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アヴェンジャー・ライフ  作者: 夢落ち ポカ(現在一時凍結中)
第二章 約束の刻来たれり
29/32

プロローグ2 星暦1211年10月3日

 



 カードラ大陸より更に北、人類の活動限界領域外にある『特級禁忌地域』の一つ、テンガイ氷河と呼ばれる最奥に、秘密結社【夜明けの軍団(レギオン)】の拠点があった。


 測定不能とされるランクの魔獣がそこかしこに生息している場所にぽつんと建っている真白い箱型の建物は日中吹き荒れる猛吹雪に対してビクともせず、周囲の魔獣を近付かせない異様な雰囲気を纏っていた。


 テンガイ氷河の魔獣達は経験則として知っていた。


 あの白い建物に手を出せば、周囲に散らばっている(・・・・・・・)魔獣達と同じ死が待っている事に。


 魔獣達の親も、そのまた親も知らない程の昔から存在するその建物は、テンガイ氷河における【不可侵領域(アンタッチャブル)】なのである。


 その建物の地下にある一室で、1人の少年が目を覚ました。


 やや赤みがかった髪の毛に寝癖が出来ているが、少年は気にした様子もなく両腕を上げて背筋を伸ばした。


「…うぅ…んむぅ。

 ふぁうあ~。

 ……うん、シャワー浴びて着替えよう」


 大きな欠伸をした少年は寝巻きと下着を床に脱ぎ捨てシャワーを浴び、予め置いてあった新しい下着と簡素な服を着て、最後に白衣を纏うと、部屋から出た。


「おはようございます、マスター。

 朝食の準備が出来ていますが、とられますか?」


 部屋から出てすぐ現れたメイド服を着た少女が少年を『マスター』と呼び尋ねてきた。


 妙に抑揚に乏しいが、それでもはっきりとした意思は感じられる心地の声だった。


「おはようアンネ。

 朝食はもらうよ、研究室にある僕のデスクに置いておいて。

 それと、そのマスターって言うのやめてって言ってるでしょ?

 僕にはエヴァンっていう名前があるんだから」


 人形めいた容姿をした少年―――エヴァン・ヴァーミリオンは少し湿った髪を掻きながらぼやいた。


「では、後ほど研究室にあるマスターのデスクに朝食を運ばせていただきます。

 それと、午後より【元帥】閣下がいらっしゃいます。

 研究にのめり込まれない様に、予め申し上げます」


 アンネと呼ばれた少女はそんなエヴァンのぼやきを聞かずに流した。


 アンネはこの数ヶ月間、エヴァンが次の任務までの間に研究を一区切りつけようとしているのに気付いていた。


 エヴァンは睡眠時間を削ってまで研究を続けていたのである。


 実際にその睡眠時間を削っただけの成果も叩き出しており、実験も順調に進んでいた。


 だが、エヴァンは更に睡眠時間を削ろうとしているのである。


 エヴァンに仕えるアンネとしては、なんとしても止めなければと思い、都合のよい忠言したのだが、


「…そっか、もうすぐ新しい任務の開始日時が迫っていたんだっけ。

 じゃあ(・・・)、今日中に今やっているいる実験を終わらせないとね」

「……あ…」


 スタスタと研究室に足早に向かっていったエヴァンにアンネは自分の言葉が逆効果だったのだと後悔するのだった。



 ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■ ▲ ■



(…最近アンネが鬱陶しいなぁ、恩義を感じるのはいいけど、干渉が強いのはちょっと面倒くさいよねぇ)


 エヴァンは朝食をとりながら資料を(めく)った。


 綺麗な書体の文字と数字、そしてそれが均等に的確に事細かに用紙に記載されている『実験結果』とタイトル付けされた資料を見て、エヴァンはぼやいていた。


 アンネという少女は2年前、実験体を欲していたエヴァンが殲滅任務を受けていた際に助けた被害者であった。


 当時1人でも実験体を欲していたエヴァンではあったが、自分が助けた存在を使い捨て(・・・・)にする気は起きず、ちょうど身の回りの世話が欲しかったのでメイドとしてアンネを雇ったのだ。


