55 ギルドでの店開き
そろそろ時間か。
隆二は、2回目の粥を鍋2つと小さめの鍋に取り分けた。鍋に少しの湯を入れて鍋の周囲をすすぐようにして、その湯も鍋へと移した。差し湯用に薬缶2つ分の湯を沸かしておく。
「リュウジさん、用意はできているようだな。みんな待ち構えている。」
「この間のようなパンじゃないけど、大丈夫ですか?」
「もちろんだ。粥は売れる。売れ残るようならこちらで買い取る。」
「それは助かりますが…」
鍋をカウンター内側へ運んでいると、人々が並び始めた。
昨日のパンだと思われていると困る。本当に粥だと伝わっているのだろうか?
隆二は声を張り上げた。
「今日はパンじゃなくて粥だよ。粥でいい人は並んでくれ。2番お玉1杯で小銀貨2枚だ。器がある人に販売する。1人1杯だ。」
「うぉおおおお!」
今日も歓声を上げて、人々が並び始めた。あまりに多い人に驚くが、やることは多い。隆二は20L鍋3つをカウンターへと運んだ。
隆二は、販売直前に塩と湯を加えて、準備を終わらせた。
大行列になり、ギルド職員が列を作らせてくれた。それでも先日以上の盛況ぶりに驚く。かき混ぜながら米粒が均等に入るように気を付けた。
180ccのお玉1杯に米7g相当しか入っていない。ロティの粥よりは1.5倍くらい濃いけれど程度の差しかない。
そんな緩い粥なのに、先を争って買っていく。
あまりの食糧難に気の毒になる。
20Lの鍋3つ分を売り切ったので、店じまいをした。
結局、一人1杯で売り切ってしまった。
ギルドのテーブルに座って、分け合って食べている親子もいるようだ。たった180ccの粥だというのに…それを見るとなんとも言えない気分になる。
「ギルマス、粥をこの分取ってあります。」
「おぉ、リュウジさんすまないな。」
「いえ、皆さんがあの中をかき分けて並ぶわけにはいかないのはわかりますので」
「今器を用意しよう。」
リリアさんが、竹の器が入った籠を持ってきた。それにお玉1杯ずつ入れて、トレーへ並べていく。11杯と少しの粥になった。少しは均等に分け入れた。
「11杯になりましたので、銀貨2枚と小銀貨2枚になります。」
「では、こちらで」
「ありがとうございます。では、片づけをして帰ります。」
「あのっ…また売りに来られそうですか?」
「ええ…定期的に売れるなら曜日を決めたほうがいいですか?」
「ぜひ!」
リリアさんの目が輝いた。
なるほど、不定期よりは、定期的な方が良いようだ。
「今日は…木曜日ですね…」
「はい、木曜日です。ギルドの営業ですが、日曜日以外は開いています。」
「なるほど…月、水、金の3日でどうでしょうか?」
「週3日ですか?」
「はい、週3日です。」
最初は連日売るつもりだったが、それだと他のことができないと気が付いた。最初の予定の3倍の売り上げになるのだから、販売日を半分にしても計画通りに進むはずだ。
実際には、女将やロティへも米は卸すのでもう少し売り上げもある。