8話 ダンジョン最下層
ムジカの提案で始まった今回のダンジョンの主に謁見するという行為。
これまでのパーティーが帰還できたからと言って、次もそうとは限らない。
最悪を想定し、各自が地上に緊急離脱できる魔法が込められた魔法道具"ガラスのスリッパ"を所有していた。この道具は地上の魔法工房で作られているが、冒険者が持ち込み、その冒険者を倒した戦利品としてダンジョンにいる獣人が所有していることもある。装飾品として。
さて、そんな便利アイテムだが、1つだけ懸念があるとすれば王がいる"王の間"が転移不可空間だということだ。
地上から転移魔法で王の間に直接飛ぼうとすると無効化されて失敗する。そのため、王を倒すときはその前室へ転移しようというのが冒険者の間の決まり事だった。
その転移不可空間でガラスのスリッパを使って無事に地上へ帰還できるのか、それがわからなかった。
だからこの便利アイテムも所詮は保険でしかなかった。
もっとも、このアイテムを使う必要に駆られる場面にはならないだろうという推測があったからこそ、王の間に行こうというのだ。
翌日、準備を終え、ダンジョン入口に集まった面々。
早速転移魔法を詠唱して、王の間の前室へ飛んだ。
王の間の扉には"王の間"と表札が掛かっている。ここだとはっきりと示されていた。
ムジカ「いつみても変な看板だね、これ」
ダニー「ああ。ダンジョンを荒らす曲者を殺す気なら、こんな看板付けないで、知らないで入ってきた冒険者を打ちのめす方が理にかなっている」
バーナード「そうか、これがあったからムジカも交渉の余地があるって判断したのか」
横でジョンが手を鳴らしながら納得していた。
ムジカ「そうさね。帰還した冒険者の話とこの看板。ダンジョンの王の行動に矛盾はない。そう判断したんだよ。さて、訓練開始といこうか」
そしてしばらく探索をしながら訓練をし、街へ帰還した。
こういう時は、戦利品も豪勢で、資金源にも寄付金にもなる。
ただ、この期間に発生した全滅パーティーは申し訳ないがしばらく放置となってしまう。もし全滅していたのなら。
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翌日、再びギルドに集まっていた面々。今後の行動について予定が決まったようだ。
ムジカ「今日準備して、明日、王に会おう。体をしっかり休めときな。酒はほどほどにね」
何人かが頷いていた。特に議題もないため、そのまま解散。各自準備に街へ向かった。
さらに翌日。前回と同様にダンジョン入口に集まったところで、転移魔法を詠唱し、ダンジョン最下層へ向けて転移した。
ムジカ「よし王の間前室に到着だ。敵はいないようだね。各自スリッパの用意はいいかい?」
全員の顔を見回し、全員の反応を見て話を続けた。
ムジカ「中に入るとき、私が1番に入る。そのあと合図したらついてきな。
無事に入れたら、交渉も私がする。皆は警戒していておくれ。
相手の戦力は玉座両脇に護衛各1、玉座を挟んで部屋の両サイドに獣人の群れがそれぞれいるらしい」
相当な数だとわかる。できれば1パーティーで相手したくない戦力である。
部屋の両脇の群れをそれぞれ1パーティー、王とやるのが1パーティー、合計3パーティーは欲しい感じだ。
ダニー「両サイドの動きにおかしなところがあったら、すぐにスリッパを叩き割って逃げるぞ!
各自油断するな」
副隊長のダニーが最後に重要な警告を発した。
ムジカは皆が緊張しているのを感じた。だがここでマゴマゴしていては獣人に出くわす確率が増えるだけだ。意を決して扉を開けることにした。
ムジカ「皆、いいね。行くよ!!」
ムジカはドアをそっと少しだけ開けて、中を伺った。




