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▷現役主人公の物語Re▷  作者: 加藤 大生
『燈和=フラデリカ』編
29/47

カッコウの餌

「はぁはぁ...上手く撒けたかな....?」


 氷戈とフィズの二人は息を荒げながらも茈結拠点にある講堂の前に辿り着く。

 クラウ、クラミィの双方から追われていた身である二人は入り口から慌ただしく入ると、そこから死角になる手前の壁側へ寄った。


「どうダろうネ?さっきミタいな叫び声は聞こえナいかラ大丈夫じゃ無いカな?」


「ふはははは!食堂のシェフは知らぬが、ラミィなら心配いらぬぞ?奴は方向音痴を極めているのでな!今頃その怒りを護衛らへぶつけている事だろう」


「うおっ!?びっくりした....何でまだ居るのさ」


 氷戈はフィズが居る事は当然知っていたが、まさかギルバートまで付いて来てるとは思ってもなかった。

 どれだけフットワークが軽い王様なんだ、と思いつつ先ほど知り合ったばかりなのにかなり良い関係を築けていることを少し嬉しく思うのであった。


「む?言ったであろう?余もこの会議に参加の予定だ、と。・・・其方と話すのであれば、其方が参加する会議に出向くのが良いと思ってな?」


「そ、そう....ん?」


 会話が一段落したところで、氷戈はあることに気づく。


「あれってウィスタリアの国王か?だがどうして...」

「どーしてヒョウカちゃんと王様が一緒にいるのぉ?」

「いや、そもそも何故ヒョウカがここに居る...特務会議だと聞いたのだが....」


 先に講堂に居た茈結の講師陣十数名の視線を総なめにしているではないか。


「あは...あはは...」


 表立って注目を浴びることに慣れていない氷戈は縮こまってしまう。

 これを見たギルバートは気を利かせたのか大きな声で


「やあ、茈結の者たちよ!諸君らの知っての通り、余はウィスタリア十六代国王のギルバート・ウル・ウィスタリアである!此度、対フラミュー=デリッツ防衛作戦に関する会議があると聞き、参った次第である。・・・次いでフレイラルダ=フラdっぐぼーー!?」


 国王の威厳が損なわれた瞬間であった。


 と、いうのも後ろから何者かにハリセンで引っ叩かれたのである。

 国王相手にこんなこと出来る者は当然、彼しかおらず_


「おいギルゥ!!?なぁに盛大なネタバレかましてくれようとしてんねんアホォ!?」


 と言いつつも、自身は盛大な登場をかましたのはリグレッドであった。

 我らが組織の団長が大国の王の頭を思いっきり引っ叩いたのだから空気は一瞬で凍りつき、氷戈も若干引き気味に言う。


「リ、リグレッド....」


「お、氷戈にフィズ。もうおったんか?早うそのバカ連れて空いとる席座りぃや、もう始めるで?」


 彼はそう言うと何事もなかったように壇上へ続く通路を歩いて行った。


「い、行こう?フィズ、ギルバート」


 そうして三人で一緒に席に着こうとしたが、ギルバートは顔をうつ伏せにしたまま動かない。


 -これはマズいのか?-


「き、き....」


「あ、あの....ギルバートさん?」


 しかし、氷戈の心配は杞憂に終わる。


「貴っ様オイッ!?リグレッドぉッ!!国王である余がしれっと登場してカッコよく演説を決め、拍手喝采で迎え入れられようという完璧なビジョンをよくも台無しにッ!!許さんぞ!!」


 -は?-

 何を言っているのだろうか。


 これを聞いたリグレッドは黙って踵を返し、ギルバートの眼前で口論を始める。


「じゃっかしいわっ!?そもそもなぁに勝手に人の組織入ってきてカッコつけよしてくれとんねん!?おまけに作戦内容まで赤裸々に話しよって!!ボクのカッコがつかんやろ!?」


「何だと?何故なにゆえ余が作戦内容を話すと格好がつかぬのだ?」


「は?そりゃあ会議の初めに『ではこれより、今回の作戦内容を発表する』って言うた方がポイやろ?」


「うむ、確かに」


「分かったんやったらええんや。早よ座らんかい」


 シーン....


 本当に何を見せられているのだろうか。


 これは氷戈の心の中の声であるが、恐らくこの場にいる全ての者が同じことを思ったであろう。


 今ので叩かれた理由に納得したのか知らないが、辺りを見回し空いている席へと歩いて行く。リグレッドも再び踵を返し、壇上へと登ると資料を広げ始めた。

 唖然とする氷戈とフィズはその場から動けずにいた。当然周りの人たちも静まり返ったままである。白けた、と言うよりは国王のギャップと二人のバカさ加減に言葉を失っていると言う表現が正しい。


