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▷現役主人公の物語Re▷  作者: 加藤 大生
チュートリアル編
10/47

一を聞いて『欲』を知る

 半壊する市街地を颯爽と走り抜ける二つの影。

 否、よく見れば一つの影に抱えられているもう二つの影があるので四つと表すべきか。でも走ってるのは二人だし....


 一見、抱えられているだけなので楽そうであるこの二人だったが、一行の中で一番深刻そうな顔をしているのもやはりこの二人であった。


「英雄様より自分に伝言や_」


「伝言...?俺にですか?」


「_『君がこの世界を救うことが、同時に()()()()を救う事に繋がる。・・・よろしく頼むよ、もう一人の主人公()』、らしいで?」


「・・・はい???」

 -伝言ってどういうことだ?俺に対してってことは俺を知っている人からって事だよな?・・・それに今『俺の故郷』って言ったのか...?もう一人の俺?・・・ダメだ、独りで考えてたって埒が開かない-


 リグレッドのたった一言で疑問が湯水のように湧き出た氷戈は、その真意を尋ねようとした。


「あの_」

「っと!!多分やけど、ボクじゃあ自分の質問には答えられへんで?ほんまに()()()()()やから」


「えぇ?」


 混乱しきってしまった氷戈を見たリグレッドは少し落ち着いた声色で言ってみせた。


「ボクはただ、親友だったセルフィンから言われただけなんや。『この先、俺と見た目がそっくりな奴が現れたならそいつにそう伝えてくれ』ってな?」


「・・・えっと、それじゃあ俺とそのセルフィンって人の見た目がそっくりだって事ですか?」


「せや....見分けも付かんほどに、な?・・・性格は偉い違いやが」


「そう、ですか....」

 -俺と見た目が似てるってだけならなんとも無かったけど、この世界の人間の口から『俺の故郷』って言葉が出てくるのはどう考えてもおかしい....。どうにかして言葉の真意を確かめたいけど、当のセルフィンって人はもう死んじゃってるらしいし....-


 考え込む氷戈に、リグレッドは話しかける。


「その様子やと、()()()ってことは無いようやな?」


「?」


「ボクにとっちゃこの伝言の内容はさっぱりや。せやけど自分には考えさせられる何かがあった、せやろ?」


「・・・はい」


「ちゅうことはつまり、少なくとも氷戈に宛てた言葉ってことは違いないはずや。同時に、セルフィンが()()()()()()()()()()()()事の裏付けでもあるんやが」


「セルフィン・ノーレンツ.....」


 謎が謎を呼ぶ男の名を思わず呟いた氷戈。

 彼についてもっと詳しく知りたかったが、今それについて尋ねる事が場違いだと言うのは分かっていた。


 むず痒い感情を押し殺すため、一人耽る氷戈であったがそれは直ぐに中断されることとなる。


「ボクがこの伝言の中で唯一分かる事といえば、『この世界を救うこと』の部分だけやな」


「世界を...救う....」


 氷戈はそのスケールの大きさに思わず鸚鵡返しをしてしまう。

 伝言の後半部分のインパクトが強すぎて忘れかけていたが、その語も十分気になる内容ではあった。


 リグレッドは氷戈が食いついたのを見るや否や、得意げに続けてみせた。


「ま、今ボクらがやっとることがまさにそうなんやが.....って、あれ?ボクって自分にお姫さん助けに行く理由、話しとったっけ?」


「いや、話とらんですね」


「せやんな?いやアッカンわぁ、ボクとしたことがうっかりや」


 リグレッドは可愛くテヘペロとしてみせるも、不健康そうな中年男性がムキムキな中年男性に抱えながらやるそれはとても見れたもので無いことは想像に易い。


「・・・」


 場の空気を読んだのか、咳払いを一つかませて何事も無かったように話し始めるのだった。


「おフン....ほなまず、『カーマ』の説明からせんとアカン」


「カーマ....ですか?」


「せや、『欲』と書いて『カーマ』と読む。・・・ほんでこのカーマっちゅうんは、ざっくりそいつが持つ特殊能力と理解してもろてエエ」


「・・・」

 -なるほど、よくある異能力アニメの世界線か....。凡そ予想通りというかなんというか。・・・そしたらフィズさんがすぐに回復したのもシルフィさんのカーマが単に回復系の能力だったからだと説明出来る-


 異世界適応レベルMAXの氷戈は例の如く、思考を二歩三歩先へ一人歩きさせる。

 しかし今回はこれが仇となったようで、リグレッドはそんな氷戈の心を見透かしたかのように言う。


「先言うとくと、シルフィのカーマに回復能力はあらへんで?」


「んえッ...!?」


 氷戈はまたしても変な声を出す。

 自分の考察が外れると思っていなかったのもあるが、心を読まれた驚きの方が大きかった。


「シルフィのは『対象のカーマをシールに封じ込め、コピー出来る』っちゅうもんや」


「し、しーる?」


「せや?まぁカーマの解説には向いとらん非常にややこい能力なんやが、『シルフィ=シールの人』って韻踏める部分はポイント高いなぁ?」

「死ねな?『点炎』」


 リグレッドの下らないジョークを走りながら聞いていたシルフィはノータイムで何かを唱える。


 ボワっ!!


