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てるてる坊主

作者: 八田ミノル

「大丈夫かな」


ナオは理科室の前に立っていた。この理科室、オカルト研究部(通称オカ研)の部室として使われているのだが何を心配しているかというとこの部活、なにかといわくつきで交霊をしてるとか黒魔術を行っているとかその他いろいろきりがないほどに出てくる。だからいつもこの時間は部室の前を通ることさえためらわれている。


「失礼します……」


部室を見回すと部員が二人いた。一人はパソコンをいじり、もう一人はマンガを読んでいる。


「あの……」


パソコンをいじっていたほうが気付いた。


「部活見学ですか」


「いえ」


なぜかけだるそうに言った。


「じゃあ何、冷やかしにでも来たの」


「違いますよ!」


なぜその結論につながるのだろうか。


「相談がありまして……」


パソコンをしているほうの目が一瞬光ったような気がした。




「一応自己紹介をしておこうか。俺の名前は塩谷よろしく」


パソコンをいじっていたほうがあいかわらずけだるそうに言った。


「で、こっちが……」


「あ、工藤君」


「松原……」



二人は驚いた。


「工藤君オカ研に入ってたんだ……」


「え、いや」


一瞬気まずい空気が漂う。


「知り合いか」


塩谷がきく。



「同じクラスだよ……」


オカ研に入っていることがばれて落ち込みながら工藤が言った。


(明日から変人扱い決定だ……)


