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87 薬



 「お待たせしましたな。これを10回に分けて飲むようにしなされ。」

 「飲ませ方は?」

 「薬は10粒入っている。1回に1粒を煮溶かして飲ませればよい。」

 「煮溶かすための水の量はどの程度ですか?」

 「カップに半分でよかろう。」

 「わかりました。では代金の銀貨5枚分の小銀貨50枚です。」



 隆二は、わかりやすいように小銀貨を10枚ずつ並べていく。

 横に10枚縦に5列にすると薬師は笑顔でうなずいた。



 「確かに受け取った。お大事に」



 お大事にか…薬屋の見送りの言葉は、こちらの世界も変わらないらしい。

 子供のころ、薬局で薬をもらう時に掛けられた言葉だと思い出し懐かしかった。

 ドラッグストアでは「ありがとうございました。」と薬だけの買い物でも言われるので、慣れてしまっているが、考えてみると少し違和感のある言葉だ。

 


 「ヒロさん、少し待ってもらえるか?」

 「うん」

 


 隆二は、道の端によると薬の入った壺のふたを開けた。中に入っていたのは、少し緑っぽいキューブ型の物だった。

 


 「シスサポ、インベントリを開いて」

 『了解。インベントリを開きました。』

 「リリー、手の中の壺を今フォルダへ入れて」

 『かしこまりにゃん♪』

 「リリー、今フォルダの壺の説明をして。成分が分かるなら教えて欲しい。」

 「シスサポ、リリーの説明を録音して」

 『説明するにゃ♪精度6割の砂糖10%、ヨモギ草10%、ドライ青スライム1%、の麻の実0.5%と井戸水78.5%にゃん♪』

 『録音を終了しました。』

 「リリー、今フォルダから壺を俺の右手の中へ出して。」

 『かしこまりにゃん♪』

 


 隆二は、手の中に戻った壺に蓋をした。

 ほとんど水で砂糖とヨモギって大したことはないが、麻の実に少々引っかかる。だが、麻の実は、日本でも七味唐辛子に入っているものだから、そう目くじらを立てる物ではないのだろうか。

 それに…ドライスライム?

 スライムが入っている?

 めちゃくちゃ気になるが、今はヒロを帰さないといけない。

 


 「ヒロ、これを10回に分けて朝、夕飲ませられるな?」

 「うん、リュウジさんありがとう。これと粥があればきっと元気になってくれる。」

 「なら、両手に持って歩くのは危ないから、この籠にカップと壺を入れてタオルで隙間を埋めておこう。」



 隆二は、手つきのかごをインベントリから取り出し、持ち物を入れるとヒロへ渡した。 ヒロは、籠を受け取るとお礼を言い、一目散に走り去るのを見送った。

 

 ヒロからお金を貸してと言われた時には、心底驚いた。でも、こんなことでもない限り入ることのない薬局に入れたので良かった。

 薬代は貸しという約束ではあるけど、実際に返してもらうには、ヒロに仕事を与えなければ無理だろう。

 今以上に商売をしていては、隆二としてはいろいろな事をする時間が無くなってしまう。それでは困るのだ。


 いや、待てよ…粥を作りに行って、鍋に移した後の販売をヒロとシアンに任せてはどうだろう?片付けもしてもらえば、俺には時間ができる。問題は、金だな。小銀貨2枚で売るので400枚を超える。それを子供に運ばせるわけにはいかない。

 隆二であれば、インベントリへ入れられるので重さはわからない。ギルマスへ相談して大銀貨や銀貨へ交換してもらうこともある。どちらにしても大金になるので、持たせるわけにもいかないか…。

 何かいい方法はないのか?




読んでくださりありがとうございます。


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