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75 シアン②



「シアン、ぐっすり眠っていたが覚えているか?」

「あっ」

 


 シアンが慌ててベッドを降りて目の前に来た。



「粥が来たから、食べに来なさい。」



 粥と聞いてシアンは笑顔を見せた。こういうところは子供そのものだ。



「俺の部屋は、ここの一番奥だ。しばらくは、シアンが部屋を出る鍵は俺が預かるが、そのうち信用できると思ったら、鍵は渡す。それまでは不自由だろうが、我慢しなさい。君

が何か問題を起こしたら、俺の責任になってしまうからな」

「うん。」



 シアンは移動中、自分の服を見たり髪を触ったりと落ち着きがない。寝起きだから、まずは湯冷ましを飲ませたほうがいいかな?

 先ほど注いだ湯が冷めているといいけど…。



「ここだ。はいりなさい。」

「うわぁ…さっきの部屋に驚いたけど、ここもすごい。」



 シアンの言葉はまるであの部屋でも良いと思っていることになる。

 これは、食事をしながらいろいろと聞いたほうがよさそうだ。



 「シアン、住んでいるところに荷物があるなら、取りに行こう。」



 シアンは驚いた顔をして首を振った。

 ふむ…どうやら、大切な物はないのか?



「それじゃあ、そこに座ってその湯冷ましを飲みなさい。それから粥を食べよう。」



 シアンに勧めた席には、すでに湯の入った竹カップと粥を置いてあった。隆二も一緒に食べることにするが、正直飲み物のような粥でおいしいものではない。

 だが、目の前のシアンがあまりにも大切そうにスプーンを運ぶものだから、隆二もスプーンですくって食べる。


 粥を食べさせてから、やはり誠実を食べさせようと思った。1回に全部じゃなくて半分とか1/4でも効果があるかもしれない。子供と大人では体の大きさも違うのだからと考えた。

 食べ終わったシアンの目の前に、誠実を取り出し、果物ナイフで4等分にした。真ん中の芯のところを切り取ったものを渡す。



「食べてごらん。甘くておいしいぞ。」

「うん」



シアンは、誠実を食べて泣き始めてしまった。



「シアンどうした?まずかったか?」

「おいじい…お湯も粥も…この実もめちゃくちゃおいしい…」

「それなら泣くことないだろう?」

「リュ…ジさん、な…で…おえ…お金とったの…なん…こん…」



 何を言いたいのかさっぱりわからない。

 泣いている子供はどう対応していいのかわからなくて、困ってしまう。とりあえず背中を撫でて落ち着くのを待った。

 話を聞いているうちに日が暮れてしまったが、月明かりがあるのでそれなりに見えていた。

 シアンが落ち着くのを待って、厠の場所を教え、歯磨きをさせる。井戸の水で手を洗うことも教えた。

 シアンを階段脇の部屋へ戻してから、隆二は部屋へ戻った。


 シアンの話は衝撃的だった。

 物心がついた時には、町で野宿をしていたらしい。そこで浮浪児達と過ごしてスリや盗みをして暮らしていたが、みんな死んでいったという。

 人の物を捕ってはいけないというのは簡単だが、働くことを知らない子供はそうするしかなかったのだろう。

 兵士に約束したからには、今後はそんなことをさせるわけにはいかない。


 先ほど、泣きじゃくっていたシアンに俺と一緒にいる限りは飯を食べさせるし、着るものも寝る場所も用意すると約束した。もし盗みをしたらもう一緒にいられなくなるとも教えた。食べるのが目的であれば、それが満たされて入ればそんなことはしないだろう。

 もちろん、一緒にいるからには仕事を手伝う事も伝えている。


 しばらくは、ヒロと一緒に客を並べてもらおう。慣れてきたら、シアンにも粥を盛り付けてもらおうか。


 

 



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