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93 ヒロと出会って3週間目




 「ヒロはどうしたのかな?」

 

 シアンが、ヒロを心配していた。

 今日は粥の販売日なのに、ヒロが手伝いに来なかったのだ。前回、熱さましを1欠け渡し、使い方も説明したので、どうだったか聞きたかったのだが…。

 販売も終わり片づけをしていた。



 「急用でもできたか、妹さんにもしかしたら…」



 そこまで言って隆二は口をつぐんだ。滅多な事は言うものではない。



 「リュウジさん、すぐに来てくれ。」

 


 ギルマスが厨房にやってきて、その後ろには兵士が立っていた。

 シアンと顔を見合わせて、片付けの途中だったがそのままにしてついていく。町から離れた場所へ向かうと、その路地にヒロが倒れていた。服が脱がされ腕がおかしな方向に曲がっている。顔ははれ上がっていて、口から血が出ていた。

 生きているのか?

 確認するのも怖くて、立ち止まってしまう。

 ギルマスとシアンが駆け寄り、呼吸を確かめた。



 「生きています!」



 シアンの声に、はっとした。ぼーっとしている場合ではない。ギルマスがヒロを抱き上げたので、隆二は後ろをついていく。

 ギルマスの知り合いの医者の元へ運び腕の修復と固定が行われた。

 内臓の損傷はわからないし、それは運次第だという。

 レントゲンもCTもない世界では、むやみに腹を開けられないのだろう。


 ギルマスの手配で、ヒロを自宅へと連れ帰った。

 ヒロの家は二階建てで、一階には土間が広がっていたが、部屋は仕切られていてキッチンと居間、寝室になっていた。

 寝室には、妹さんが寝ており、もうひとつベッドがあったのでヒロを寝かせた。

 

 二人とも、生きているのか死んでいるのかわからない状況だった。



 「今夜が峠だろう。俺は残るが、お前たちはどうする?」

 「ギルマス。俺も残ります。シアンはどうしようか?」

 「俺も残ります。」

 「そうか」

 

 「シアン、ギルマス少しお任せします。俺は薬になるものがないか確認してきます。」

 


 隆二は、リュックサックを手に家の裏へ出た。

 家の裏には畑が広がっているらしいが、何も植わっていない。家の前には倉庫が2つ建っているが今は使っていないのだという。

 

 隆二は家の裏手で木箱に座り、助ける手段を考えていた。

 この間の熱さましはだめだ。あれは熱さましとしては優秀だが、それだけだ。傷を治すのは無理でも助ける手段…あ…あれだ。


 隆二は『箱』から誠実を取り出したが、これを意識のない人にどうやって与えるのかが問題だ。すりおろせれば汁を飲ませられるが、おろし器はない。煮たらつぶせるだろうが、煮ても効果があるのだろうか?

 隆二は誠実の説明を開いてみる。加熱可、多少の効果減少あり。となっていた。

 多少は構わないだろう。


 隆二は、居間にある台所へ行くと小鍋を取り出して、小さく切った誠実を煮始めた。切ってよく煮ると柔らかくはなったが、このまま口へ運んでも食べられそうもない。隆二は考えたものの飲みやすいようにリンゴジュースを加えてもう一度煮た。柔らくなったものをスプーンの背で押しつぶして叩く。かなり崩れたがミキサーにかけたようにはならない。せめてすり鉢でもあるといいのだが、そんな物は持っていないので今日は無理だ。

 その汁には誠実の汁も含まれるだろうから、それを飲ませることにした。

 竹カップ2つに分けていれる。1つ目には汁をメインに2つ目は実がかなり残っている部分だ。



 「お待たせしました。これを飲ませてみます。」

 「飲ませるったって、腹の中どうなっているか…」

 「そうだとしても、このままだったら持たないですよ。」


 

 隆二の言葉にギルマスも苦しい顔を見せた。

 隆二は、ヒロの上半身を持ち上げた。誤嚥させないためだが、辛そうに顔をゆがめた。

 


 「ヒロくん、これを飲めるだけ飲んでくれ。これは特別な物だから、君を助けるはずだ。」

 



読んでくださりありがとうございます。


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