76 ギルドの粥売り
シアンを迎えた三日後、隆二はシアンを連れてギルドへ向かった。
ギルマスへ挨拶をし、シアンを紹介してから厨房へ入る。シアンには井戸から水を汲むように言いつけ、いつも通り粥を作り始めた。
竹カップにミルクティーの粉末を入れて水で溶かす。2つ作りさらに牛乳を加えて電子レンジスキルで温める。いつもより少しだけ濃厚になって美味しいはず…。
蓋をしてヒロが来るのを待っていた。
「リュウジさん、水汲んできた。」
「ありがとう。今はやることがないから座っていていいよ。」
「うん」
「リュウジさん、おはよー」
元気に厨房に入ってきたヒロがシアンを見て固まっていた。
「ヒロくんおはよう。この子はシアンだ。今日から手伝わせるから、客を並べるのを一緒にやって教えてくれ」
「はい…あの…僕はもういらない?」
「ん?」
「あの…この子に仕事を教えて僕のお仕事は終わり?」
「違うよ。仕事の依頼は続けるから心配しなくていい。慣れてきたら粥売りもしてもらいたいからね。」
「本当に?」
「当たり前だろ?ヒロくんは大事な従業員だよ」
目を潤ませたヒロの表情は少しだけ明るく戻った。
「ほら、二人とも仕事前にミルクティーを飲みなさい。」
シアンとヒロの前にミルクティーを置いた。ヒロが飲むのを見てから、シアンも口をつけた。牛乳は飲めるだろうかと心配だったが、笑顔を見せているので大丈夫そうだ。
隆二がシアンを引き取ってから2日間、シアンは食事以外の時間は眠り続けた。それは今までの疲れを取り戻しているかのようで、隆二は見守るしかできなかった。今日はずいぶんとすっきりとした顔をしていたので、仕事に連れてきたのだ。
同年代のヒロと仲良くなれれば、愚痴も言い合えるだろうと思った。
二人は、仲良く客を並ばせてくれたので、今日もスムーズに粥を売ることができた。
ヒロに粥を持たせて帰らせると、いつも通りにギルド用の粥を分ける時間だった。
「ギルマス、ひとつ提案があります。」
「なんだ?」
「卵を入れた卵粥だと需要はないでしょうか?」
「!?」
ギルマスは目を見開いていた。
「それはどういう…」
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