表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▷現役主人公の物語Re▷  作者: 加藤 大生
『燈和=フラデリカ』編
22/47

あの日『最弱⁉︎師弟対決‼︎』

「トウカは....其方の、婚約者であるか?」


「はぁ?」


 予想だにしない質問に氷戈は思わず声が裏返ってしまう。

 しかしながら彼の透き通ったまなこに映るのは真剣の二文字。要するにコイツ、本気マジである。


 暫しの沈黙が続き、痺れを切らしたのか国王は追い討ちをかけた。


「さあ、どうなのだ?」


「え、ああ....えーと、俺と燈和が婚約してるかどうかってことですかね?」


「左様」


「いやいや、してないですよ。そもそも俺たちにはまだ無縁の話だったし」


「無縁だと?婚約がか?」


「え、ええ。俺たちの居た世界では結婚って二十歳くらいじゃないと出来なかったはずなんですよ、確か。なんなら二十歳でも早いほうですし、ここにきた時は俺たち十五歳だったし....」


 流石は自分が興味のあること以外に知見が無いで定評な男である。

 実際日本では十八歳から婚約が認められているが、そんなことを氷戈が知っているよしも無く。国王もその曖昧な言い回しが気になったらしい。


「ええい、婚約してないのは分かった!!では二十になれば結婚したいという気も無かったということで良いな⁉︎」


「うん」


「ふむ....なら良い」


「え、燈和のこと好きなの?」


「んぉおっとーッ!!!!!!?きッ、ききッ貴様ッ!!中々の無神経さよのォ!?余でなければ死んでいたぞ」


 無論死にはしないが、氷戈が無神経なのも無論の極みである。

 氷戈は悪気も無く疑問符を浮かべる。


「?」


「首を傾げるな阿呆め!これでは余が一人で盛り上がっているみたいではないか⁉︎」


「・・・」

 -みたい、じゃなくてそうなんじゃあ...?-


 流石に相手が相手なので口にはしないが、何ともまあ騒がしい王様だ。


 そんな王様は深呼吸をして調子を整えると、話を戻す。


「・・・そうだ、余はフレイラルダ=フラデリカに恋をした。戦場で激しく燃え盛る炎の中、凛と立たずまうその姿、その表情に」


「いやいや王様、そりゃ人違いですって」


「なに?」


「燈和を表すときに『凛と』なんて副詞は使わないんだぜ....ん?形容詞か?」


「何を訳の分からんことをブツブツと....いやしかし、次の論点は正しくそこである」


「どゆこと?」


「其方の知るトウカなる者と、現在の彼女『フレイラルダ=フラデリカ』とでは全くの別物であるということ。そして何より_」


 国王は氷戈の目を見据えて言った。


「_今やウィスタリア最大の友好国となったリュミストリネ。そこを統べるはずの姫とフラデリカの関係性を探らねばならん」


「っ...!?そう....全部、聞いたんですね?リグレッドから」


 その言葉で氷戈はこの世界に来て間も無くの事であった『あの日』を思い出したのだった。

 野崎 燈和に、いや、フレイラルダ=フラデリカと初めて出会ったあの日のことを。

 _____________________________

 今から十ヶ月ほど前のこと_


「はてと、お次は...」

「はぁはぁ...」


 晴れ渡る空。生い茂る木々。その間を拭う気持ちの良い風。

 そんな典型的な森の中には二つの影があった。


 対峙するのは根界オルドに来てから勝手に髪を青く染められてしまい、なぜか息を切らしている本作主人公の無連 氷戈と長髪でヒョロっちい長身の男、リグレッド・ホーウィングである。

 森の中とはいってもほんの十数メートル隣には茈結しけつの建物があり、言わばここは裏庭のようなものである。


 さて、なぜそのような場所に二人が居るかというと_


「ねぇ、なんでこんなところで特訓するのさ?表の方にだだっ広い平地があるでしょ」


 氷戈は今、リグレッドと二人で『戦闘』の基礎修行をしているのであった。ところが氷戈はどうにも森の中での修行が気に入らないらしく、ムスッとした表情で言った。


「アホ言え。今あっちはめっさ強い連中がバチバチに修行しとるんやで?流れ弾で死んでまうわ」


「いや、俺は大丈夫なんじゃあ....」


「ボクがアカンねん。それになぁ...」


 リグレッドはドガンッ!!だのバゴンッ!!だのと戦闘音のする表の方を見ながら続けた。


「自分はまだ氷の出力コントロールだってなってへんやろ?そないな状態で表を氷付けになんてされたらスケートも出来ひんで?」


「そ、それはそうだけど....」


 氷戈は気まずそうに向こうを見る。

 十数メートルほど離れた一帯に立ち並ぶ木々は全て凍りついており、氷戈の修行の跡が窺えた。


 氷戈が根界オルドに来て二週間。未だ戦う術をほとんど持たない今、一人で外を出歩くことすらままならないのである。行方不明の幼馴染達を探すことなどもっての外だった。

 故に茈結のリーダーであり、命の恩人でもあるリグレッドに戦闘を基本のキから教わっている訳なのだが、やはり幼馴染達の安否が気になって修行に身が入っていないのが現状だった。


