88 スライム
リュウジは、薬師の薬に入っていたドライスライムが気になっていた
手元にあるスライムの箱を取り出してみる。
どうやら2日~5日で2つに分裂するらしい。インベントリの中で飼っているので、分裂する様子もじっくりと観察できていた。1/6の遅延の効果は大きい。
インベントリの説明で、スライムの色ごとに性質が違うのは分かったが、それ以上はわかっていなかった。
隆二は、何度も読んできたスライムの説明を開いた。
『木箱(赤スライム):酸性の水を好む。触れると危険。』
『木箱(黄スライム):アルカリ性の水を好む。触れると危険。』
『木箱(青スライム):水を好む。無味無臭』
『木箱(緑スライム):竹の若葉を好む。上から落ちてきて危険。』
『木箱(深緑スライム):草や葉を好む。上から落ちてきて危険。』
『木箱(水色スライム):水を好む。無味無臭』
『木箱(透明スライム):清水を好む。無味無臭。』
あれ?青スライムと水色スライム・透明スライムの説明が以前と違う?
隆二がドライスライムを知ったために、それに関する事柄が増えたのだが、隆二はそんな事情は知らない。
隆二は考えていた。
無味無臭ということは食べられるということだろう。ドライスライムはこのどれかのスライムの干したものなのか?どちらがいいのか?それともどちらにも特性があり、使い分けるのか?
食べてみるか?
その前にスライムは一部を切り取ることができるのだろうか?それとも仕留めてからじゃないと切り取れないのか?
う~ん…わからない。とりあえず、部屋の中でやって部屋に損害が出ても困るか…。
森にでも行って、やってみようか?
ノートにはスライムの色ごとにページを分けてメモを取っていた。青と透明のページには、やはり無味無臭の文言はない。水色スライムは今回加わっていたどういう事だ?
どちらも書き加えた。
スライムは、色により大人?のサイズも異なるらしい。透明スライムは直径18㎝ほどと大きいが、青スライムは8㎝ほどと小ぶりだ。
透明スライムの好む清水は山で採取する水なのだが、スライム2匹で木箱1杯分消費する。週に1回分裂するため、2日に一回は様子を見て、水を足していた。そろそろ木箱を増やす必要があるだろう。
漫画で見るオーソドックスなスライムの倒し方は、核を壊すことだ。核を壊すとスライムは水に変わって消える。そんな描写が多い。
もしそうなら…ドライスライムにならないような?
やってみなければわからないが、壊し方によるだろうか?
わからないな…いや、もしかしたら教えてもらえるだろうか?
隆二は、桶を2つ購入してきた。蓋も用意する。
透明スライムと青スライムを1匹ずつ桶に移すと水も加えて蓋をした。
蓋を固定するように縄で縛り、さらに桶を吊り下げ棒の両端に乗せて宿を出た。
江戸時代のしじみ売りみたいだと思いながら、隆二はある場所へと向かった。
「おや、どうした?昨日の薬に何かあったかね?」
「いや、そうではない。実はスライムを捕まえた。薬師殿はスライムの買取をしているかと思ってね。」
「スライムを?そいつはすごい。買取は鮮度次第だな。」
「鮮度は抜群だ。生け捕りにした。」
「生け捕りだって!?見せてくれっ!ああ、ここじゃあ危険だから裏へ回ってくれるか?」
薬師が桶をひとつ持ってくれたので、隆二はもうひとつを持ち上げてついていく。
危険ということは、宿で試さなくてよかったようだ。
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