59 来客②
隆二は、涙目のギルマスを見ながらお茶をカップへそそいだ。このままだと、食べないようなので、ティッシュに一つずつパンをとり二人の目の前に置く。
「お皿がなくて申し訳ありませんが、召し上がってください。もう1つずつあります。えっと…そちらは…」
隆二が、初めて見た男へと視線を移した。
「私まで申し訳ありません。ご挨拶が遅くなりました、私は副ギルドマスターのシュリーと申します。」
「サブマスと呼んでもよろしいですか?」
「いえ、シュリーとお呼びください。」
「わかりました。シュリーさんと呼ばせてもらいます。」
シュリーさんは、銀の髪を後ろで束ねた男性だ。細いのは他の皆と同じだが、神経質そうな目をしていた。
「お茶が冷めてしまうので、食べませんか?パンもどうぞ」
隆二が、食べ始めると二人も食べ始めた。小さなロールパンだというのに、ちぎって食べている。隆二は2口で食べるともうひとつも食べてしまう。
お茶を飲み、物足りないと思ってもインベントリから出すわけにもいかない。
食べている2人に「そのまま召し上がってください」と声をかけて立ち上がる。
食べながら話をするのかと思ったが、2人は話し始めなかった。
隆二は暇つぶしに、ベランダに出てプランターを見ると4枚葉が出始めている。
バナの葉の器をみえないように取り出してプランターへ水をやった。
「あの、リュウジさん…この小さな畑は一体?」
「ああ、これですか?こっちが米で、こっちが蕪、こっちはベビーリーフでレタス系の野菜をいろいろと植えてみました。」
「育つのですか?」
「え?育っていますよね?」
「そうですね…」
シュリーさんは、ベランダに出てきてプランターを見ていた。ギルマスも出てきて、泣いている。
「ギルマス、そろそろ落ち着いてご用件を」
「ああ、すまない。昨日は粥をありがとう。妻と息子が数口ずつだが食べてくれた。」
「はぁ…2人で分けたのですか?たったそれだけでは足りないですよね?」
足りないという批判だろうかと警戒した。
「いや、それが今朝…目をしっかりと開けられるまでに快復した。」
「え?」
「我が家もです。枯れ死病の母が、体を起こせるまでになりました。」
「へ?」
「あの粥は、何か特別な物なのですか?」