96 傷だらけのヒロ①
ヒロの傷は、暗くなっても治ってこないように見えた。
おそらく重要な内臓から治しているのだろう。顔色が悪くないので、治ると信じているがいくら誠実といえども、エネルギーや他の栄養素は足りるのだろうか?体内から補充するにもやせ細っていては体を作る材料がない。
タンパク質とカルシウム、その他にもいろいろと体を作る素材が足りていないだろう。
目が覚めたら、ホットミルクを飲めるようなら飲ませよう。砂糖も入れた甘いのがいいか?ロロナも飲めそうなら飲ませたい。デカビタミンにはビタミン類が入っていても体を構成する基本のタンパク質…アミノ酸が足りていない。
ペットボトルのリンゴジュースとデカビタミンは半分ほどになっていた。リンゴジュースのほとんどはヒロが飲んだ。デカビタミンのほとんどと少しのりんごジュースはロロナが飲んだ。
そろそろ夕方かな?という頃、ロロナが目を開けた。
「ロロナさん、俺はリュウジだ。ヒロくんと仕事をしている。倒れたから様子を見に来たんだよ。さっき飲み物を飲ませたのは覚えている?」
ロロナは小さく頷いた。
「今からホットミルクを用意するけど、飲めそうかな?」
ロロナは首を傾げたが、頷くので用意することにした。コップに牛乳を入れて電子レンジスキルで温め、砂糖をスプーンに2杯入れる。よく混ぜてひと肌に冷ましてからスプーンですくった。
一口目を飲ませると、目をぱちくりとして抱き抱えている俺を見上げた。
「飲めそうもない?」
ロロナは小さく首を振る。
「飲める?飲む?」
ロロナは笑って頷いた。
骨と皮なので、見ているだけで泣きそうになるが、飲めるなら元気になれるだろう。隆二はロロナにミルクを飲ませていく。
用意した分を飲み干すと、ロロナは再び眠ってしまった。
「リュウジさん、ヒロとロロナはどうだ?」
ギルマスとシアンが戻ってきた。
「お帰り。ロロナは一度目を覚ましたけど、ヒロさんは眠ったままで不安になってきた。」
「なんだ。さっきは自信ありげだったのに、自信喪失するのが早いな。」
「そんなことは…」
「大丈夫だ。二人とも顔色がいい。ヒロは見つけた時はもうダメだと思ったし、医者も望みは薄いと言っていたくらいだ。リュウジさんが薬を飲ませてから、各段に顔色がよくなったのは確かだ。信じて待とう。どんな薬だってすぐに効くわけがない。」
「そうですね…待ちます。」
シアンが俺をチラッと見た。
どうした?と聞こうとしたが、その前にシアンの腹が返事をした。
ギルマスと顔を見合わせて笑ってしまう。
「夕食を用意しますね。二人は二人を見ていてください。」
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