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72 街歩き①


 隆二は、いつも通り屋台街を見て歩いていた。

 ポケットにチェーンでつないだ小銭入れはあるが、それとは別に反対側の左側に金袋を提げていた。

 中には、銀貨1枚と小銀貨12枚を入れていた。

 今日は沢山買う気はなく、鋸などの道具があれば買おうかな?程度の気持ちだ。

 

 土曜日の屋台街は賑わっていた。

 日曜日は基本的に休みらしく、宿でさえ粥の販売をしていなかった。

 そのため、土曜日に買い物を済ませるのが、ここの常識らしい。そうはいっても食べ物は相変わらず売っていなかった。



 「ごめん」

 


 人にぶつかったので、咄嗟に謝った。

 ぶつかった相手は少年のようだったが、後ろ姿しか見えない。

 


 「兄さん、今…何か取られていないか?」

 


 兵士に声を掛けられて、腰を見るとぶら下げていた金袋がなくなっていた。

 


 「金袋が…」

 


 かなり先で怒号が上がった。

 兵士と一緒に向かうと、俺の金袋が地面に転がっていた。その近くでは、少年が兵士に取り押さえられていた。



 「これで間違いありませんか?」

 「はい、俺のです。」

 「中にいくら入っていますか?」

 「銀貨1枚と小銀貨12枚だったと…」

 


 兵士は、中を開けて確認した。

 


 「確かに、貴方の物ですね。」

 


 兵士から金袋を受け取ると腰へ結びなおした。

 


 「ありがとうございます。これは、取り押さえた方と皆さんで使ってください。」

 


 隆二は数枚の小銀貨を渡した。

 断ることはなく、素直に受け取るのでなんとも言えない気分になる。ここは日本じゃないから、こればかりは気にしてはいけないと自分にいいきかせる。



 「この子はどうなりますか?」

 「こんな大金をスッたからな。指を切り落とすことになるだろう。」

 「それは、ちょっと…」

 「どちらにしても、こいつは常習犯だ。犯罪奴隷として売られることになるだろう。」

 「犯罪奴隷ですか…」

 


 大人に抑えられている少年は、ヒロよりも少しだけ年上のようだ。犯罪奴隷がどういったものかはわからないが、あまりいいものではないだろう。

 もちろん、スリはよくない。

少年の遊びで済ませてはいけないし、常習犯というのだから手癖が悪いのだと思う。だが…奴隷というのは抵抗があった。

 しかも指を落としてしまっては、この先大変なことになってしまう。



 「この子を私が引き取ってもいいですか?」

 「貴方が?個人で罰したいという事か?」

 「いえ、私が監督してもうスリをさせないという事です。」

 「貴方は被害者だろう?被害者が本気でそんなことを言っているのか?」

 「ええ、まだ少年ですから。なんとかできると思います。」

 「こいつはもう大人だと思うが…」



 隆二は、銀貨を兵士の手に握らせた。

 


 「うむ…まあいいだろう。だが、次見つけたら見逃せない。」

 「ええ、もちろんです。ありがとうございます。」

 


 隆二は、少年を解放するように抑えている大人に声をかけた。

 


 「君、名前は?私の元にいるなら犯罪奴隷にはならない。私から離れるならそうなるようだが、どうする?私の元に来るなら名前を教えてくれ。」

 「ちっ……、…シアンだ。」

 「シアン、俺の泊っている宿に来てもらう。仕事も手伝ってもらう。こき使うから覚悟しろ。」

 「わかったよ。」

 


 少年は、仕方なさそうに立ち上がったが、逃げ出すチャンスをうかがっているのはわかった。

 


読んでくださりありがとうございます。


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