79 ロティ戻る
「リュウジさん、おはよう。ちょっといいかな?」
朝からロティが訪ねてくるのは珍しい。
部屋に迎えると、朝食をパクついているシアンを見て眉を寄せていた。
1週間ほど、他の町へ出かけていたから挨拶かと思ったけれど、この様子では帰還の挨拶だけではなさそうだ。
「ロティさん、お帰り。どうだった?朝食を一緒に食べるか?」
「うん…」
「飲み物はお茶でいいか?」
「うん、ありがとう。この子誰?」
「ああ、この子はシアンだ。シアン、この人はロティさんだ。商売人で俺の先生だ。」
「え!?そんな…ちがっ…」
「ロティさん、初めまして。シアンです。」
「うん、初めまして。ロティだ。」
「ロティさん、お茶をどうぞ。」
俺は部屋の隅に用意していた椅子をテーブルまで運んだ。
「シアンくんはどこから来たの?」
「えっと…」
「リュウジさんとどういう関係…」
「あの…それは…」
「ロティさん、そのくらいで。シアンは俺が保護する約束で預かっているからね。」
「そうですか」
「それよりも、サンドイッチをどうぞ。こっちが卵でこっちがハムだよ。入っている葉っぱは今朝プランターから収穫した物だから新鮮だよ。」
「え?もう収穫したんですか?」
「うん、これは新芽を食べるために植えたからね。結構わさわさ生えてきていて、楽しいよ。」
「わさわさ生えるって…うわぁ…本当に生えている。世の中の畑は何も実らないといわれているのに、なんでここだけこんなに育つの?」
「なんだろうね?でも、育っているし美味しいから難しいことはいいじゃないか。」
「そうですね、どうせリュウジさんですし。いただきます。」
なにか雑に返されたような?
ロティは卵サンドにかぶりついて、目を輝かせて食べ始めた。次にハムを食べて隆二を見る。うまかったんだろうなと思いながら、隆二は自分の分を食べた。
「ハムって肉だよね?塩漬け肉?」
「そうだよ。燻製にしていたと思う。」
「燻製?」
「ああ木を燃やして、その煙で燻したものだ。」
「へえ、そんな調理法があるのか」
「もう一切れずつ食べられるか?」
「食べます!」
「うん、食べる。」
二人とも即答だったので、隆二は笑いながらサンドイッチを取り分けた。薄切りパン2枚と卵1個とハム1枚、朝食としては十分な量だろう。
成長期だから、たっぷりと食べて育ってくれればと思う。
食後、シアンを部屋へ返した。退屈をしないように知恵の輪も渡しておく。
ロティと過ごすには、まだ慣れていないので疲れるように見えたのだ。
「それで、シアンくんは何者なの?」
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