7 はじめての道②
「おっおおぅ」
思わず変な声が出た。
にゃん♪って…誰だこんな設定にしたの。つい笑顔になってしまう。
システムメッセージの横では耳のついた美少女キャラが動いていた。
スマートウォッチの性能が知りたい。
タップすればいいのか?ふわふわと動いているスマートウォッチアイコンをタップした。
『スマートウォッチを取り出したいかにゃ?』
「YES」
『どこにだすかにゃ?』
「右手の上」
『了解にゃん♪』
入力を終えると、右手を上向きにして待つ。すぐに淡い光が現れ細長いスマートウォッチが現れた。
『スマートウォッチを同期するかにゃ?』
ほんと誰だよ。こんなところで萌えを求めたのか?
「YES」
『同期を始めるにゃん♪しばらく待つにゃん♪』
システムメッセージの横で小さな猫耳少女が踊っている。いちいち可愛い。踊りといっても、いい加減に手足を動かしているようなプログラムをされているらしく、かっこいいとかかわいいではないへっぽこおかしなポーズもとるため、つい魅入ってしまう。
『同期は終わりにゃん♪左側面を長押ししてにゃん♪』
隆二は、そのメッセージを受けてスマートウォッチを左手首に巻いた。
左側面を指先で長く触れると起動を始めた。
立ち上がったので、画面をスライドさせると同じアプリが表示される。インベントリを開くと真っ暗だった。今は空だからだろう。
マイスマホを何気なく画面に押し付けると吸い込まれていく。
画面にスマホが表示された。
「おぉ?」
隆二がスマートウォッチの中のスマホをタップすると「出す場所はどこかにゃ?」と問われたので座席左のスペースを指定すると、スマホが置かれていた。
あっいけない。今のMPを確認して増減を調べないと…。
ペットボトル飲料を全部入れると、それぞれの飲料ごとに分類されて丸いシャボン玉のようなものがふわふわと画面の中を動いていた。数が増えたら、この中から探すのは大変そうだ。
「リリー、これまとめられないの?」
『音声を確認しました。主の声として登録しますか?』
それまでテキスト入力をしていたのに、うっかり話してしまった。リリーではなさそうだ。システムのメッセージなのかも…いや、どちらもシステムには違いないか。
「登録する」
『主の呼び方を選んでください。主、ご主人様、旦那様、奥様、ぼっちゃま、お嬢様、お兄様…』
大量の呼び方の羅列に辟易する。隆二は、途中で嫌になりメッセージを戻すと「主」を選択した。文字のことだし、簡単でいい。
『主で登録します。』
『主!インベントリの黒いところを長押しするにゃん♪』
リリーのいう通り、黒い部分を長押ししていると画面が切り替わった。
『フォルダを作るかにゃ?』
「YES」
『フォルダに名前を付けてにゃん♪』
小さな猫耳アイコンがピョコピョコと動いている。
「飲料」
『飲料フォルダを作ったにゃん♪何をいれるかにゃ?タップして引っ張ると入るにゃん♪フォルダを開いて直接入れることもできるにゃん♪』
アイコンが顔のアップになりキュルンとうるうるの瞳になる。かわいいが誰だこんな仕様にしたのは脱力するじゃないか。
隆二は、スマートウォッチは小さくてやっていられないので、スマホを開いてペットボトル飲料をフォルダの中へ移動させ終えた。
このバブルの玉見にくい…。
スマホで見ると、上に小さく表示形式『バブル』となっている。形式選べるのか?
タップすると『バブル』『整列:アイコン』『整列:文字』『スネーク』と出てきた。スネーク?これは選んだらダメな奴だ。パソコンのスリープ画面に出てくる動いているあれに違いない。
『整列:アイコン』を選んだ。左上に飲料フォルダが収まったところを見ると、一般的な表示になったらしい。隆二は見慣れた表示に安心した。
スマートウォッチで操作していても、アイコンが左右へ動かすと表示が送られる。これなら選びやすいと安心した。この小さな画面の中にふわふわ動いているアイコンをタップするのは難しすぎた。
スマートウォッチで取り出しもできるのは便利だろう。
問題は、『インベントリ』にはどのくらい入るのか。『箱』と違って枠がない。それは無制限という意味なのか、重量制限があるのか?それとも容積制限なのか?制限の基準がわからない。その上、入れておくことによりMPの消費があるのかないのかもわからない。
今のところ収納にも取り出しにもMPは使わないようだ。増やさないでこのまま様子を見たほうがいいだろう。
スマートウォッチには時間が表示されている。
17時47分、春先であるならもう少しで日が落ちるだろう。隆二は、泉近くの空き地に車を止めているが、木の近くなど少し隠れられる場所がいいだろうか?
隆二は、泉が見える木陰へと車を動かした。