「で、相談って」


塩谷が何事もなかったかのように聞く。


「まずこれを見てください」


ナオはポケットから鈴を取り出した。金色に塗られている。


「この鈴が何か?」


塩谷が鈴をまじまじと見ながら聞く。


「もらったんです」


「誰に」


ナオは一瞬ためらったが言った。


「てるてる坊主に……」


「てるてる坊主ねぇ」


塩谷はニヤニヤしている。


「本当なんです!一週間前の雨が降った日にいきなり出たんですよ」


「てるてる坊主が?」


「私も最初は驚きました。私と同じくらいの大きさでしたし」


「それで」


「私にいきなりこの鈴を渡して消えたんです」


「なるほど。ほかになにか」


「その二日後も雨が降り出すと出て来てお酒を置いて行ったんです」


「それは不思議な」


「あの、もしかして信じてないですか?」


「信じてるけど」


相変わらずとニヤニヤしている。


「そういや今日は雨が降るんだっけな、おい工藤そのテルテル坊主見てこい」


「はぁ、なんで俺が」


「いいじゃねえかよ、ラーメンおごるからさ」


「食いものにつられるって俺は犬か何かか!?」


工藤は怒鳴って教室を出た。



「で、結局来るのね」


工藤とナオはナオの部屋にいた。


「それでそのてるてる坊主の見た目は?」


ごまかすかのように工藤は質問をした。


「大きさ以外は普通のてるてる坊主なの」


「ほかに特長とかは」


「顔が子供の落書きみたいだとか足がなくって浮かんでいるとか」


工藤はその特徴を聞きあるものを思い出した。


「九十九神かな」


「九十九神?」


聞きなれない言葉に思わず聞き返す。


「物は一定の年月形を保っていると妖怪になるって話だ」


「妖怪って……」


「動くてるてる坊主なんて妖怪以外の何もんでもないだろ」


そんな話をしていると工藤のケータイに電話がかかってきた。


「おい工藤てるてる坊主は出たか」


塩谷だ。


「いやまだだけど」


「今すぐその家を出ろ!」


塩谷が怒鳴った。どうやらかなり焦っているらしい。


「は?なんでだよ雨も降りそうだし」


「だから出ろって言ってんだよ!」


「もしかしてあのてるてる坊主のことか?」


「調べてみてわかったことがある。お前てるてる坊主の歌最後まで知ってるか」


明らかに関係のない話に工藤は戸惑った。


「明日天気にしておくれってとこまでしか知らないけどそれがどうしたってんだよ」


「うたの続きはこうだ。」


いつかの夢の空のよに晴れたら金の鈴あげよ


「それであの鈴を持ってきたわけか」


「二番では酒をやるとあるが問題は三番だ」


てるてる坊主てる坊主明日天気にしておくれそれでも曇って泣いたならそなたの首をちょんと切るぞ


「首が切られるってか」


「いやわからん、だが……」


「あ、雨降ってきた」


ナオはのんきに窓の外を眺めていた。


「も、もうか!?」


外はポツリポツリと雨が降り始めている。


その時だった。


「あれは」


窓の外にてるてる坊主が浮いていた。


『テルテル坊主テル坊主明日天気にしておくれ』


「あれ、テルテル坊主が歌ってるのかな」


『それでも曇って泣いたなら』


テルテル坊主は歌いながらどんどん近づいている。


『そなたの首をちょんと切るぞ』


歌い終わると同時に窓ガラスを割り入ってきた。その手には大きなハサミを持って。


「な、なんなの?!」


『ちょんと切るぞ ちょんと切るぞ』


まるで壊れたラジオのように繰り返している。


「逃げるぞ!」


工藤とナオは走りだした。


玄関のドアを開けようとドアノブに手をかける、だが


「クソッ、開かねぇ」


『ちょんと切るぞ』


テルテル坊主がハサミを突き立ててきた。


「あぶねっ!」


なんとかよけることができた。テルテル坊主は刺さったはさみを抜こうとしている。


「塩谷、どうにかならないのか!」


ケータイ越しに塩谷にどなった。


「こうなりゃ本体をつぶすしかねえ」


「本体ってこいつじゃねーのか」


「火箸の九十九神はその火箸を折ると消えたらしい」


「じゃあこの家のどこかにテルテル坊主を壊せばいいのか」


「そうであることをいのるしかねえな」


「おい松原おまえいつもテルテル坊主どこにつるすんだ」


「えっとベランダ」


「あとマッチもさがしておいてくれ」


「わかった」


工藤はベランダに出た。


「くそっどこにあるんだ」


(落ち着いて考えろベランダで物をつるせる場所は……物干しざおだ!)


物干しざおの近くを調べると


「あった!」


ゴミバケツに隠れてそれはあった。


「ちょんと切るぞ ちょんと切るぞ」


テルテル坊主はこちら側に近づいてくる。


「松原、まだか!」


「あった!」


どうやらマッチを見つけることができたようだ。


「こっちに投げてくれ」


投げられたマッチを受け取った。だが


「くそっつかねーぞこのマッチ」


しけってしまっているのかなかなかつかない。


「ちょんと切るぞ ちょんと切るぞ」


テルテル坊主はどんどん近づいてくる。


あと一メートルだ。


「よッしゃ!」


マッチに火がともった。


マッチについた火でテルテル坊主に火をつける。


「ギャァ!」


テルテル坊主に火をつけたとたんはさみをもっているほうも燃えあがっていくいく。


「ちょんと切るぞ……ちょんと切るぞ!」


テルテル坊主が工藤にはさみをつきたてようとした。


カラン


はさみが音を立てて地面に落ちた。


あとには灰だけが残っていた。



「いやー、昨日は大変だったなー」


塩谷はラーメンをすすりながら言った。


「大変だったなー、じゃねえよ。死ぬところだったんだぞ」


三人はラーメン屋にいた。あの後テルテル坊主が割った窓も刺さった後もすべて消えてテルテル坊主のいた証拠は何一つ残ってはいなかった。


「それにしてもあのテルテル坊主はなんで襲ってきたんですかね?」


「昨日はなした火箸の九十九神は忘れ去られていた火箸が化けたもんだ。たぶんそのテルテル坊主も同じような理由で出たんじゃねえの?」


塩谷が言った。


「私の、せいですか……」


「たぶんなー」


塩谷がそっけなくいった。


「まあ、みんな無傷だったしテルテル坊主も最後は見つけてやったんだしそんな落ち込むことないんじゃねーの?」


工藤がフォローするために言った。


「そう、かな?」


「そうそう。さ、ラーメンさめる前にくっちまおうぜ」

















あなたの家にはなにか忘れ去られたものはありませんか?


もし心当たりがあるのならご注意ください。ほら、聞こえてきませんか?恨みに満ち溢れたテルテル坊主の歌が……


はじめまして。八田ミノルと申します。

この話はむかし某無駄知識の泉で聞いたてるてる坊主の歌をふと思い出したのをきっかけに書かせていただきました。この話では主人公たちがてるてる坊主の歌を知らないことで成り立っているわけですがもし一般常識だったらすみませんでした。

最後にこのような駄文にお付き合いいただき心より感謝を申し上げます

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