 するとシルフィの片手に野球ボール程の火の玉が生成され、これまたノータイムでリグレッドの顔面目掛け投球したのだった。


「ちょッ!?フィズ避kギャァアアア!!!!」


 氷戈の真横で断末魔と香ばしい音が鳴り響く。

 次に目にしたリグレッドの顔は程よくこんがりと焼けており、それを見たフィズは笑いながら言った。


「はっはッハ。『火を避けて水に陥る』、だったカな?」


「ゲホッゲホッ.....。なしてこないな時だけしっかり合っとんねん...」


 咳き込みながらも呆れ口調で話しているあたり、思ったより無事なのだろう。


「・・・」

 -ビックリしたぁ....これが本場のギャグパートか、早く慣れないとな....。それにしても__-


 このように氷戈も下らない思考を巡らせていたのだが、同時についさっきも味わった()()()を感じており__


 -こんなに間近で人が焼けたのに熱も迫力もやっぱり感じなかった....ヴィルハーツの時と同じだ。・・・もしかして俺のカーマって『炎耐性』とかいう死にスキルだったりする?リリースされて間もないゲームでちょっとムズい炎ダンジョンが実装された時だけ倉庫番抜け出せるけどインフレが進むに連れキャラパワーゴリ押しが正義になって後で「昔はあのキャラの『炎耐性』でなんとか攻略してたなーww」って振り返られるキャラに付きがちなスキルじゃん。やめてね?-


「あ、ああ....そんな....」


 勝手に絶望する氷戈に若干引きながらも、リグレッドは続きを話す。


「・・・つ、つまるところや。シルフィは他人のカーマを複製できるっちゅうこと。さっきフィズを治したんも、最初にジェイラの『穿々電雷ガウ・デラ』を吸収したんも、サイジョウを瓶の中に封じ込めてたんも全部他人からパクったもんやったってな訳や」


 氷戈はこちらを向かないまでも少々ピキった雰囲気を醸し出したシルフィが恐ろしかったが、気づかないフリをしてリグレッドの話に耳を傾けた。


「色んなカーマを実際に見れるって点では、案外解説向けではあるんかもしれへんな。・・・ほんで当然、この世界ではカーマを有しているか否かで戦闘能力が大きく異なってくる」


「・・・」


「せやけどもう一つ、戦闘において大事な技術がある。さっきヴィルが自分に放った炎の弾やったり、シルフィがボクの顔面焦がした『点炎』がそれに当たる。ボクらはこれを『源術アルマ』と呼んどる」


「アルマ....」


「アルマとは人体を構成する『木』『火』『土』『金』『水』計五つの源素げんそを体外に放出する形で放つことのできる攻撃のすべ、故に『源素の術』と書く。得手不得手はあれど、生きとる人間は皆んな使えるようになるんがカーマとの違いや」


「あ、あの...属性があるのは分かるんですけど『木』とか『金』ってどういう....?」


「ん〜、せやなぁ....『木』はややこくって、そのまま攻撃に使われることはあんまし無いんや。その代わり応用次第で『風』や『雷』に化けるんで上級者向けと言える。使用者もあんまし居らんけど、ちょうどジェイラが『雷』を使っとったな?」


「『木』が『雷』に.....?」


 ソシャゲ中毒の氷戈にとってはこれが異様に思えてならなかったが、中には『ドラゴン』やら『虫』やらを属性と見做すゲームがあることを思い出し、一旦飲み込むことにした。


「『金』はそのまま『金属』を意味するんやが、もっと具体的に表すなら『鉄鋼』やな。これは主に自分専用の武器を生成するんに使われる」


「な、なるほど.....」


 正直100%の納得は出来ていないが、そこを追求するのは今では無い。

 とりあえずで相槌を打った氷戈に、リグレッドは話題を本筋へ向けた。


「これからの説明に必要な情報の解説は終いや。本題へ移るで?」


「本題....、『この世界を救う』ってやつですか?」


「当然そこにも繋がってくるんやが、先に『なしてヴィルハーツ率いるラヴァスティの連中がリュミストリネ(ここ)のお姫さんを狙ってるか』について話さんとアカン。・・・これも大雑把にしか言わんからしっかり聞いときぃ?」


「・・・はい」


「ここで先ず大事になってくるんは、さっき話したカーマの発現方法についてや。お察しの通り、カーマを宿しとる人間は少ない。ほなそいつらは、どないにしてカーマを宿すのか」


「えーっと....遺伝とか修行、とか...?」


「半分正解や。・・・方法は三つあって一つは自分の言うた遺伝、すなわち『継承タイプ』と称されるもの。二つは『変異タイプ』言うて、両親の持っとるカーマと全く別のカーマが発現するもんや。この二つは発現方法としては最もオーソドックスで、割合もそれぞれ半々くらいになっとる。・・・そして今回、問題になっとるんが三つ目の発現方法である『純番ミナギ』や」


「ミナギ....?」


 氷戈は出てきた専門用語を鸚鵡返しして解説を求めた。


「純なるつがい、と書いて『純番ミナギ』。ある条件下で産まれおった子どもにのみ適応されるカーマの発現方法で、これが恐ろしいことこの上無い」


「・・・」

 ゴクリ....