 そんな状況を見かねたリグレッドはある提案をするため、氷戈に話しかけた。


「なぁ氷戈、ちょっとエエか?」


「な、なに...?」


「この前、自分が見せてくれはったお友達の絵があったやろ?」


「絵...?ああ、写真のことね」


 二週間前、リュミストリネで気を失った氷戈は茈結の建物内にある医療室のベッドで目を覚ますこととなった。

 目覚めた直後は様々な事が頭を過って食事も喉を通らない状態だったのだが、リグレッドによる懸命な介抱のお陰で今は多くのことを受け入れられた。

 正直、リグレッドには感謝してもしきれないと思っている。


 この介抱の末、リグレッドのことを真に信用した氷戈は自身の置かれている境遇を彼に話したのだ。



 変な扉を潜ったら次にはオルドに居たこと。

 命よりも大事な存在である幼馴染がこの世界のどこかに居るかもしれないということ。

 リベルテとアウスリーゼがその幼馴染とあまりに似過ぎていること。



 そして氷戈はこの事実の裏付けのため、ポケットの中で生きていたスマホをフルに活用したのである。

 スマホという存在そのものがオルドには無い技術と文化の違いを証明し、中に保存されていた写真により幼馴染の顔を伝える事ができた。


 長くはなったが、リグレッドの言う「お友達の絵」と言うのはこの時に見せた幼馴染あいつらとの写真を指しているのだろう。


「あー、それやそれ!!ほんでその写真の中におったリベルテちゃん似の彼女....なんて言ったっけ?」


「ッ!?燈和!?燈和がなんだってッ!!?」


「ドードー、ほれ落ち着きぃや....それで、その燈和ちゃんとよく似た子がおるって話を聞いたんよ。まぁ実際には『リベルテ姫とよく似た子がおる』って話なんやけどな?」


「な、なるほど。確かにこっちの世界の人に聞くなら顔の広いリベルテを例に挙げた方が効果的なのか...」


「そゆこと。この前のラヴァスティによるリュミストリネへの急襲、通称『リュミストリネ事変』の報告をつい昨日、お隣にあるウィスタリアって国にしてきたんや。そのついでに『リベルテちゃんに似た子』と『アウスリーゼに似た青年』を知っとるか聞いたとこ、向こうのお偉いさんに心当たりがあったみたいでな?」


「本当にッ!!?本当に燈和がッ....!!」


 氷戈はまるで別人のように取り乱し、勢い良くリグレッドに聞き寄った。


「だから落ち着きぃや、それにまだ本人と決まった訳ちゃうで」


「だったら俺が直接確認しに行く!!」


「アカン」


「ッ!!なんでさッ!?」


「今は、な?」


「は?」


 全く話が読めない氷戈はキョトンとしてしまう。

 対するリグレッドはニヤっと笑って言った。


「今からボクと真剣勝負して、勝てたらええで」

「えッ、えぇ!!?」


 氷戈はかなりオーバーに驚いたが、それもそのはず。

 この世界に来て二週間とはいうものの、基礎特訓をし始めたのはつい四日前。さらに一対一の真剣勝負などやるのは初めてだったからだ。


「安心せえ。初めてうた時に言うたと思うが、『茈結』じゃあボクはワースト張れるくらいに弱いんややかましいわボケ」


「え、それって本当だったの?」


 確かにリグレッドは自分を助けてくれた時にそのようなことを言って自己紹介をしていたが、それはてっきり「本当は強い奴がカッコつけるために謙遜している、アニメや漫画でよく見るアレ」とばかり思っていた。


