9話 ダンジョンの主
ムジカはそっとドアを開けて王の間の中を伺った。
正面奥には玉座とそこに座る人物、その両脇には武器を構えた護衛らしき人物が1名ずついた。
さらに部屋の両脇には獣人が群れを成していた。
王「よく来たな。地上の冒険者たちよ」
王は侵入者に気づくと恫喝するでもなく、静かに話し始めた。
ムジカ「!?」
気づいているのに敵対行動をしてこない相手を見て、これなら噂通りかもしれないと思えた。
仲間に合図を送り、全員で部屋に入った。
それをみた王がもう少し近づくよう、合図している。そしてそれに従った。
王「いきなり攻撃してくるアホウでなくてよかったぞ。さて、、、、」
間を開けてから再度話し始めた。
王「随分と我が居城の品物を盗んでいってくれたな。だが、まあ、そんなことはどうでもよい」
そういうと王にピタリとくっついていた護衛が少し王の前から横にどけた。
王「怖いか。そうであろう。この数ではな」
王の姿がよく見えた。コボルトだった。
ムジカ「コボルトが王!?」
王「聞こえたぞ、冒険者よ。そうだ。コボルトの我が王だ。おかしいか?」
悪魔種や吸血鬼種など、より闇に適性がある種族がいる場所で、地上にもいるコボルトが王だとは思わなかった。皆が返答できずにいると、王は一呼吸おいて、まだ話を続けた。
王「お主らの狙いは、これか?」
そういうと王は黒い玉が装飾されている王冠を手に取った。
王「この宝珠か王冠のどちらか知らんが、これが狙いなのだろう?」
大聖堂が出しているクエストの目的物が闇の宝珠だ。あの珠がそうなのだろう。
だが、ムジカたちはそれが目的ではなかった。
ムジカ「違うと言ったらどうする?」
思いがけない返答を聞いて王は少し意外そうな表情に変わった。
王「ふむ。となると、何しに来たというところだな」
そういうと王は笑った。
ムジカ「あんたがこの部屋に侵入した冒険者に帰還を許したって聞いている。私たちも見逃してくれるのかい?」
王「なるほど。今、後ろのドアを開けて引き返すなら、我は止めぬぞ」
ムジカ「見逃してくれるって言うのか?」
王「会話で対応した褒美だと思えばよかろう」
これは行ける!ムジカは感じた。
ムジカ「じゃあ、1つ提案したい」
王「ほう。何だ?」
ムジカ「酷い話だが、もし冒険者が王に挑み、全滅したら遺体を回収させて欲しい…」
王は意外な発言や提案を繰り替えす目の前の対象物が不思議だった。
王「面白いことを言う冒険者だな。よかろう。死体は部屋の外に捨ててやろう」
ムジカの提案が通った。無事に帰してくれるだろうが、まさか提案が通るとまで思わなかっただけにムジカは驚きを隠せなかった。
王「で、そなたらは私に戦いを挑むのかな?そういう気迫を感じないが」
ムジカ「いや、我々はこの提案をするために来ただけだよ」
王「ほう。なるほどな。確かに放置された遺体について考えると…」
そこまで王は言うと黙り、何やら考えていた。
王「よかろう。ほかに話が無いなら、退出したまえ」
王はそう言いながらムジカたちの背後のドアを指さした。
ムジカ「ありがとう。ではこれにて失礼する。高貴なる王よ」
最後の一言はご機嫌取りでもあったが、本心も少し混ざっていた。
無事に王の間を出て、前室に戻った面々。一気に息を吐くと、どっと疲れが出たような気がした。
ムジカ「敵に遭遇すると面倒だ。感想は後にして、まずは地上へ帰るよ!バーナード転移魔法よろしく!!」
バーナードが転移魔法を詠唱し始めると、ほかのメンバーは辺りを警戒した。
無事に詠唱が終わり、光がパーティーを包む。
そして地上へ転移した。




