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99 傷だらけのヒロ④



 二人が寝ている間、隆二は裏の畑を見に行く。とても作物を植えていた畑には見えなかった。

 家に近い場所を1畳分だけ、インベントリに土を収納する方法で耕した。土を戻す時に、森で集めた腐葉土も混ぜておく。

 畝を2本作り、1畝に蕪の種を3列6粒の18粒並べた。

 もう一つの畝には、トウモロコシの種を8粒植えた。


 2か月ほどで蕪は食べられるから、少しは腹の足しになるだろう。

 そんなことを考えていた。


 家に戻ると、隆二は水瓶をインベントリへ入れて共同井戸へ行き、インベントリに入れた水瓶に水を汲んだ。もう日が暮れるので人がいないのはよかった。

 

 家に戻り、水瓶を戻した後、寝室を覗くとヒロが目覚めたところだった。

 


 「目が覚めたか、体の調子はどうだ?」

 「寝ても寝たりないけど…痛みは楽になってきたかな。」

 「腕が折れているようだから、無理は禁物だ。内臓も損傷していたかもしれない。元気になったと安心せずに大事にしていて。」

 「リュウジさんのおかげだよ。苦しくてもうダメかもって思った時に、リュウジさんの声が聞こえた。」

 「そうか、少しは役に立てているようでよかったよ。」

 「仕事に行けなくてごめんなさい。」

 「それは、仕方ない。ケガをして倒れていたのは、ヒロさんのせいじゃないだろ?」

 「それは、そうだけど…ロロナまで助けてくれて…リュウジさんに買ってもらった薬を飲ませて、少しはよくなったかもって思ったけど…リュウジさんが来てくれてからすごくよくなった。リュウジさんの薬のおかげだよね?」

 「俺は、薬は与えていないよ。食事をさせただけだ。」

 「そうなの?それでもすごいことだよ。食べさせることすら、僕にはできなくて…」

 「それは、仕方がない。子供には難しいことが沢山ある。手を差し伸べた大人には頼ってもいいんだ。」

 「本当?それなら、リュウジさんうちに来てよ。一緒にいて…お母さんが死んでから、ずっとロロナと二人で苦しくて、つらくて…」



 ヒロが号泣してしまった。

 ロロナが寝ていてよかった。お兄ちゃんがこんな風に泣いては、幼くても負担をかけたと理解して悲しくなるだろう。

 


 「俺が一緒に住むのは難しいだろう?周りが許すだろうか?それに…シアンもいるよ?」

 「シアンさんは好きだし、一緒にいたら楽しいと思う。」

 


 ヒロの言葉に考えてしまう。

 ここに来たら、理想のスローライフができるかもしれない。だけど、親を亡くした子供を利用するようなもので、それは周囲からどう見えるだろう。ギルマスは呆れるのではないか?

 畑を耕してみたいという気持ちは強いし、本当に実らないのかも試したい。だが…スキルがばれるのはリスクが高い。ある程度は手作業で進める必要はあるし、肥料の類がどこまでこの世界にあるのかもわからない。

 


 「気持ちは嬉しいけど、それはゆっくり考えよう。ギルマスにもどう思うか相談してからだね。」 

 「うん…わかった。」

 「それと…とにかく飯を食べないとね。ごはんを作るから、少し寝ていなさい。」

 「うん…」

 


 ヒロを寝かせると、リュウジはシチューを作り始めた。

 具は、芋と玉葱、それにサラダチキンを小さく切ったものだ。それを牛乳で煮込んで、シチューの素でとろみをつける。かなり具沢山の満足できる味になってから、自分の分を盛り付けてから残りに3倍の牛乳を加えた。とろみが足りないので小麦粉を水で溶いたものを加えて沸騰させながら混ぜた。


 本当は、小麦粉と油を混ぜて作るらしいが、面倒なので小麦粉を水で溶いてしまった。これだってとろみはつくだろうから構わないはずだ。



 それから数日、ヒロの家で2人の看病を続けた。





読んでくださりありがとうございます。


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