 最初から期待していないエヴァンであったが、1週間もすれば『食べられない事はない食事』が『おいしい食事』にスキルアップしてからは、アンネに対して特に言う事はなくなった。


 炊事選択に関しても特に問題の無い結果を残していたアンネは、エヴァンにとって『必要』な存在になっていたのだ。


 しかし、その頃からアンネはエヴァンに対して干渉するようになっていった。


 やれ睡眠時間は必要だの、やれ食事はとれだの、同じ服を何日も着るなだのと口煩い事を延々と、しかし淡々とアンネはエヴァンに忠言するのだ。


 エヴァンが組織に対して異様な恩義を感じているように、アンネもまたエヴァンに対して恩義を感じ、そしてエヴァンの事を案じていたのである。


 とはいえ、そんな心配も『余計なお世話』と切り捨てて殆ど言う事を聞いていないのだが。


 閑話休題(それはさておき)


 読み終えた資料をデスクへ放り投げると、ガラスの中に浮かんでいる『実験体』を見てその経過を眺めながらぼやいた。


「…順調だけど成長が遅いか、さすがにシビュラ草を投与してもコレとはねぇ。

 どうしよう、確かアンネが【元帥】閣下がこっちに来るって言ってたけど、一旦ここで実験を区切ろうか?

 けどこんな所で区切ると実験体を安定しないし…安定させるのなら『フラウ545』を投与した後ならもっと効果的な成果を確認してからでも遅くは無いよね?

 けど、これ以上細胞増殖率を早めると細胞に何らかの異常が現れる可能性が…うーん、まぁこの実験体は使い潰しても問題無いし、やれる事は全部やってから…」


 前回の任務で偶然見つけたシビュラ草、その知られていない効能を使い研究に当てているのだが、それだけで満足できないのか、エヴァンは他の薬品の使用を考え始めていた。


「―――そんな事をしていれば、一体私と会うのにどれだけの時間が経っているのかな、序列第二位【大佐】エヴァン・ヴァーミリオン?」


 と、突然背後から声をかけられたエヴァンは特に驚く事もせず、まるで元から其処にいたかのような気安さでその質問に答えてしまった。


「うーん、フラウ以外にも『ボリセア112』とか、『ペロシ449』とか他にも8種類くらい投与してから時間経過もして…4時間くらいかな?

 ……あれ?」


 ようやく気付いたのか、エヴァンがようやく後ろに振り返った。


 そこには1人(・・)を除いて良く知った顔ぶれが揃っていて、エヴァンはここに来てやっと驚いた。


「ヨシュア【元帥】閣下にアルフィ!?

 なんで?

 約束の午後ってまだ時間が―――」


 と、時計を見てみると、時計の時針と分針は午後を大きく過ぎてしまっていて、アンネは呆れ顔でエヴァンをジト目で睨んでいた。


『あれだけのめり込まないでと言ったのに』と言わんばかりの表情に、エヴァンは辟易としながら顔見知り2人を眺める。


 エヴァンよりも頭2つ分ほど高い身長の女性がうっとりとした表情をしながらエヴァンを見つめている。


 息をするのも忘れてしまうほどの絶世の容姿はこの場にいる誰よりも華々しく、美しい姿を特注の軍服に身を包んでいたが、無骨な軍服ですら彼女の容姿を更に引き立たせていた。


 何よりも特徴的なのはその『色』であった。


『紅』色の長髪に『紅』色の瞳は彼女の『美』をまさに体現していたのだ。


夜明けの軍団(レギオン)】序列第一位【大佐】アルフィ。


 独立機甲部隊『鉄蛇』の総隊長にしてコードネーム【紅竜】と呼ばれる組織でも最強クラスの使い手である。


「久しぶりね愛しのエヴァ、実際に顔を合わせるのは9ヶ月ぶりかしら?

