じゃん。それにサッカー部のOBだし…。だから、先輩の事知り尽くしてるみたい」

わたしは、二人に説明する。

「嘘。でも、なぎさのお兄ちゃんの事信じられる気がする」

真奈が言う。

「そうね。なぎさのお兄ちゃんカッコいいもんね」

未久ちゃんが愛奈に続いて言う。

「そのお兄ちゃんは、向こうに行くって決めたみたい」

わたしは、そう付け足した。

「嘘。私、密かに狙ってたのに…」

未久ちゃんが言う。

お兄ちゃん、彼女いるけど……。

って、言わない方がいいか。

「それにしても、なぎさ。あんたはどうするの?」

真奈が聞いてきた。

「まだ決めかねてる。…けど、多分付いていくと思う」

「じゃあ、お兄ちゃんの事諦める気になったんだ」

真奈の言葉が、胸に刺さる。

「でも、お兄ちゃん。なぎさの気持ち知ってると思うよ。だって、私の部屋に入って来るなり、なぎさの事ばかり聞いてくるんだもん」

エッ…。

「先輩の妹ってだけじゃなくて、スポーツをやってるなぎさが一番好きみたいだよ」

「それ、本当…なの?」

「本当よ。スポーツできるのに何でクラブ入らないのか、不思議がってたよ」

「そうだよね。なぎさったら、運動神経だけは、人一倍凄いものね」

真奈も未久ちゃんも変に煽てる。

「早々。何やらせても動きがいいんだもの。あたし達霞んじゃう」

未久ちゃんが不貞腐れるように言う。

「向こう行ったら、何かスポーツをやってみたら、結構いい線いくかもね」

真奈が言う。

「そんな簡単に言わないでよ」

「なぎさなら、向こうに行っても活躍できると思うよ」

未久ちゃんが言う。

「まぁ、ゆっくりと考えれば、後二ヶ月もあるんだしね。その間は、私たちに付き合いなさいよね」

真奈が、笑顔で言う。

「ごめん。そうしたいのは山々なんだけど、今日から、英語の勉強しないと……」

「そっか…。それじゃあ仕方ないか」

「なぎさって、英語以外は、何でもこなせちゃうくせに、何で英語が駄目なわけ?」

未久ちゃんが痛いところをついてくる。

「そ…それは…」

わたしは、戸惑ってしまった。

「未久。私たちもなぎさに付き合ってあげよう。なぎさ一人で出来るものでもなさそうだし」

「そうだね。少しでも役に立つことしたいよね」

「未久ちゃん、真奈、ありがとう」

わたしは、二人にお礼を言う。

「英語なら、うちのお兄ちゃんが得意だから、教えてもらえば」

真奈が言う。

「ううん。そこまでしなくてもいいよ。わたし、一人で頑張るから」

「そう、もし解らないところがあったら、聞きにくるんだよ」

「ありがとう」

わたしは、二人と別れて、図書室に向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