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▷現役主人公の物語Re▷  作者: 加藤 大生
『燈和=フラデリカ』編
26/47

あの日『二度あることは_度ある』

「は?」


 ()()は、一瞬のことであった。


 今、目の前で人が死んだ。

 ほんのコンマ数秒で、こんなにもあっさりと。


 かろうじて何が起きたかは分かるが、それしか分からない。それ以外に思考が及ばない。及ぶ余地があろうか。


 唖然とする氷戈は、枯れかけの木のように力無く立ち尽くす。

 フラデリカに至っては『虚無』を体現したかのような状態で、言葉無く崩れ落ちていた。


 ただの数秒前まで、()()()()()()()()()()()が四人も居たとは思えない惨状の中、サイジョウだけは動き出していた。


「・・・」


 無言で氷塊が降ってきたであろう遥か上空を睨み、敵影を探る。しかしものの影すら確認できず、そこには無慈悲にも晴天が広がっていた。


「ふん、逃したか。・・・しかしこの規模の氷塊をオレに悟らせず生成、直撃させることの出来るヤツか....。その上、逃げ足も早いときた」


 何かを考えるそぶりを見せたものの、すぐに氷戈の横へ移動して言う。


「おい、今はとりあえず対象を連れて引くぞ。いいな?」


「・・・」


 そんなに親交があったわけじゃない。なんならさっき出会ったばかりだ。どちらかといえば敵だったし、一度は殺そうとしてきた。


 しかし。しかしである。


 こんなことがあっても良いのだろうか?ただ自国を想って、洗脳されていたとはいえ妹を想って、自身が何十年とかけて積み上げた人間としての、生命としての本質、尊厳を取り戻そうとした刹那の出来事であった。この世界(ここ)ではこれが普通なのだろうか?

 いや、そんなことはどうでもいい。『死』がダメだ。それは認めちゃダメだ。とにかくダメだ。


 感情が支配する。()()()が蘇る。幼き日の____


 ゴツッ!!