 面倒臭い任務の所為で西側を回っていたけど、ようやく終わらせて会いに来たのよ。

 ほら、エヴァの大好きなアルフィお姉さんよ、いつも(・・・)の様に抱きしめてちょうだい?」


 ―――そして、エヴァンの事をこよなく愛する組織きっての変わり者でもあった。


 両手を大きく広げて絶世の美女(アルフィ)はエヴァンが胸に飛び込んでくるのを待っているのだが、生憎とエヴァンにはそんな気は無い。


「さらっと嘘を練り込まないでよアルフィ。

 いつもの様にって、僕らそんなことしていなかったでしょ。

 記憶を捏造しないの」

「じゃあ今度こそ、いつもの様に私から抱きしめちゃうわよ、ほらっ!!」


 アルフィと出会った6年前からただの一度としてエヴァンからアルフィに抱きついた事は無い。


 いつもアルフィからエヴァンを正面から抱きついていき、満足するまで離さないのが歴史の事実であった。


 身長差のせいでエヴァンが完全に押さえ込まれて息苦しく感じながら、頭上からの声がするのを黙って聞いていく。


「相変わらずいけずねエヴァは。

 せっかく私が時間を作って会いに来たのにそんな仏頂面して、少しは笑って出迎えて欲しいものだわ。

 けど、そういういけずな所も愛しているわよ」


 ようやく力が緩んだ所で息苦しかった中央を掻き分けたエヴァンは、変わった体勢にありながらもいつもと変わらない友人(・・)にどこか噛み合わない会話をしていく。


「相変わらずなのはアルフィだよ。

 何が楽しくて僕と一緒に居たがるんだかさっぱりだ。

 ……あ、そうだアルフィ、この前はアトラス貸してくれてありがとう。

 おかげで特記戦力を押さえ込める事に成功したよ」

「それはよかったわ、エヴァの為に役立てたのなら貸した甲斐があるというものね!!

 そうそう、アトラスから伝言よ。

『これで納得したと思うなよ』ですって、エヴァ、アトラスに何かしたの?」

「特記戦力押し付けられて鬱憤(ウップン)溜まっていたんじゃないの?

 昇進の推薦しておいたから、あれで納得してもらえると思ったんだけどなぁ」


 アルフィが総隊長として指揮している独立機甲部隊『鉄蛇』の部隊長にしてコードネーム【人形遣い】のアトラスは前回の任務の功績から昇進の推薦が来ており、本人も希望して無事序列第二位【少佐】となったのだが、それでは納得していなかったらしい。


 エヴァンにハメられた(・・・・・)と分かっているからこそ憤っているのだが、何も問題なかったと上官2人が言い切った作戦に、上申の仕様が無かったのだ。


「まぁ、アトラスが怒っているのはいつもの事だし、気にしないわ。

 一先ずは満足したし、私は後ろに控えているわ。

 今日は【元帥】閣下の護衛も兼ねているのよ」


『またね』と投げキッスをするアルフィにため息で返したエヴァンはようやく笑顔を張り付かせた男性へと向き直った。


 アルフィの華々しさとは裏腹に、こちらは見ていて寒気がするほどの感覚に襲われる美男子である。


 肩辺りで切り揃えた黒髪に黒曜石を嵌め込んだような漆黒の瞳をした彼は先ほどのアルフィとエヴァンのやり取りを思い出したのか、クスクスと笑っていた。


 秘密結社【夜明けの軍団(レギオン)】における頂点の一角3人からなる【元帥】。


 序列第三位【元帥】にしてコードネーム【破軍】の名を持つ年齢不詳、実力不明の人外である。


「お久しぶりです、ヨシュア閣下。

 2年振りでしたっけ?」


 上官に対して使う口調ではないのだが、幸いにしてエヴァンはヨシュアに対してそのような口調でいても許される間柄であった。


「ああ、ちょうど我々に剣を向けた愚かな組織を殲滅する任務の時以来かヴァーミリオン【大佐】。

 前回の任務で派手にやらかしたようだが、『復讐』の方は満足行く形で終わったのかな?」


 組織の最高幹部であるヨシュアは当然ながらエヴァンの復讐については知りえている。


 エヴァンの師でもある人物とも交友のあるヨシュアは前回エヴァンが関わった任務の提案者にしてエヴァンをアナハイム王国に送り込もうとした推薦者だったのだから。


「ルッケンス閣下とヨシュア閣下の口添えのお陰であの任務に関われたのは幸いでした。

 満足度は…まぁ、上々(・・)でしょうか?

