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▷現役主人公の物語Re▷  作者: 加藤 大生
『燈和=フラデリカ』編
30/47

昔話Shi

 昔々、まだこの世界における多くの常識が確立されるより以前のこと。根界オルドでは()()()()が大流行していたという。


 それは一度発症するとたちまち身体が衰弱し、一週間ほど倦怠感に見舞われるという、一見してみれば何とも無い病である。

 幼い子どもの発症事例は殆どなく、源術アルマを使用できる大人に多く見られる症状であったが、その症状の緩さと休養を取れば回復することで特段脅威とされてはいなかった。


 始まりは、ある年での異常気象からであった。

 これにより当時の人々は食糧難に陥った。

 食糧を確保するために否が応でも出払う必要があり、倦怠感程度で休養を取るわけにもいかなくなった。多くの人間が食糧調達のために働いた。


 異常はすぐに現れた。

 倦怠感を訴えながらも働いた人々が次々と別の病に感染していったのだ。

 次いで、健康だった人々が倦怠感を覚え始めた。



 結論から言えばこれは『源素』を利用した攻撃手段である『源術アルマ』の過剰な利用による副作用であった。


 この世界の人間は例外無く「木」「火」「土」「金」「水」の五つの源素から成り立っている。

この五つの源素が互いを補い、作用し合うことで骨となり、肉となり、血となり、身体となる。故にこのどれか一つの要素でも著しく欠如した場合、人間はたちまち人間であるための要素を構成できなくなるのだ。


 この時代はまだそうした事実が発覚する前であった。だが狩りに有用な源術アルマ自体は使用できたため、自身の身体が蝕まれていることを知らずに酷使を続けた。

源素不足の初期症状は実感、発覚するまでに暫しのタイムラグがあり、これが拍車をかけることとなる。


 こうして身体の衰弱、倦怠感を覚えた人間が増えたのである。

 飢饉により源素不足の人間がさらに源術アルマを使わざるを得ない状況が続き、免疫力が低下。こうした人々がまた別の病へ感染することとなったのだ。




 前置きが長くなったが、ここからがマーべラット成り立ちの話である。


 ただの源素不足がまだ『多くの病を引き起こす疫病』だと思われ、飢饉が続いていた頃。ある出会いがあった。

 一人は名の知れた結界術師であり、もう一人もまた有名な研究者であった。

 彼らはこの疫病の原因究明やこれに対抗しうる薬を生み出すべきだという意見で合致し、共に旅を始めるのだ。


 各地を練り歩き、多くの紆余曲折を経て現在マーベラットのある地へ足を踏み入れた。

 そこは現在と変わらず天変地異を繰り返し、とても手掛かりや薬の元となる植物や生き物が生息しているとは思えなかった。


 少しして彼らは引き返す選択をしたが、帰路にて見たこともない植物や昆虫を発見することとなる。

 これが気になり、帰路を外れて調査に乗り出した彼らは間もなく、小さな白い花を咲かせた植物と出会う。この植物を調査をするために引き抜くと、紫色の太い根を張っていることが分かった。

 その瞬間、あろうことか術師の方がこれにかじり付いたのである。


 実はこの術師はこの段階で既に深刻な源素不足状態に陥っていたのである。長く険しい旅路を研究者を守りながら歩んできており、当然と言えば当然であった。


 そんな術師が自我を忘れてしまったかのようにその根を貪ると、たちまち力をみなぎらせ、衰弱を忘れたというのだ。


 二人は、大いに歓喜した。

 遂に世界をこの疫病から救えるのだと。


 彼らはこの植物を『パルト』と名づけると、直ちにそれぞれの故郷で有志を募り量産、栽培の計画を練り始めた。

初めに発見した場所、即ち現在のマーべラット付近には幸い、既に多くのパルトが根付いており、とても貴重というほどではなかった。


 だが()()()()が問題であった。

 常に天変地異に見舞われる辺境の地。そこへ拠点を作るのは愚か、人が住むことなど叶わなかったからである。


 頭を抱えた一行だったが、やがて術師が言ったのだ。

「私が幾年と続く結界を作る。そこを拠点にしよう」と。


 皆は驚いたが、その場に彼ほど優れた術師はいなかったため「彼にならできるやも知れない」と期待を抱いた。


 一行はパルトが多く生息する地へ再び赴いた。

 術師は言った通り、そこで非常に大規模で高度な結界を展開した。


 半径1kmほどにも及ぶ結界の効果はとても素晴らしいものであった。この中では天変地異に見舞われることはなくなり、安心して拠点を作ることが出来るようになったのだ。


 しかし、その結界を作った次の日に術師は亡くなることとなる。

 原因は当然、人智を超えた結界の作成による急激な源素の消費である。


 彼らは悲しみに明け暮れた。

 彼らは術師の遺体を敬意を表して結界の中心で埋葬し、墓を建てた。


その後、誓ったのである。

術師が成そうとした疫病の撲滅を。


 そこから拠点ができ、研究に入るまでは早かった。


 この疫病とパルトの研究はのち根界オルドにおける源素と源術アルマの成り立ちを解明する大きな手がかりとなった。

 何故ならパルトの根には多分な源素が含まれていたからである。これを摂取することで疫病患者が例外無く回復していった。

 このことから、この疫病は人体の源素不足によって引き起こされる栄養失調に似た状態だと判明したのである。


 この事実を知った研究者は大いに悲しんだ。


 術師が亡くなった際にこれさえ分かっていれば、すぐそこにあったパルトを摂取させることで簡単に術師を救えたからである。

 源素の塊であるパルトの安定した採取を目的に膨大な源素を使用した結界を作成。これによる源素不足で術師が死んでしまった。これ以上の皮肉があろうか。


 研究者は術師が望んだ平和な世界を作るため、この場所に国を興した。

 パルト以外にも多種多様な資源が眠るこの地を開拓していくことで資金を蓄え、行き場のない者達を迎え入れた。


 こうして術師の意思を継いだ研究者が中心となり、資源国家マーべラットは誕生したのである。

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