 これを見たギルバートは不思議そうに問う。


「どうしたヒョウカよ?早く行くぞ」


「え?ああ、うん。因みに隣、座る感じ?」


「無論だ。・・・む、あの席はどうだ?」


 そうして指さしたのは壇上の真ん前、つまり最前列+ど真ん中の席であった。俗に言う『席替え大外れ枠』筆頭の席である。


 しかし続けて空いているのは二席のみ。

 そこでフィズはすかさずに言う。


「おッと、どうヤらワタシの席は無イヨうだネ!!ではこレにてッ!」


 と、逃げるように別の席の方へ行ってしまった。

 そこでフィズは案の定、質問攻めに遭っていた。


 それを見届けた氷戈はギルバートの左隣の席へ着席する。


「ふぅ」


 氷戈が安堵のため息を吐いたのも束の間、前からリグレッドの咳払いが聞こえる。


「おフンっ....ほなこれより、介戦学園『茈結』の特別任務対策会議を始めるでー。ちらほら来とらん奴もるようやが、まぁしゃーないやろ」


 その言葉でざわついていた雰囲気が一気に引き締まり、全員が前方へ向き直る。


 前に居るのはリグレッドと、そして『サッチ』という小さい男の子である。

 彼は茈結の情報収集や管理を担当しており、その役柄上リグレッドと一緒にいることが多い印象だ。


「ではこれより、今回の作戦内容を発表する!」


 パチパチパチ...!!


 講堂にギルバートの拍手のみが響き渡る。


 -ちゃんとそれ言うんだ、あの流れの後に-


 ギルバート以外の全員がそう思ったであろうが、リグレッドは構わずに続ける。


「題としては『対フラミュー=デリッツ防衛作戦』と『フレイラルダ=フラデリカ殺害計画』、この二つや」


「フラミュー=デリッツめ、遂に動いたか」

「殺害、ねぇ?随分と物騒じゃないか」

「フラデリカってこの前あったっていう征伐で隊長やってた奴じゃね?」


 と、講師陣はそれぞれの反応を見せる。


「静かにせぇ!おっきい声出すん苦手やねん!」


「嘘でしょう....」


「おいサッチぃッ!?なんか言うたか?」


「い、いえ何も!」


 壇上でプチ漫才を披露するので、呆れ声の注意が入る。


「リグレッド、さっさと次にいけ。この調子なら俺は寝るぞ」


 低い声でそう言ったのはイサギという強面の男性である。

 彼はこの組織で武術講師としての役割を担っており、その肩書きや見た目通りとても強い。

 氷戈もイサギに槍術を教わっているが、勝てた試しもなければ誰かに負けているところすら見たことないレベルである。


「ほれみぃ!自分のせいで怒られてもうたやろ!」


「もう!!僕に振らないでくださいよ!?マジで怒られちゃいますって!」


 サッチに言われたリグレッドは改めてイサギの方を見ると怒りマークが三つほど増えていたので即刻次へ進んだ。


「ま、まず『対フラミュー=デリッツ防衛作戦』についてやが、読んで字の如くや」


 一呼吸おき_


「数日前、ご丁寧にもフラミュー=デリッツの方からマーべラットへ宣戦布告の通達があった。これに伴いボクら茈結はマーべラットに加勢する形で参戦することとなった、っちゅうのが事のあらましや」


「まーべらっと?」


 氷戈が聞いたことあるような無いような語に首を傾げると、隣に居たギルバートが得意げに解説を始めるのだった。


「資源国家マーべラットとはな_」

「ちょいとまちぃ!!」


 言葉を遮られたギルバートはリグレッドに対し怪訝そうな顔で問う。


「なんだ?まさか、また格好つけたいとか言うのではないな?」


「ちゃうわ!!・・・どうせなら氷戈にだけやなくて、ここに居る全員に話したってくれへんか?マーベラットっちゅう国の成り立ちを」


「ん?」


 リグレッドの頼みに一瞬戸惑ったギルバートであったが、すぐにその真意を理解したかの如く応じた。


「なるほどそういうことか!!確かに、知っておく必要があるだろう」


 そう満足そうに立ち上がったギルバートは、目の前の壇上へと上がりまるで演説の如く話し始めた。


「では、改めて_」


 こうして資源国家を謳う小国、マーべラットの成り立ちが語られるのであった。

 ☆登場人物図鑑 No.21

 ・『クラミィ・ラル・ウィスタリア』 

 ウィスタリア所属/12歳/148cm/45kg/カーマ愛ノ僕(ラーヴァント)


 ギルバートの実の妹でありウィスタリア国の王女。地雷系な見た目と煽り気質な性格が相まり、模範的メスガキの称号を得る(氷戈内にて)。通称『ラミィ』。好きなことは兄をおちょくること、ぬいぐるみの新調、オシャレ、いたずら。苦手なものは勉強、公務、自分の思い通りにならない事や人間、野菜。


 カーマ愛ノ僕(ラーヴァント)』は『ウィンクや投げキッスなどの誘惑行為を見た者を一定時間、自身のしもべにしてしまう』というもの。誘惑とも取れる行動を見たその瞬間から強制的にクラミィの忠実な僕と化してしまうので、使い手によっては強力無比なものである。

 効果時間については誘惑のレベルに起因し、ウィンクで約三十分、投げキッスで一時間、ハグで半日程度と増加していく。


 過去、頬にキッスされたギルバートが三日近く奴隷のようにこき使われた影響で国政が混乱したという事件が発生している。

 この事から相手の唇への接吻は永遠に奴隷化させられてしまうのでは?と城内で噂されている。

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