89 スライムと薬師
「どれどれ…開けてよいか?」
「もちろん、どうぞ。」
「おおっ…これは、難癖なんぞつけられないくらい素晴らしではないか。見事な青スライムだ。」
難癖つけるのか…いつもはそれで値引きしているのだろう。心の声が漏れているのを薬師は気が付いていないようだ。
裏口の前の庭で薬師は立ち止まり、桶を下へと下した。
「スライムを捕まえたはいいが、仕留め方を知らなくてね。どうやって仕留めると薬に使えるんだ?」
「ああ、そういうことか。スライムは知っての通り核を潰すと液体になり使えなくなる。金物の針で核を刺して抜き取ると、体が残る。やって見せよう。ちょっと離れておれ。」
薬師は、槍でスライムを突き刺して核を抜き取った。
それからから上げて、状態を確認するとまた水へ戻した。
「そっちもよいかな?」
「俺がやってもいいか?」
「それはかまわな…ちょっと見せろ」
俺が蓋を開けると、薬師は飛びついてきた。
「これは透明スライムではないか!」
「そうです。」
「これは、新人には任せられぬ。わしに任されよ。」
薬師は、これまたすぐに槍で仕留めて核を抜き取った。
「おぬしこれほどのスライムを生け捕りにするとはすばらしい腕ではないか、今すぐに代金を用意する。」
薬師はバタバタと裏口へ入るとすぐに金貨と銀貨を1枚ずつ持ってきた。
「お…」
「これでよいな?」
「ああ、十分だ。これをどう使うのか聞いてもいいか?」
「せっかくのスライムだから、すぐに使いたい。作業しながらでもよいか?」
「ああ、作業場に入っていいなら構わないが…。」
「ふん、ついてこい。見せてやるから、また捕まえてこい。」
なるほど、見せるのは使い道を教えるから、ってことだな。