「いッ...!?え、ああ....」


 廃人と化していた氷戈を見かね、サイジョウがデコピンをくらわせたのである。

 ()()を思い出さずに済んだ氷戈は、何とか話の入る状態となった。


「考え事は後にするんだな....今はとにかく対象を連れて戻ると言っている。さっさと袋に入れ」


「燈和は...?」


「首根っこでも掴んで持っていくつもりだが」


「なら....せめて燈和に袋を譲ってやっ_」


 ここで氷戈の言葉は遮られる。


渦中火柱之刑フォーテンライム!!」


 聞いたことのない男の声で唱えられた詠唱と共に、氷戈とサイジョウは地面から噴き出た獄炎に包まれる。

 咄嗟にサイジョウが氷戈を抱えて脱出をしたが、これでフラデリカとの距離も離れてしまう。


 氷戈はサイジョウに降ろしてもらい、フラデリカの方を見ると前には二人の男が居た。

 一人はサイジョウと対峙するように立ちはだかり、もう一人はフラデリカの様子を確認するためか彼女の側で屈んでいる。


 -こいつらがレベッカを殺したのか?いや、それならわざわざ姿を明かす必要もなければ詠唱もしなかっただろう。となるとこいつらは....-


「オマエら、フラミュー=デリッツの人間か?」


 サイジョウもどうやら氷戈と同じ考えだったらしく、前の二人にそう問うた。

 すると自分たちに立ちはだかる白髪で寡黙そうな雰囲気の男が答えた。


「そうだ。・・・では、こちらからも一つ。No.3(エインス)、フレイラルダ=レベッカを殺したのはお前たちか?」


 先ほどの詠唱と声が違うため、最初に攻撃を仕掛けてきたのは後ろで燈和のケアをしている赤いツンツン頭の男だと予想できる。

 サイジョウは圧倒的強者感を醸すこの男の問いにも毅然とした態度で応じる。


「違う、といったら果たして信じるのか?」


「現場に居合わせた容疑者である以上、取り調べを終えるまで信じる訳にはいかない。・・・念の為問うが、おとなしく捕えられてはくれまいか?」


「ふむ、それはオマエがどのくらい強いかによるなぁ?先ほどのがこの国で三番目と言ったが、この現場に出向いて来た以上それよりは上なんだろう?さぁ、どうなんだ?」


 質問を質問で返すその応酬は、互いに一歩も引く気はないという気の表れのようにも取れる。


「私がどれくらい強いのか?・・・それを答えれば、取り調べに協力してくれるということで良いか?」


「いや?どのくらい強いかによる、と言ったはずだ。協力するかはオマエの回答次第だ」


「っ....良いだろう。私はNo.2(ツヴァイル)のアウスタッシュ=アルムガルド。この国では第二席を任されている」


「ほぉ?てっきり一番強いヤツが出てくるかと思ったのだがな、残念だ」


「・・・」


 サイジョウは相変わらずであるが、それを知らないアルムガルドは反応に困った様子である。もっとも、ポーカーフェイスが極まっているので想像に過ぎないが。

 対してサイジョウの言葉に食いついたのはフラデリカの横にいる男であった。

 彼は顔を真っ赤にして怒る。


「テンメぇッ!?レベッカさんを殺した上に先生を愚弄するのか!?いい加減にしやがれってんだ!!」


「ん?誰だオマエ、強いのか?」


「ウルセェッ!!テメェなんざに答える義理は無えよ!!」


 前にいるアルムガルドが左手を出して制止しているから良いものを、それがなければ今にも襲いかかって来そうな雰囲気である。


「さて、答えを聞かせてもらおうか。おとなしくついて来てもらえるだろうか」


「一応確認なのだが、オマエはその女よりも強いのか?」


「レベッカは私の生徒....だった。これで十分か」


「なるほどなるほど!!それでは答えは...NOだ!」


「・・・」


 -は?-


 相も変わらずアルムガルドはポーカーフェイスを貫き、腐ってもこちら側であるはずの氷戈の方が驚いてしまった。


 これだけ答えさせるだけ答えさせて、相手を愚弄し、真横で死んでいる故人を強さの指標にした挙句協力もしないとのこと。まるで普通の人間ができる所行では無いと思った。


 これに激情したフラデリカの横に居た男は雄叫びを上げて突っ込んでくると、猛スピードでサイジョウに剣を振り下ろした。


「こんのクソ野郎がぁッ!!!死にやがれェ‼︎」


「ん?」

 ピトっ....


 しかしこれを右の人差し指一つで軽々と止めてしまったサイジョウ。一体どれほど強いのか。


 この事実に剣を振るった男は言葉を失う。


「なッ!?あ、あぁ...」


 これを見たアルムガルドは男に声をかける。


「下がれプロイス。君の敵う相手ではない」


「っ...分かり、ました。・・・クソがっ!!」


 素直にバックステップでアルムガルドの元へ引くも、宙でサイジョウに毒を吐く。

 アルムガルドはプロイスが自分の横へ着地すると、指示をする。


「君はフラデリカに付いてやっててくれ。彼の相手は私がする」


「は、はい」


 プロイスはその言葉に少し動揺しつつも、すぐさまフラデリカへ駆け寄った。

 彼の反応を見るあたりアルムガルドは相当強いらしいが、サイジョウもサイジョウで化け物であるのは素人目からしても分かる。これはとんでもない戦いになりそうだ。


 両脇で固唾を吞む氷戈とプロイスをはたに、アルムガルドは言う。


「どういう事か理解しかねるが、取り調べに応じてもらえないのであれば少々手荒になるぞ」


「ふははははッ!!話の分かるやつで助かったぞ?しかし、『少々』では困る!ここは盛大に戦り合おうじゃあないかッ⁉︎」


「っ....分からん」


 アルムガルドは珍しく困惑の色を見せるも、氷戈には分かった気がした。


 -サイジョウのやつ、もしかしてアルムガルドと合法的に戦うためにこんな訳の分からない答弁をしていたのか?だとしたらバトルジャンキーにも程があるだろ....-


 サイジョウと少しだけ関わりがあるからこそ理解できたが、初見でこんな立ち回りをされたら誰であっても困惑するだろう。


 そんな事を知る由も無いアルムガルドは、ただ持っていた剣を構えた。長く真っ白で、三日月状に軽くしなった美しい剣である。


 対するサイジョウは右手を大きく広げ、くうで直線をなぞった。するとなぞった場所が光り輝き始め、やがて大きな剣の形を作り始める。

 数秒後、それは輝きを止めると共に実体化する。


 彼の等身程の、非常に大きな剣がどこからともなく生成されたがアルムガルドに驚く様子はない。この世界ではこれが普通なのだろうか。


 サイジョウも剣を構え、互いに臨戦体制といった様子である。

 が、サイジョウは満面の笑みを、アルムガルドは真顔で向かい合っているためその温度差は凄まじい。


 ここでサイジョウは待ちきれなくなったのか、踏み出しとともに大きく叫ぶ。


「さあ行くぞ、No.2!!せいぜい楽しませてくれよッ⁉︎」

「・・・」


 サイジョウが勢いよく突っ込み、戦いの火蓋が切られた。


「・・・⁉︎」


 と、同時に戦いの幕が降りたのだった。


「お、おい...サイ、ジョウ....?」


 次の瞬間、氷戈の目に映っていたのは腹のど真ん中を深く突き刺されたサイジョウの姿であった。

 アルムガルドが持つ長い剣の先からは真っ赤な雫が滴り落ち、サイジョウは俯いている。


 サイジョウがアルムガルドとの距離を半分ほど詰めたところで、()()()()()()()()()()。氷戈の目ではとても追う事はできず、結果だけを目にした形だ。


 また、か。

 また人が死ぬのか?

 俺の目の前で。性格は終わっているけど、仮にも命の恩人だぞ?何度も助けてくれただろう?


 いや、そんなことはどうでもいい。

『死』がダメだ。それは認めちゃダメだ。とにかくダメだ。


 感情が支配する。()()()が蘇る。幼き日の、悪夢が。

 ☆登場人物図鑑 No.18

 ・『イサギ・アーセナル』 

 茈結所属/35歳/184cm/83kg/カーマ無し


 茈結に勤める武術専門の講師。イカついガタイ、強面、スキンヘッドの三拍子が揃った見た目ヤクザ。ちゃんと口も悪い。好きなことは睡眠と武術講師の仕事、自然。苦手なものは睡眠とうるさいヤツ、熱い食べ物。


 カーマは無いが茈結の講師を務められる程には強い。何より『ほぼ全種類の武具の取り扱い』に精通しており、剣術や槍術は勿論のこと二刀や短剣、斧、鎌、盾、ナタ、弓、ブーメラン、メリケンサック等々、何でもござれ。

 生まれつき金の源素を多く生成してしまう異常体質であり、これのせいで睡眠障害を患っている。しかしその有り余る金源素を使って武具を自由に作れるので、一概に悪いことばかりでは無い。

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