 あそこにはあといくつか仕掛け(・・)を残してきているんで、それ次第で最後の満足度も変わるんじゃないかなって思います。

 ところで…アルフィと一緒にいるそこ(・・)のは何ですか?」


 気になっていたのか、ヨシュアの後ろに控えている青年をエヴァンは視線だけを向けた。


 組織の軍服を着ているが、エヴァンの見る限り青年が組織に来てまだ間も無い真新しさを感じ取ったのだ。


(大方どっかの【将官】クラスの誰かがスカウトしてきた人材なのかな?

 けど、ヨシュア閣下が態々(ワザワザ)連れてくるっていうのも何かおかしい気がするな。

 ここに連れて来たって事は、このロゴス研究所に配属されるっていうこと?

 …ダメだ、読み切れないや。

 にしても、なんか失礼な目で見てくるなコイツ、磨り潰してやろうか?)


 エヴァンに対して明らかに不審な目で睨んでいる辺り、よからぬ考えを腹に抱えているのは間違いないと察することが限界だった。


 物騒な考えが浮かび始めたが、ヨシュアの目が妖しく光ったのに気付きエヴァンは仕方なく諦めた。


 余計な手を出して、逆に自分がすり身(・・・)にされるなど、たまった物ではないと悟ったからだ。


「まぁ、彼の事はまた後だ。

 それよりも、研究も良いのだがそろそろ計画を実行に移したい、準備の方はいい加減終わっていると思ってもいいのかな?」

「出来れば今やっている研究に一区切りつけたいんですけど…アンネ、申請期限っていつまで?」

「明日の午後12時ちょうどですマスター。

 代筆は済ませています、後は印、もしくは血判を押していただいて本部に転送すればそれで完了です」


 間髪入れずに返したアンネは『後はマスターの作業で終わりなんですよ』と暗に示していて、エヴァンは居心地の悪さを感じたのだが、自業自得だと諦めた。


 時間にルーズなのは否定しようのない事実でしかないと割り切ってしまっている辺り、反省もしていないのだが。


 ヨシュアは紙の束をエヴァンに渡すと、読むように促した。


 表紙には、【約束の杯(ヴァスパレク)】とタイトルされた今作戦の計画書であった。


「……拝見します」


 ぱらり、と表紙を捲り内容を読んでいくエヴァンは次第に表情を曇らせていく。


 次第に捲る速度も上がっていき、読み上げた時は本当に最後まで読んだのか不安に思うほどの様子にアンネは何かあったのかと不安に駆られた。


「………閣下、この程度(・・・・)で済ませるんですか?」


 何か思うことがあるのか、それとも納得が出来なかったのか、とにかく不満なのだろう。


 エヴァンはヨシュアから渡された書類を読み上げるなり、不機嫌な声を上げた。


「不満のようだね」

「不満ですよ、不満マンマン(・・・・)です。

 内戦している間に【神々の贈物(アーティファクト)】を掠め取るとか、何でこの僕が火事場泥棒みたいな事しなきゃいけないんです?」


 エヴァンの高すぎるプライドが邪魔したのか、それとも食指が湧かなかったのか。


 とにかく、気に入らない事は確かなのは表情、雰囲気からしてこの場の誰もが分かり切っていた。


「とはいえ、短期間に任務を終わらせるのならば、これほど楽な任務はないだろう?

