67 粥売り②
ヒロは細すぎる。手伝ってもらっている間に倒れられても困るので、糖分を取ってもらうことにした。粥は売り物で、報酬でもあるので今食べさせるわけにはいかない。
隆二は、移した鍋をカウンターへと運び始めた。それを見て、人々が集まってくる。知らずに来ていた人が、慌てた様子で外へ出て行き新品らしい竹カップを手に戻ってくる。
「もう少しで粥の販売を始めます。2番お玉1杯で小銀貨2枚です。並んでいない方にはお売りできません。一列に並んでください。」
隆二がそう声をかけると、人々が1列になり始めた。その間に、もう一つの鍋も運ぶ。最後に薬缶を取りに行く。後半はどうしても重くなるので、差し湯用だ。
薬缶を手にする前に、ヒロを見ると頬に赤みがさすほど顔色がよくなっていた。
「ヒロくん、仕事をしてもらうよ。カウンターの向こう側の客を1列に並ばせること。それが君の仕事だ。」
「わかった。」
ヒロが駆けていくのを見ながら薬缶を運んだ。
あんなに細くても子供は元気のようだ。
粥の販売は30分もかからずに終わってしまった。
後半、揉める奴らがいたのでギルマスが来て一喝する場面はあったが、それで済んだ。残り10人分になったところで、それ以降の人にはお断りを入れさせてもらった。
断った人たちの悲壮な顔を見ると、心苦しいがこればかりは仕方がない。
ある程度のラインがないとキリがなくなってしまう。
「ヒロ君、空いた鍋を厨房へ運んでくれるか?」
「うん」
隆二は、カウンターを拭きあげると厨房へと向かった。
厨房では、鍋にこびりついている米粒を湯冷ましをかけてこそげ取った。こんなものでも、食べ物が心底ない人には貴重だというのだ。
それを集めて、カップへ入れておく。
ヒロへ報酬の粥を渡す。明後日の約束をすると笑顔で帰っていった。
「リュウジさん、ヒロが世話になった。」
「いえいえ。」
「それはそうと…あのミルクティとやらだが…」
「はい、なんでしょう?」
「あれは、砂糖が入っていたな?」
ギルマスと目が合うと、その鋭さに隆二は後ずさった。
やばい…何かやらかしたか?
背中につっと汗が流れるのを自覚した。
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