4話 ある日の依頼
ある日のこと、ムジカは仲間とギルトで受注した依頼について、仲間たちに説明していた。
ムジカ「今回の依頼は地下11階だよ。依頼主は未帰還になったパーティーの金庫番だ」
話すとムジカの色黒な顔の赤い口紅が動き、テーブルにドンと依頼書が置かれた。
金庫番。固定メンバーで活動するパーティーは、冒険者個人が所有する金銭とは別に、活動資金を持つ。その金銭やアイテム管理をするのが金庫番で、大抵ギルドか酒場、拠点としている宿屋で待機している。
恐らく指定した日時に帰還しないから探索依頼を出したのだろう。
ダニー「11階か。ということは、悪魔の館付近が怪しいな」
副隊長のダニーが候補地を挙げる。
ダニーはピンク髪をオールバックにし、ムジカと同じく瞼に紫のアイクリームを塗り、赤い口紅をつける男性だ。怪力のダニーとして名が知られている。
カール「まぁ11階と言ったら、あそこだろうな。場所の絞り込みに時間を取られなくて済みそうだが、どこにいるかわからねぇのが厄介だな」
カールはピンクのバンダナに金のネックレスをする、ヤクザみたいな風貌の黒髪の男だ。
バーナード「トラップ部屋とわかっていて突っ込むしかねぇのがなぁ」
バーナードは白いハチマキに短髪がトレードマークの最年少男性メンバーである。
通称悪魔の館。付近はダークゾーンやシークレットドアと一方通行ドアで構成され、館そのものは強制転移と毒ガストラップ、ダメージトラップ、一方通行ドア、通過すると壁になる魔法の壁で構成された小部屋が続く場所だ。
そして出口には皮肉を込めた看板が設置されている。
ジョン「前回と同じく、まずは悪魔の館の出口に飛んで、そこにいなければ11階入口から探索といったところ?」
ジョンは黒髪角刈りの女性だ。よく見れば目元と口に女性らしさが感じられるが、パッと見では男にしか見えない。
ムジカ「そうさね。ジョンの言う通り、その作戦で行くよ。昼食を済ませたら出発だ」
ホーリーナイトの面々は次々に席を立ち、ギルドから出ていった。
昼食とアイテム補充を済ませ、ダンジョン入口に集合していた。
ムジカ「保険屋の案件だが、大聖堂の勲章授与権は我々にある。善行して、うまい報酬にありつこうじゃないの」
バーナードが転移魔法を詠唱し始めた。
詠唱が終わると光がパーティーを包み込み、光が消えた時、そこにパーティーの姿は無かった。
地下11階のフロアの中でも通称悪魔の館と呼ばれる区域の出口。そこにホーリーナイトの面々は転移してきた。
ジョン「ここには居ないねぇ」
悪魔の館を出たところは広めの空間となっていて、帰還するだけの体力や魔法リソースが無いパーティーが、たまにここで途方に暮れていることがある。
バーナード「じゃあ、上の階層に上がる階段に転移するぜ」
そう言うとまた転移魔法を詠唱し始めた。
魔法が発動し、光が彼らを包み込む。そして光が消えると彼らの姿は消えていた。
目の前の光が薄まり、ダンジョンの地形が見えてきた。目の前には上の階に上がる階段がある。
カール「さて、と。まずはダークゾーン地帯の捜索か。一方通行区画とかあって、同じとこをクルクル回ることがあるから気をつけろよ」
カールがピンクのバンダナを揺らしながら指で円を何度も描いた。
ダークゾーン区画はそんに広くない。探索は順調に進み、悪魔の館の入口に到着した。
目の前のドアの前には、悪魔の館と書かれた看板が下がっている。
ムジカ「やはりここか⋯」
悪魔の館。それは冒険者の侵入を阻むために設置された区画。館が実際にダンジョンにあるわけではない。悪魔のようなトラップまみれの区画の名称なのだ。
自作のマップを見ながら、順番に部屋を調べて行く。毒ガストラップ対策に毒消しポーションも多めに用意してある。
ジョン「また毒ガス食らって、強制転移された先にいるかもね」
この区画、来た道を戻れない構造をしており、前に進むしかないのだ。だが、強制転移で既に歩いた区画に戻されたりするので、地図魔法を詠唱して場所確認していても、未踏破区域が毒ガス部屋の先だと、何度も毒ガス部屋を通過せざるを得なくなる。
更に強制転移トラップの度に地図魔法で位置確認をする必要があるため、MP切れを起こし、毒も治せなくなり、進退窮まってしまうのだ。
ムジカは地図を見て、候補を絞っている。
ムジカ「バーナード。ここと、ここに転移したい。やってくれるね?」
バーナードは地図を覗き込み、指差された場所を確認した。
バーナード「あいよ。じゃあ詠唱するぞ」
こんなところ、1部屋ずつ確認していてはミイラ取りがミイラになってしまう。
候補を絞り、安全地帯へ転移した。
立ち往生したパーティーはトラップで死んだのでなければ、トラップの先の安全地帯で待機しているからだ。
ジョン「居ないねぇ」
カール「うわぁ最悪だ。もうトラップ部屋で全滅確定だろコレ」
3つ目の毒ガストラップ部屋に冒険者の遺体が転がっていた。
冒険者証を見ると、依頼されたチームだと分かった。
ムジカ「⋯」
ジョン「仕方ないよ。でも見つかってよかった」
遺体を集めると、バーナードが転移魔法を詠唱した。そう、地上への帰還である。