 復讐は任務の外でやってくれた方が前回の惨状を見て我々が感じた見解の一つでね。

 よっぽどの理由がなければ……ん?」


 話の途中でエヴァンはヨシュアの前から消えて自分のデスクにある紙の束を取り出し戻ってきた。


 ヨレヨレにはなっているが、日付はつい最近の物で、タイトルには【堕ちた杯(フォールンテッサ)】と記載されており、提案者にエヴァンの名が、そして連名で別の人物の名前が入っていた事に気付いたのだ。


「―――では、こちらの書類に目を通していただけますか、閣下?

 そのよおっぽど(・・・・・)な理由が詳細に記されていますんで、再考していただきたいです」

「……用意周到だねこれはまた。

 拝見させてもらうとしようか」


 表紙を捲り、じっくりと内容を吟味していく内に、ヨシュアの視線が止まった。


「これは…」


 よほどのないようなのか、思わず唸るほどの声を上げたヨシュアは次々と紙を捲りながら最初に渡した計画書とエヴァンから渡されたこの内容を鑑み始めた。


「あくまで仮に…仮にだが。

 この計画を採択した場合、どれくらいの期間で成果を上げる事が出来るのかな?」

「1年あれば余裕でいけます。

 まぁ、更に余裕を持たせてもそれプラス2ヶ月もあれば、まず修正も利きますし、成果に関しても間違いないでしょう。

 博士(プロフェッサー)からも強い要望がきています」


『博士』という言葉を聞き、ヨシュアは今度こそ表情が固まった。


「博士…【技術開発局】局長、【大統一博士(グランドプロフェッサー)】ノイマン・クランプスか。

 厄介な御仁を引っ張り込んだね。

 ヴァーミリオン【大佐】、こうなる事を予測していたのかな?」


 降参といった様子でヨシュアはエヴァンにネタばらしを求めたが、エヴァンはクスクスと笑うばかりで答えようとしない。


【技術開発局】局長、【大統一博士(グランドプロフェッサー)】ノイマン・クランプス。


 飛空挺、【魔導機械人形(マギ・オートマタ)】を考案し、薬学部門においても比類なき功績を数百年(・・・)に渡り上げ続けてきた組織きっての()天才博士である。


 ここ最近では人形兵器でも最大級の作品、拠点殲滅用人形兵器【破壊神(シヴァ)】シリーズが知られており、かつてエヴァンは彼の元で薬学部門に出向していた頃、その知識を惜しみなく享受されていた。


 その彼から、今回の任務において『注文(オーダー)』をしてきたのである。


 それも、組織にとって今後の計画に深く関係したもので、とてもではないが却下の一言で片付けられる問題ではなかったのだ。


 必然、ヨシュアはこの計画書をエヴァンから預かり、すぐさま緊急会議を開く事を決めた。


 結果は判りきっているが、それでも万が一、億が一という事も有り得る。


「…期待して待っているといい。

 おそらく…間違いなくこの計画は通るだろう」

「ハイ、期待してお待ちしてますね。

 それじゃあ閣下、最後にそこの彼の事、教えてもらえます?」


 ヨシュアの予定が簡単に想像出来たのか、然程気にもしていなかったが、エヴァンはアンネ以上に空気扱いされていた彼が一体何者なのか尋ねたのだった。


「紹介しよう、彼の名はナタク・N・クランプス。


大統一博士(グランドプロフェッサー)】が企画推進している計画の一つ【N】計画の現場責任者だ。

 ―――そして」


 ヨシュアがエヴァンに満面の笑みを浮かべ口にした。


 その笑みがロクでもない笑みである事を、2年ぶりにエヴァンは思い出した。


「エヴァン【大佐】、貴官の副官だ」

(……あんのクソ博士(ジジイ)、僕まで嵌めやがったなああああっ!?)




 ―――そして、その日の内に緊急会議が開かれ、エヴァンとノイマンの連名で書き上げられた計画書が議題に上がると、1時間もしないうちに採択された。


 組織きっての狂人達(・・・)が書き上げた計画は次の任地、『モスコ帝国』を舞台に凄惨な幕が開ける事となる。


 後の世に【帝国滅亡】と呼ばれる帝国消滅の原因となった事件が起きるなど、帝国の、否、大陸の誰もが知らなかった。






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