 驚くほど自然にノリツッコミをスルーされたリグレッドは若干傷つきながらも、氷戈に問うた。


「え?ボクが嘘つくように見えるん?」


「嘘というか、師匠みたいなキャラは強いって相場が決まって....」


「なんやキャラって?あと師匠ちゃうわ、弱いんやし。・・・まあええわ、やるん?やらへん?どっちや」


 氷戈は少し考えるも、答えは一つしかなかった。


「もちろん、やるよ。勝てば燈和に会えるんだ。万に一つでもチャンスがある方に賭けるさ」


「お?ええ意気や。・・・実際には二つに一つってところやが」


「え?」


「いや、なんでもあらへん。ただの独り言や。・・・ほな、始めるで?」


 何事もなかったようにリグレッドは距離を取り、臨戦体制に入った。その姿、表情、構えはまるで歴戦の猛者そのものであった。


 -本当に、弱いのか...?-

 ・・・ゴクリ


 思わず固唾を呑む氷戈。しかし、もう後には引けなかった。

 氷戈も臨戦体制を取り、暫しの静寂が続く。


 ____________。


「ッ!!」「っ!!」


 互いがタイミングを察し合わせたかのように、両者は同時に動き出す。

 リグレッドはその場で何かの構えをとり、氷戈は少し大袈裟に後方へ移動してひとまず距離をとる。


「いくでッ!?智ノ段(ちのだん)炎法えんぽう点炎てんえん』!!」


 リグレッドは掌を空に向け、その上に拳大ほどの炎の玉を出現させてみせた。

 それをそのまま氷戈の方へ投球する。


 氷戈へ一直線の火の玉は、それほど早くはないもののその距離はすでに五メートルを切った。

 しかし氷戈は避けるどころか、防御すらしようとしない。代わりに左の掌をその火球に見せるように突き出す。


 シュワっ....


 すぐに火球が氷戈の手に命中し火の粉が弾けるも、まるで氷戈を避けるように四散していった。


「・・・ふぅ」


「へっ!便利なもんやで、まったく。ほなこれならどやァ!」


 火球を防ぎ安心したのも束の間、リグレッドは次の手に出た。

 大きく両手を広げて、唱える


義ノ段(ぎのだん)土法どほう岩纏いわまとい』!!」


 するとどこからともなく生成された人間の頭程の岩がリグレッドの周りを回り始めた。その数、十といったところか。

 リグレッドは自分の周りを衛星のように舞う岩を纏いながらこちらへ全力疾走を始めた。


「さぁ、今度はどう立ち回るんやぁ?氷戈!」


「・・・」


「なッ!?」


 一方氷戈も、同じタイミングでリグレッドの方へ走り出したのだ。

 迎え打つにしても氷戈がその場を動くことはないと思ったのか、リグレッドは驚いた表情を見せる。

 しかし、すぐに表情を緩めて言う。


「確かにボクは弱いけど....まだ自分に体術で負けるつもりはあらへんでぇッ!?」


「その考えの時点で_」


「??....ッ!?」


 初めは氷戈の発したセリフに疑問を抱いたリグレッドだったが、一瞬で別の感情へと移り変わる。


『恐怖』


 それが、リグレッドがたった唯一抱いた感情であった。

 氷戈の顔が、表情が、目が、まるで全てを凍てつかせるかのような『冷気』を帯びていたからである。


「ぬあッ!?」


 この一瞬の揺らぎのせいか。

 リグレッドは自分の体勢が大きく崩れていることに遅れて気づく。それと同時に、氷に厚く覆われた氷戈の拳が自身の眼前に迫っており....


 そう、この時点で_


「_ゲームオーバー、ってね?」

 <共立・介戦学園『茈結』とは>

 リグレッドを中心とした有志の大人達がウィスタリア国の融資を元に運営する、私立と国立の両の側面を持った学園。

 源術アルマ開発の第一人者であるリグレッドが主体となっているだけあり、アルマの最先端技術を学べたり実戦経験が多く積めることを強みとしている。

 学生は普段、専属の講師から修行や知恵を乞い、共にオルドのあちこちから来る依頼をこなしていくことで実力を伸ばすという超実戦形式の教育を受けている。


 学園といえども学生の数がそこまで多い訳では無く、あくまで『幅広い年齢層を受け入れる』という意で学園を名乗っている。


 ウィスタリア城から徒歩一時間ほど行った丘の上に拠点を構え、周りは草木に覆われている。

 拠点には講堂や食堂、医療室、屋外道場、学生寮など様々な施設が充実しており、講師含めここに住んでいる人間が多い。


 因みに講師陣の殆どはウィスタリア国からの依頼のため出払っており、生徒への指導は茈結本部に居る人間が代わりわり行うことになっている。

 先の『ウィスタリア事変』への茈結の参戦も表向きにはウィスタリアが依頼をしたものであり、任務に当たったのは講師陣。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