58 来客①
「ふぁ~」
隆二は、ベッドの上で体を起こすと大きく伸びをした。
板張りのベッドも慣れてしまえばそう悪いものでもなかった。木の枕はさすがに硬すぎなので、タオルを2枚畳んだものを乗せて使っている。
昨日、多めに作った300数杯分の粥を1人1杯で売り切ってしまった。
商業ギルドという、それなりに伝手もありそうな人たちでさえそのような状況では、それ以外の人たちがどうなっているのか恐ろしい気もする。
「リュウジさん、起きている?」
珍しくロティが朝から声をかけてきた。
「起きているよ。ロティさんどうしました?」
隆二は、寝起き姿のままドアを開けるとギルマスが青年を連れてきていた。
2人の前にいるロティは困ったようにぺこぺこしていた。
「ギルマスが至急話をしたいって来ていて…」
「そうか、案内してくれたんですね。ありがとう。」
案内してくれても、椅子は2客しかない。ここまで来てする話なら長いかもしれない。
「悪いけど、ロティの部屋の椅子を貸してもらえるかな?」
「うん、今持ってくるね。」
「お二人は申し訳ありませんが、廊下で少々お待ちください。」
隆二は、ドアを閉めるとベッドの毛布とタオルをインベントリへ収納し、先日購入した竹筒のポットに水筒の湯を入れなおし、電子レンジスキルで再加熱した。
竹カップとティーバックを用意する。
朝飯食ってねーのにな…あの二人も食べていないよな…隆二は、ロールパン2袋をアイテムリストで交換し、籠へ乗せた。
「リュウジさんお待たせ」
「ありがとう。ロティこれどうぞ」
「わぁ、ありがとう」
ティッシュに包んでパンを2つ渡すと、ロティは目を輝かせた。
廊下では、2人が壁際に立っていた。
「お待たせしました。中へどうぞ」
二人を窓際の椅子へ案内した。
窓を開けてあるので、少し冷たいくらいの風が入ってきている。テーブルに置いたポットにティーバックを3つ入れて揺らした。
二人は急用できたというのに、部屋に入るなりあっけにとられた顔をしていた。
ベランダを見て、テーブルを見るのを繰り返している。
「俺、寝起きでこれから朝食です。よかったら一緒に食べますか?パンとお茶しかありませんが、どうぞ」
「いいのか?」
「ええ、一人で食べるのも居心地がよくありませんので」
「それは、こんな時間に申し訳ない。」
「いえ、それほどの用だったのでしょう。」
「ああ…」
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