表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/187

67 粥売り②



 ヒロは細すぎる。手伝ってもらっている間に倒れられても困るので、糖分を取ってもらうことにした。粥は売り物で、報酬でもあるので今食べさせるわけにはいかない。


 隆二は、移した鍋をカウンターへと運び始めた。それを見て、人々が集まってくる。知らずに来ていた人が、慌てた様子で外へ出て行き新品らしい竹カップを手に戻ってくる。

 


 「もう少しで粥の販売を始めます。2番お玉1杯で小銀貨2枚です。並んでいない方にはお売りできません。一列に並んでください。」



 隆二がそう声をかけると、人々が1列になり始めた。その間に、もう一つの鍋も運ぶ。最後に薬缶を取りに行く。後半はどうしても重くなるので、差し湯用だ。

 

 薬缶を手にする前に、ヒロを見ると頬に赤みがさすほど顔色がよくなっていた。

 


 「ヒロくん、仕事をしてもらうよ。カウンターの向こう側の客を1列に並ばせること。それが君の仕事だ。」

 「わかった。」



 ヒロが駆けていくのを見ながら薬缶を運んだ。

 あんなに細くても子供は元気のようだ。



 粥の販売は30分もかからずに終わってしまった。

 後半、揉める奴らがいたのでギルマスが来て一喝する場面はあったが、それで済んだ。残り10人分になったところで、それ以降の人にはお断りを入れさせてもらった。

 断った人たちの悲壮な顔を見ると、心苦しいがこればかりは仕方がない。

 ある程度のラインがないとキリがなくなってしまう。



 「ヒロ君、空いた鍋を厨房へ運んでくれるか?」

 「うん」



 隆二は、カウンターを拭きあげると厨房へと向かった。


 厨房では、鍋にこびりついている米粒を湯冷ましをかけてこそげ取った。こんなものでも、食べ物が心底ない人には貴重だというのだ。

 それを集めて、カップへ入れておく。

 

 ヒロへ報酬の粥を渡す。明後日の約束をすると笑顔で帰っていった。





 「リュウジさん、ヒロが世話になった。」

 「いえいえ。」

 「それはそうと…あのミルクティとやらだが…」

 「はい、なんでしょう?」

 「あれは、砂糖が入っていたな?」



 ギルマスと目が合うと、その鋭さに隆二は後ずさった。

 やばい…何かやらかしたか?

 背中につっと汗が流れるのを自覚した。





読んでくださりありがとうございます。


評価をいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