 氷戈は『番い』やら『条件下で生まれる』といった生々しい言葉に、思わず固唾を飲む。


「・・・『純番ミナギ』によって産まれた子ども、通称『秤子ハカリゴ』は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んや」


「ッ!?それってヤバいんじゃ....」


「ヤバいなんてもんや無いで?発現するカーマの内容次第じゃあ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だって出来てまう。なんとしても止めなアカン」


「それは、確かにそうですね.....」


 氷戈は事の大きさがとんでもない規模であることを受け止めつつ、幾つかの疑問を呈した。


「で、でも選択の範囲も『ある程度』なんですよね?それに『秤子ハカリゴ』が産まれる条件って....?」


「ボクが『ある程度』って言うたんは直近での前例があらへんから。要するにどうなるんか誰にも読めんのや。・・・『純番ミナギ』は当然、その危険性や倫理観の問題から文字通り禁忌と見做されとった。こないなこと企もうもんなら、現存する全ての国からめったうちにされること違いなし。手を出そうとする国なんて暫く居らんかったんや」


「・・・」


「次に『秤子ハカリゴ』が産まれよる条件。これは単純で、要は虹天七国こうてんしちこくにそれぞれ継がれとる七種類の王族の血、中でも純血統に当たる者同士との間に生まれよった子どもはもれなく『秤子ハカリゴ』に位置付けられる」


 少々複雑な解説であったが、それでも氷戈はリグレッド期待通りの答えを自ら導き出す。


「つまりラヴァスティは、純血統に当たるリュミストリネのお姫様を攫って『純番ミナギ』を執り行おうとしている....?」


「お見事、流石やな?・・・せやからラヴァスティはクトラの『地繋ギ(スペクト)』、つまるは瞬間移動のカーマを使つこうて幹部相当の実力者をリュミストリネの各地へ転送、急襲を仕掛けよった。自分を最初に襲ったジェイラもその内の一人や。・・・そうすることで姫さんを守っとるリュミストリネの精鋭らをこれらの対応に充てさせられる。こないにして手薄になった城をヴィルハーツが単騎で攻め落とす、ってのが向こうの作戦やったんや」


「・・・なるほど」


 ここまでの解説を経て漸く、氷戈の中で全てが繋がったのだった。


「それなら確かに、ヴィルハーツという決め手を失った時点で向こうの計画は破綻してる....。それが分かっていたからこそ、お姫様の安全の確保を敵であるはずのリグレッドさん達に託したのか....」


「ん?」


「え?」


 氷戈の結論にリグレッドは疑問符を返した。対する氷戈も、何が違っていたのか分からず反射的に声を上げてしまった。


 すると、丁度このタイミングでフィズとシルフィの足が止まるのだった。


「さて、お喋りの時間は終わり。さっさと降りなよ、へなちょこボーイズ」


 シルフィがこちらに向かってそう言うと、フィズは屈んで氷戈とリグレッドを地面へ降ろすのだった。

 ずっとリグレッドと向かい合わせで会話していたので、暫く前を見ていなかった氷戈は自分たちが目的地へ着いたということを今悟るのだった。


 目の前には過去に行ったネズミーランド(夢の国)で目にしたような、中世ヨーロッパ風の大きくて洒落た城が佇んでいた。


 さっきぶりに自分の足で立ち、前へと視線を向けた氷戈は感嘆するのだった。


「うぁ....ちゃんと異世界だぁ....」



 じき()()を見ることになるとも知らずに_

 ☆専門用語集


 ・カーマ:その個人に宿る特殊能力であり、ある条件を満たした者にのみ発現する。原則最上位の優先度を誇り、防御や対応、相殺するには同じくカーマの力を行使しなければならない。


 ・源術アルマ:人体を構成する基本的要素である『源素』を応用し、攻撃や防御をするために作られた術の総称。分かりやすく言えば魔法であるが、力の源は魔力ではなく身体を構成するエネルギーそのものであるため『一時的に命を削る技』とも言える。尚、根界オルドに魔法や魔力といった言葉や概念は存在しない。


 ・源素げんそ:この世界の人間は『木(風)』『火』『土』『金(鉄鋼)』『水』の計五つの要素によって成り立っており、これをまとめて『源素』と呼ぶ。いずれか一つの要素でも完全に失ってしまうと人体を保てなくなってしまい、人間としての機能を失う。故にアルマの過度な使用は厳禁である。


 ・我成ガイナ:五つある源素の内、『金(鉄鋼)』の要素を使用して形成される武器のこと。出現させる人によって姿形が異なり、武器種も様々。誰でも簡単に呼び出せるものではなく、ある程度の鍛錬や条件を要する。

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