66 粥売り①
翌朝ギルドの厨房に入る前に、ギルマスへ挨拶に行き人を雇いたいと依頼をした。
「人を並ばせるためだけに人を雇うのか?」
「はい、200人分の販売です。週に3日もあるのに、毎回人手をギルドからお借りするのは気が引けまして…。」
「そうか、今日からでいいのか?」
「はい、お願いします。」
「雇う条件だが、ここでの販売だと長い時間でもないがどのくらいを考えている?」
「実は、いくらがいいのかさっぱり見当がつきません。」
「だろうな。」
「一般的な条件はどのような感じですか?」
「うむ。1日手伝いで小銀貨2枚。内容次第だ。安いと銅貨5枚でも人は来るが、まともに動けない可能性もある。時間が短いので銅貨でも十分だとは思う。」
「小銀貨2枚って、粥を1杯購入したらなくなってしまう。」
「そうだな、だがそういうものだ。粥を買えるだけいいと思うぞ。」
「わかりました。では、今回は人を並ばせるだけですから、それができる人であれば子供でも女性でも構いません。時間も短いので小銀貨1枚、もしくは同程度の粥のどちらかでもいいでしょうか?」
「十分だろう。子供でもいいのか?」
「はい、心当たりが?」
「近所の子が…仕事がなく時間はある。真面目な子なんだがそいつでもいいだろうか?」
「ええ、ギルマスが信用できる子ならお願いします。」
「ありがとうすぐに手配しよう。それと、今日もギルド用に少し頼みたい。」
「わかりました。よろしくお願いします。」
隆二は、大鍋で粥を作り中鍋に取り分けるときに小鍋にも取り分けた。
それぞれに蓋をして余熱で蒸らす。大鍋に少しの湯を入れて周囲をすすぐようにしながら沸かし、その汁を片方の鍋へ加えた。今日からは200人分ずつを販売する。
1度に出来上がるのは300人分なので、鍋1つは『箱』へ収納する。調理は週に2回の予定だ。予備があれば、不測の事態が起きても対応できる。
前回、後半の鍋は重くなっていたので少しだけ汁を多めにしたのだ。
「リュウジさん、この子が手伝わせるヒロだ。よろしく頼む。」
やってきたのは、水浴びをしたばかりらしい10歳前後の子供だった。
手足が細く今にも折れそうな体をしていて髪が濡れていた。服は擦り切れが多いが、他の人たちと変わらないので、こんなものなのだろう。でも、顔色が悪い。青白くて今にも倒れそうに見えた。
「一応、水浴びをしてから来てもらった。」
「ありがとうございます。」
ここの人たちは水浴びはたまにしかしないと言っていたので、手伝いのために気合を入れたのだろう。
「初めまして、俺は隆二だ。今日の報酬は金と粥とどっちがいい?」
「ヒロです。お粥で…」
「わかった。まだ少し早いから、そこに座っていてくれるか?」
「あの、なんでもできます。」
「うん、でも今は大丈夫だ。」
隆二は、薬缶の湯でインスタントのミルクティを淹れた。120ccで薄めるところを200ccで薄めたのは、この世界では濃すぎるからだ。ロティのおかげでそこの自覚はできていた。甘いから子供で飲めるだろう。
「それは?」
ギルマスがまだいたのを忘れていた。
「飲んでみますか?ミルクティです。」
隆二は、少しをギルマス用に竹カップへ移すと、沢山入ったカップをヒロへ渡した。
「熱いからね。これを飲み終わったら手伝ってもらう。少しゆっくりしていていい。」
ギルマスは、軽く揺らして冷ましてから一口飲んで目を見開いていた。そして、隆二を見て苦笑した。
明日からは、1日2話程度の更新となります。
週末は少し増えるかもしれません。
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